記事タイトル:lupus nephrits- Hong Kongからの報告 


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お名前: 梶山   
今年の4月と8月にARにlupus nephritis 関連の臨床研究の報告が幾つか掲載されていま
す。4月号には香港から、PSL +  oral CY followed by oral AZAの成績と、NIHのBoumpus
たちのDPLNはCRにはいっても再発しやすいので、さらなるpreventive therapyが必要だと
したもの、8月号にはEuro Lupus Nephritis Trial (ELNT)の成績(PSL + low dosage CY 
pulse followed by AZA が、欧州のlupus 患者のDPLNの寛解導入療法としてPSL +  high 
dosage CY pulse followed by oral AZAとその効果は同等であったとしたもの.) がでてい
ます。以前もAZAのlupus nephritisの維持療法のことを書きましたが、香港と欧州からの
報告にも維持療法としてAZAを使っています。もう皆さん読まれたでしょうか。

遅蒔きながら、今回は、人種も近くかなり参考になると考えられる香港studyのabstract
を、治療法や評価法の具体的な内容にふれながらまとめました。ELNTのabstractはまた次
回にまとめます。

エンドキサン(CYC)内服とそれに続くイムラン(AZA)内服によって治療されたDiffuse 
Proliferative Lupus Nephritis(DPLN)のアウトカムと予後規定因子

Chi Chiu Mok et al.  Hong Kong

目的:CYC内服とそれに続くAZA内服によって治療されたDPLNのアウトカムと予後因子を調
べる。

方法:腎生検によってDPLNと診断されたSLEの患者で、CYCとAZA内服で治療された患者を調
査した。12ヶ月でrenal remissionになった患者を見い出し、complete remissionへの臨床
的予後因子について、regression analysisを用いて評価した。すべての患者は腎炎の再
発、血清クレアチニン値が2倍になるまで経過観察した。再発と血清クレアチニン値倍増ま
での時期やそれらに対する危険因子Kaplan-Meier analysisやCox proportional hazards 
modelを用いて評価した。

*訳者注1:remissionとrelapseはNIHのBoumpas, Balowにより提案された定義を基本に評価
した。

CR= 少なくとも6mo間. 1日尿蛋白が1gに低下し、C3値が正常化して、腎機能の安定化、あ
るいは改善が見られる場合。
PR= 治療前の尿蛋白がnephrotic rangeの場合、少なくとも6mo間、尿蛋白が50%以上減少
し、且つその一日尿蛋白が3g以下であり、腎機能の安定化と改善があること。治療前の尿
蛋白がnephrotic rangeにない場合、少なくとも6mo間、尿蛋白が50%以下の減少となり、且
つその1日尿蛋白が1gより多く、腎機能の安定化と改善があること。
NR= 敗血症、腎毒性のある薬剤、脱水、腎静脈血栓症などの現疾患以外の原因によるもの
は除く腎機能の低下、尿蛋白の増加、あるいは尿蛋白改善するもCR,PRいずれにもあてはま
らなかったもの。

Proteinuric ranal flaire 
CRになったケースでは、腎機能の悪化の有無に関わらず、1日尿蛋白が2gより多い場合。PR
になったケースでは、腎機能の悪化の有無に関わらず、尿蛋白が倍になったもの。
Nephritic Flare 
尿蛋白増が増悪したり、腎機能が悪化したりする事に関わらず、active urinary lesionの
悪化、再発を認める事。

結果:55人の患者を解析した(47人が女性、8人が男性。腎生検時の平均年令±SDは31.1±
10.4才).; 治療前は25人(46%)が血清クレアチニン値 > 106 μmol/L = 1.229 mg/dl, (ク
レアチニン1mg/dl=86.2μmol/L=0.086mmol/L)29人(53%)がネフローゼであった。治療後
12ヶ月で37人(67%)がCR、12人(22%)がPRに達した。治療前の血清クレアチニン値がCRの独
立したpredictorであった。
治療抵抗性であった3例と死亡した1例を除くと、21人(41%)が経過観察の中間値である4年
の間に再発している。腎症再発のcumulative riskは1年で6%, 3年で21%,5年で32%であっ
た。治療後再発までの中間値は43ヶ月。Cox regressionによると、腎組織のactivity 
scoreとCYC1日量の平均値が腎症再発のmultivariate predictorsである。経過観察中の受
診最終日に、54人中9人(17%)が血清クレアチニンが倍増し、うち6人(11%)が透析を受けて
いた。血清クレアチニンが倍増するcumulative riskは5年で8.4%、10年で18.2%であった。
初回腎生検時の腎組織のchronicity indexの高値が腎機能の悪化の独立したpredictorで
あった。

結論:CYC内服とそれに引き続くAZA内服はSLE患者における瀰漫性増殖性
糸球体腎炎の効果的な治療法であり、治療後12ヶ月で89%がCRかPRに達し、5年後に62.8%が
remissionを維持し、81.8%が10年経過しても安定した腎機能を保っていた。治療抵抗性と
再発のpredictorとして、血清クレアチニンの高値、activity indexの高値、少ないCYCの
使用量が含まれた。腎組織のchronicity index の高値が腎機能悪化のpredictorであっ
た。

**訳者注2:このstudyの治療に関して基本的にはPSL 1mg/kg/day for 8-10 weeks and 
gradually tapering to a maintenance dosage of 5-10 mg/day, plus oral CYC (1-2mg/
kg/day) for 6-9 months followed by AZA (50-100 mg/day )であり、CYCの正確な一日量
やCYCを使用した期間は、体重や白血球数や重症感染症の併発など、tolerability, 
toxicityを考慮して症例ごとに担当医が決めたとのこと。
[2002年10月5日 22時7分31秒]

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