記事タイトル:第32回日本腎臓学会東部会-血管炎 


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お名前: 梶山 浩   
ケースフォーラム-血管炎
司会:群馬大学第3内科 野島美久先生 / 杏林大学第1内科 有村義宏先生
症例提示:東京女子医科大学第4内科 内田啓子先生 / 群馬大学第3内科 野島美久先
生
コメンテーター:東京医科大学八王子医療センター 吉田雅治先生 
        国立佐倉病院臨床検査科病理   城謙輔  先生

女子医大からの症例:72才男性、平成12年8月、37℃のの発熱、CRP 23.3 mg/dlで、肝胆道
系酵素の上昇もあり、急性胆嚢炎を疑われ近医入院。治療抵抗性で、血清Crが2.5 mg/dlと
上昇した為、同年10月当科入院。入院時BP 172/60 mmHg、尿蛋白1+、尿潜血3+、BUN 
113mg/dl、Cr 6.6mg/dlで、経過より急速進行性腎炎(RPGN)*と診断、MPO-ANCA 137倍と高
値を示したため臨床的にはMPAを疑った。腎不全に対しHD導入し、MPAに対しステロイドパ
ルス療法を施行。その後MPO-ANCAは陰性化するもHD離脱できず、十二指腸、直腸からの出
血が続き、吐血による出血性ショックで、死亡。剖検では、腎臓には半月体形成性腎炎の
所見は無く、弓状動脈レベルに血管炎の所見を認めた。十二指腸、膵臓、副腎の中小動脈
レベルにも血管炎の所見を認め、消化管には広範囲に渡り虚血性変化が主体の潰瘍を認
め、病理学的にはclassical PN と診断した。


*RPGNは、腎病理所見が得られていない段階でも、週〜月のオーダーでの腎機能の悪化があ
り、単なる脱水ではなく、持続性の軽度〜中等度の尿蛋白と尿潜血がみられ、腎炎が考え
られそうで有れば臨床的にRPGNと診断してよく、半月体形成性腎炎とはイコールでは無
い。半月体形成性腎炎は、およそ50%以上の糸球体に半月体形成を認めるものを差し、むろ
ん病理所見無しでは診断できない。


群大からの症例:男性高齢者で、10年以上前の発症。初発時、PNの診断にて、steroid 
pulse & AZA内服で加療されていたが、最近、発熱などで再発。腹腔動脈血管造影で動脈瘤
多発。一方、MPO-ANCA陽性で肺胞炎も認めた、という症例。


今回提示されたような症例は少なからず存在するので、まずはおかされる血管の太さと
ANCAの結果により診断をどうするかについて、議論がなされた。ユ94年だされた
ChapellHillのnomencultureでは、MPAではcapillaritisがある事が重要で、中動脈炎は
あっても無くてもよいとなってはいるが、やはりすべての症例で画一的に診断するのは難
しく、診断に迷う症例を、MPAとclassical PNの中間とするのか、あるいはどちらかに診断
しうるのかは、現段階では結局の所不明。
ただ、MPO-ANCA、PR3-ANCAの陽性率の違いや、病理像の違いがあり、その点が診断の参考
になる。
治療に関して、東京医科大学八王子医療センターの吉田先生からコメントあり。
MPO-ANCA型急速進行性腎炎症候群に関して、(筆者注:今年の日腎会誌に治療指針として出
ているものだが)、血清クレアチニンと、年令と、肺病変の有無と、血清CRP値で臨床所見
スコアとしてスコアリングしており、そのスコアで重症度を決め、治療方針を決めている
とのこと。
杏林大学有村先生より、全身血管炎症状がないと、ANCAを測定する事が少なく、腎症状の
みの場合、腎機能が悪化してきてからANCAを測定する場合が多い。腎機能が悪化してから
の治療は予後が悪いから、腎症状のみのANCA関連血管炎の方が全身血管炎症状のあるANCA
関連血管炎に比べ腎予後が悪いとのこと。腎症状のみの場合でもできるだけ早くANCA測定
して早期治療を、とのこと。
国立佐倉病院病理の城先生は、血管炎の病理所見のMPAとPNの違いを自験例でお示しになっ
た。Fibrinoid Necrosis PN 100%, MPA 33%, granuloma vasculitis PN 62.5%, MPA 0%, 
WG-like glom.lesion PN 50%, MPA 0%, Cr Formation(全glのうち>80%) PN 12.5%, 
MPA100%
このCrの形成される糸球体の%はChapell Hill分類には記載がないため、今後この点も考慮
して症例の積み重ねが必要である、とのこと。
また、この城先生のコメントののち、フロアから重松先生からの発言があり、病理で分類
する時は、その病期によって、見えてくるものが異なる場合もあるので注意が必要とのこ
と。
Chapel Hill分類では、高安病、巨細胞動脈炎、Wegener肉芽腫症、Churg-Strauss症候群に
granulomatous vasculitis-macrophage, 古典的PNやMPAにはnecrotizing vasculitis-
neutrophilとなっているが、古典的PNやMPAも急性期を過ぎると血管への浸潤細胞は好中球
からマクロファ−ジヘ変化するので、免疫染色で、浸潤細胞が何であるか、また、どのよ
うな時期の血管炎の生検検体かしっかり検討した上で、今後の症例を積み上げなければな
らない、ということを、城先生も教科書でしっかり述べておられた。

このようなことから、単におかされる血管の太さだけでなく、病期や、浸潤細胞もしっか
り考慮して、Chapell Hill分類を考え直すべきなのでは、と私も考えました。

長文で失礼致しました。次回は、スリット膜関連蛋白について。まだこの蛋白に関して、
lupusを始めとする膠原病腎における検討は皆無ですので、私は非常に興味があります。
WHOV型のlupus nephritisにおいて、上記分子geneのSNPsなど検討すると面白い結果がでる
のではないかと考えています。
[2002年10月21日 21時14分20秒]

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