記事タイトル:分類基準と診断基準再考 


書き込み欄へ  ヘルプ
お名前: 鎌谷直之   
第十一節
リスクについてさらに: 予防の可能性の推定
Attributable risk (そのせいリスク)とは、疾患のincidenceのうち、特定の暴露に帰
す事ができる部分。
Background riskとは、その暴露が無い人々におけるincidenceである。
そこで、attributable riskとは暴露されたグループのリスクからbackground riskを引い
た値である。
Proportion of attributable riskとは、attributable riskを暴露されたグループのリス
クで割ったものである。これは、特定の暴露のかかわりの割合を示す。
Attributable riskは我々が予防できる事ができる部分を示す。

以上は暴露されたグループにおけるattributable riskを示すが、全人口における
attributable riskは異なる。例えば、attributable risk for exposed groupが大きくて
もexposed groupの割合が小さければ全体への影響は小さい。
Attributable risk in the total population=incidence in total population ?
incidence in unexposed group
ProportionはそれをIncidence in total populationで割ったもの。
これらのattributable risk in the total populationは暴露を無くすとどのくらいの疾
患を減らせるかという問いに答えるために重要である。
[2002年4月16日 23時3分28秒]

お名前: 鎌谷直之   
やはり、コホートですね。

コホートとcase-controlの違いについて前述のEpidemiologyの記述の簡単な訳です。

第十節
 リスクの推定: 相関はあるか?
 コホート研究と無作為研究の一番の違いは、要因にexposeするかしないかを無作為に割
り付けていない事である。いずれも、exposeされた集団(exposed)とされていない集団
(unexposed)が疾患を来たす(あるいは改善する)確率に差があるかどうかを調べる事
では共通している。case-control研究は疾患を持った集団と持っていない集団の、expose
されたかどうか(exposed or unexposed)に差があるかどうかを調べる点で、コホート研
究、無作為試行研究と異なる。
絶対リスク(absolute risk)
 絶対リスクというのは、ある集団での疾患のincidenceのことである。

我々は特定の疾患が特定の暴露と関係しているかどうかをどうして決定するか。
1.
リスク(あるいはincidence rate)比
暴露された場合の疾患のリスク/暴露されなかった場合の疾患のリスク
2.
リスク(あるいはincidence rate)差
暴露された場合の疾患のリスク- 暴露されなかった場合の疾患のリスク

相対リスク= 暴露された人のリスク/暴露されなかった人のリスク

コホート研究では直接相対リスクを計算できるが、case-control studyでは直接計算でき
ない。
コホート研究で以下のような結果が出たとする。

                  Disease (+)          Disease (-)
Exposed (+)          a                   b
Exposed (-)          c                   d

相対危険=[a/(a+b)]/[c/(c+d)]

オッズ比(相対オッズ)
case-control研究では相対リスクの推定はリスク比ではなく、オッズ比によりなされる。
一般にはcase-control研究では相対リスクは推定不可能なのであるが、ある仮定でオッズ
比により良く推定できる。

ある事象のオッズとは次のように定義される。
ある事象のオッズとは、事象が起きる道の数の事象が起きない道の数の比である。

例えば、競馬などではオッズが良く用いられるが、
オッズ=シンザンが競馬に勝つ可能性/シンザンが競馬に負ける可能性
である。Pを勝つ可能性とすると、
Odds=P/(1-P)

コホート研究におけるOdds比とcase-control studyのオッズ比の違いを見てみる。

コホート研究の場合
      疾患を発症     疾患発症せず
暴 (+)          a                   b
露 (-)          c                   d

Odds ratio=暴露の人が発症するオッズ/非暴露の人が発症するオッズ=[a/b]/[c/d]=[ad]/[bc]

Case-control studyでのodds比
      疾患あり       疾患なし
暴 (+)          a                   b
露 (-)          c                   d
(暴露は過去の既往)

Odds ratio=患者が暴露のオッズ/対象が暴露のオッズ=[a/c]/[b/d]=[ad]/[bc]

いずれも[ad]/[bc]の形を取るためcross-products ratioとも言われる。これは、見方に
よっては相関を示すa,bと相関を示さないb,cとの比とも考えられる。

前述のようにコホート研究の場合はリスク比がそのまま相対危険を表すが、case-control
studyではオッズ比が相対危険の推定値となる。その条件は疾患の頻度が低い事である。

Case-control studyのMatched pairでオッズ比を計算する。
Caseとcontrolで一人ずつマッチさせてペアを作り、彼らが特定の要因に暴露された既往
があるかないかを比べる研究である。ペアには4種類のペアがあるはずである。
Concordant pair: case, controlともに暴露された、あるいはともに暴露されていない。
Discordant pair: case, controlのいずれかが暴露され、他方が暴露されていない。
Odds比=caseが暴露され、controlが暴露されていないペアの数/controlが暴露され、case
が暴露されていないペアの数
これも、相関を示す数(分子)を相関に反する事を示す数(分母)で割った数と解釈でき
る。Concordant pairは情報がなく、参考にならない。
[2002年4月16日 23時2分43秒]

