記事タイトル:臨床免疫学会報告 


書き込み欄へ  ヘルプ
お名前: 谷口敦夫   
verapamilなどのカルシウム拮抗薬に同様の作用があることは知られていますが、田中先生
は使用経験はない、とのことでした。特に理由は言われなかったです。
なお、今回の検討でのCyAの血中濃度は6-670ng/ml(単位が違っているかもしれませんが)
でした。
[2001年12月17日 9時18分26秒]

お名前: 岡本 完   
谷口先生、詳細な御報告ありがとうございました、大変参考になりました。
ところで、最後に記載された患者さんは現在青山に入院中で、CyAを250mg/day投与して
も、吸収不良症候群もあり、トラフ値が測定感度以下でした。それで、現在CyAを点滴し
ていますが、250mg/dayでもやはりトラフ値は測定感度以下で、2時間値で30 をやや超
える程度です。従って、代謝に関与する分子の発現増強などもあるのかもしれません。
ところで、verapamilを使用した症例の報告はありませんでしたでしょうか?p-gpを抑制
することで知られていますが。
[2001年12月16日 18時36分54秒]

お名前: 谷口敦夫   
12/10,11の臨床免疫学会からの報告です。違っているところ、変なところがあったら御指
摘下さい。

吉崎先生 IL-6と免疫疾患
1.IL-6のシグナル伝達には2種あり、JAK・STAT3を介する系ではfibrinogenが、MAPKを介す
る系ではCRP,Amyloidが産生される。
2.IL-6は膜上のIL-6Rあるいはsoluble IL-6Rと結合して膜上のgp130と結合する。滑膜細胞
にはIL-6Rは非常に少なく、gp130が多い。TNFaの刺激で滑膜からIL-6が分泌され、IL-6と
sIL-6Rが結合して、滑膜細胞の増殖を抑制する(MRAはSCID-huに移植した人のRA滑膜の細
胞を減少する効果はない
)。
3.SAA1の誘導にはTNFaよりもIL-6が重要。

アトピー性疾患の遺伝子解析
白川太郎先生 京大公衆衛生・理科研 
1.ゲノムワイドの解析でわかったのは領域の特定までで、特異的な遺伝子同定までは行き
着いていない。ここから先は、疾患の特徴に関連するような遺伝子群が推定された領域に
あるかどうかを検討していく。
2.IL-13のexon4のアミノ酸置換を伴う変異が喘息と関係していた。実はIL13receptorには
2種ある。2はデコイレセプター(IL13が結合してもシグナルが伝達されない)。mutant 
IL13は#1(IL-13Ra1)の受容体によくくっつくので、刺激が入りやすい。これに対し、
wild typeはデコイにひっつきやすい。この変異は喘息患者の40%が持ち、喘息だけでな
くアトピー性皮膚炎などにも関与。ただし、IgE産生増加とは無関係。IL-13と作用の似る
IL-4はその受容体の多型がIgE増減に関係している。
3.ウイルス感染後に喘息が悪化することがあるが、ウイルス感染で増加するINFgのシグナ
ル伝達において変異が関係してることがわかってきている。すなわち、ウイルス感染によ
り、ある個体ではTh1が弱くなり、相対的にTh2が強くなって喘息になることがあるのでは
ないか。

新しい骨髄移植を用いた難病の治療
池原進先生 関西医大病理 
1.aplastic anemiaはstem cell aplasia、白血病はmonoclonal stem cell disease、自己
免疫疾患はpoluclonal stem cell disease。よって、(多分)すべての自己免疫疾患は骨
髄移植により治療可能。
2.骨髄にはpluripotent hematopoietic stem cell(PHSC)、natural suppressor cell
(いろんな免疫能を非特異的に抑制、GVHDも抑える)、stromal cell( 別名mesencymal 
stem cell、PHSCを母親が子供を抱くように抱え込んでMACROPHAGEなどの攻撃から守る、
stromal cellとPHSCのHLAがあっていないと、PHSCは増えない)がある。ただし、人ではど
のphenotypeがstromal cellが混とんとしている。
3.肝移植後の患者で免疫抑制剤を中止しても拒絶反応が起きないケースがあるが、この患
者では通常廃物として排除される臓器提供者の血球細胞が共存しておりmicrchimerismの状
態にある。臓器提供者のPHSCが入ると、これは胸腺に行くが、ここで、臓器提供者の細胞
に対するトレランスが成立する(HSCはclass Iを強く発現しているがB7-のためhost 
killer cellをanergyにする)。
4.骨髄液を直接骨髄に注入する方法を考案した(IBM-BMT, intrabonemarrow BMT)。この方
法であるとradiationの線量を減少でき、しかも効率のよい造血ができる。

