記事タイトル:留学体験記です。 


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お名前: 古谷   
海外派遣研修医としてNIHに留学して
東京女子医大附属膠原病リウマチ痛風センター 助手 古谷武文

平成10年7月より2年半、日本リウマチ財団平成10年度海外派遣研修医としてNational 
Institute of Health (NIH)に留学してきました。NIHは、アメリカの医療行政において中心的
な役割を果たしている世界最大規模の医学生物学の研究所群で、研究者は全世界から集まってき
ていました。 私のラボは、National Institute of Arthritis and Musculoskeletal 
and Skin Diseasesのリウマチ部門であるArthritis Rheumatism Branch(ARB) に属していま
した。 ARBには多くのRheumatologistがおり、リウマチ研修には最適でした。 私のボス
Dr. Ronald L. Wilderは、Inflammatory Joint Disease Section のChiefで、慢性関節リ
ウマチ (RA) を専門とし、1987年ACRのRA診断基準の著者でもある著名な方でした。ラボの研究
テーマは、ラット関節炎モデルでの疾患感受性遺伝子検索でした。私には、関節炎モデルとして
まだ新しいBBラットの連鎖解析というテーマをいただきました。BBラットは、今まで1型糖尿病
の研究に使われてきましたが、誘発すると関節炎や甲状腺炎を起こし、さらに、BBラットの組織
適合抗原(MHC)にRAと関連があるとされているShared Epitope と同一の配列があることからも
興味深いと考えました。まず、BBラットと関節炎に抵抗性のBNラットを交配し、F1ラット、さ
らにF1同士を交配してF2ラットを作成、次に、F2ラットにコラーゲン誘発関節炎(Collagen 
Induced Arthritis以下CIA)をおこし、関節スコアと抗コラーゲン抗体価を測定しました。最
後に、マイクロサテライトマーカーを用いて連鎖解析を行いました。9つのnon-MHC遺伝子座お
よびMHCがラット重症度と連鎖すること、3つのnon-MHC遺伝子座およびMHCが抗体価と連鎖する
こと、その多くの遺伝子座が性染色体以外でも有意な性差があること、ほとんどが過去に自己免
疫疾患との関連が報告されている遺伝子座領域と重複することを示すことができました。この研
究結果は、第63回アメリカリウマチ学会で口演発表し、遺伝学において非常にインパクトのある
Human Molecular Genetics誌 2000年9月号に載せることができました。
次に、自己免疫疾患に感受性 または抵抗性 な6種類のラットを用いてのTNF alpha locusと
TNF Receptor 1 locusの遺伝子多型解析を行いました。 前者においては 42ヶ所で多型を認
め(Genes and Immunity 誌に in press)、後者ではSingle Nucleotide Polymorphisms 
が4ヶ所あり、うち2つで予想されるアミノ酸配列 が相違することを示すことができました
(Immunogenetics 誌に in press)。
研究に加えて、毎週1回ARBの回診に参加することができ、本場アメリカのリウマチ医療に接す
ることができました。このことは、今後のリウマチ診療においても必ず役立つものと確信してお
ります。
最後に私にこのような貴重な機会を与えてくださった東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風
センター所長 鎌谷直之先生および留学先を御紹介いただいた同講師 小竹 茂先生に心から感
謝致します。
[2001年5月8日 21時17分39秒]

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