お名前: 谷口敦夫   
人口30万人の町に唯一のリウマチ科外来(Leiden university)にEarly Arthritis Clinic
がある。この町の一般医は「関節痛、関節腫脹、ROM減少」のうち1つがある患者を2週間
以内にEACに送ってくる。EACでリウマチ医により「1箇所以上の関節炎があり、症状持続
が2年以内」と認められた患者はearly arthritis cohortに組み入れられる。1993年から
1996年の間の連続した566名が今回の研究の対象者である。初診時の所見と2年後の評価を
行い、2年後の関節炎のoutcome(self limitedがpersistentかpersistenet erosiveか)
を診断する基準を、初診時のデータから作成した、ということのようです。
[2002年4月16日 18時20分24秒]

お名前: 鎌谷直之   
最後の論文について、もう少し詳しく教えてください。

predictive valueを計算できるということはコホート研究?
[2002年4月15日 16時42分30秒]

お名前: 谷口敦夫   
分類基準による診断(長いよ)
私の趣味でまた議論したいと思います。最近も赤真先生が少し触れられていました。興味
のある方は掲示板の2000年5月26日もご覧ください。
ACR1987年の分類基準で用いられた症例は、RAは平均罹病期間7.7+/-8.6年、対照症例 はOA
(32%),SLE(20%)を主体としています。対照症例でもここの疾患の罹病期間は平均
7.7+/-8.8年です。この分類基準はこのような症例の中で、RAを他の疾患とdiscriminateす
る因子を検討して作られたものです。RAは確かに決め手となる所見が無い疾患ですが、だ
いたい罹病期間7年も経てば多くの症例の鑑別はそんなに難しくない、と思われます。とす
ると、この基準は、長期罹患の(すなわち、鑑別が難しくない)RA症例を、やはり長期罹
患の他の関節疾患と区別するための基準、と置き換えてもよさそうです。このように考え
ると、早期RAも含め、診断の難しい(ようするに典型的でない)症例の診断にこの基準を
用いるのは間違いであろうと、私は納得しています。
ところで、早期多発関節炎患者が慢性の、あるいはびらんを伴う関節炎に至るかどうかを
判別するのに1987年RA分類基準が有用であるかどうかを見た報告があります。tree format
でsensitivityはまずまず(77-87%)ですがspecificityはpoor(26-47%)で、1987RA 
criteriaは早期関節炎患者の予後を見る指標としての能力は低いという結論です(JR 
1998;25:12,2324-).
もうひとつは早期関節炎クリニックに来た患者において1987criteriaをRA患者の診断に使
えるかどうかという論文で、sensitivity90%,specificity90%でreasinable diagnostic 
validityであるとしています(ARD 1999;58:278-)。この論文にはJRの著者から反論が有
り、議論されています。ARDの論文ではgolden standardは医師による(1987criteriaに基
づかない)診断ですが、医師は当然1987criteriaを知っているためにバイアスが入るだろ
う、と反論されています。ARDの著者は1987criteriaはfamily doctor やgeneral 
physicianには助けになるのだ、と言っています。しかし、1987 criteria were never 
intended to be used as diagnostic criteria(JR author)、Trained as clinicians, 
rheumatologists never used the ACR critieria for diagnostic making(ARD author)、
といずれも1987 criteriaに関する基本的な考え方は同じようです。
ところで、RAと診断できるかどうか、というのはあまり意味がなく、目の前にいる早期関
節炎の患者さんが将来self limitinなのか、persistentなのか、erosive arthritisになる
のかを判別することが大事なのである、と考えることが出来ます。このような観点から
AR2002 46,357-ではpersistent (erosive) arthritisの予測についての論文があります。
症状の持続期間(6週以上-6ヶ月未満、6ヶ月以上)、朝のこわばり1時間以上、3領域
以上の関節炎、両側MTPsの圧痛、IgM-RF 5IU以上、抗cyclic citrullinated peptide 
antibodies 92IU以上、XPで手あるいは足のびらん、が点数化され、total scoreから
probability of persisitenceあるいはprobability of erosionsが分かるようになってい
ます。このモデルによると、4領域以上の関節炎が2ヶ月続いており、他の項目がすべて
(-)の場合、2年後に関節炎が直っているpredictive valueは0.66になるそうです。この
ときのA&RにはRAのガイドラインが掲載されていますが、早期RAの診断を考えるうえで非常
に重要な論文ではないかと思います。
[2002年4月15日 9時40分44秒]

このテーマについての発言をどうぞ。
氏名
E-mail URL
※ 書き込みはご自分がいれた改行+カラム端でも自動改行されます。

半角カナは使用しないようにしてください。文字化けします。
記事一覧に戻る