本庶佑先生 免疫制御レセプターPD-1欠損による自己免疫病の発症
PD-1について:
1.リンパ球の免疫応答を制御するcostimulatory moleculesには正の制御系としてCD28/B7, 
ICOS/ICOSL,負の制御系としてCTLA4/B7, PD-1/PDL(-1,-2)がある。
2.PD-1 ko miceでは何も起こらないが、系統の違うマウスと根気強く戻し交配を繰り返し
ていくとB6の系統では糸球体腎炎+関節炎、BALB/C系統では拡張型心筋症ができる。浸透
率が100%ではなく、系統の違いにより表現形が異なってくるので人の自己免疫疾患のよい
モデルではないかと考えられる。3.PD-1はimmunoglobulinsuperfamilyのメンバーで活性化
T・B、PDL1はB7family menberで活性化T.B.DC、心臓、肺などにも強く発現されている。
hyperIgM syndrome:
1.IgM からのクラススイッチができない免疫不全、にはtype1とtype 2がある。type 1は
CD40Lの異常。type 2の異常を最近同定。AID(エイド、activation-induced cytidine 
deaminase)という12p13 にある遺伝子。
2.Igのrecombinationは2段階ある。一つは骨髄内でのVDJ recombination、次はsomatic 
hypermutation とclass switch。AIDは後の2者両方にかかわる。
3.どうやらAIDはRNA editing enzymeらしい。RNA editing enzymeはAdenisine deaminase
型とCytidine deaminase型の二つが知られているが後者にあたる。AIDはおそらくなんらか
のmRNAに作用し、その結果できたものがcleavingに関係するのだろう。
4.ところで、腸管内でクラススイッチの起こるのは主にパイエル板ではなくてlamina 
propriaのstromal cellだそうです。このstromal cellはcox-2を発現してるそうです。

生体肝移植における免疫制御
田中紘一先生 京大移植外科
1.FK506のトラフは10-20くらい。
2.体重や肝機能によりクリアランスが異なる。
3.血中濃度が保たれていてもP糖タンパクの発現が強いと生着率が低い。
4.腎移植では免疫抑制薬が中止できる例はほとんどないが肝移植では漸減中止が可能な例
がある。

膠原病におけるシクロスポリン療法の理論と実際
田中良哉先生 産業医大
1.抗リウマチ薬を長期あるいは多剤使用しているとP糖タンパクの発現が増加する。そうす
ると細胞内薬物が細胞外に排泄されるが、CyAやヒドロキシクロロキンはその作用を阻害す
る。
2.SLEでもステロイドがなかなか減量できない症例でP糖タンパクの発現が増強している症
例があり、このような場合にC yAを使うとステロイドの減量がスムーズにできる。
3.実際に使用する量としてはCyA25-150mg/dayで開始して維持量が25-200mg/day。かならず
しも一定のトラフに達している必要はない。
4.CyAで本来のT細胞機能抑制作用を除き、P糖タンパクの阻害作用のみにしたCyAも開発さ
れており、すでにガンの治療には使われている。
以前、カンファレンスに出たステロイド抵抗性と考えられるSLE症例ではどうなのでしょう
か?
[2001年12月11日 20時24分18秒]

このテーマについての発言をどうぞ。
氏名
E-mail URL
※ 書き込みはご自分がいれた改行+カラム端でも自動改行されます。

半角カナは使用しないようにしてください。文字化けします。
記事一覧に戻る