記事タイトル:ACR guideine for RA 2002 


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お名前: 赤真秀人    
(遅くなり申し訳ありません。)


抗TNFa治療
 選択的にサイトカインを短期的に阻害する(抗サイトカイン治療)遺伝子工学を利用して作製
された薬剤の発達は、RA治療における大きな進歩である。現在、臨床的に最も効果的な抗サイト
カイン製剤は、TNFaに対するアンタゴニストである。TNFaは、サイトカイン炎症カスケードに
おける主要な伝達物質である。米国では2つの抗TNFa製剤が使用されている。エタネルセプト
(リコンビナント可溶性TNF-Fc融合蛋白)とインフリキシマブ(マウス・ヒト キメラ型抗TNF
モノクローナル抗体)である。

A CR20,ACR50,ACR70改善基準に従ったRA患者の臨床症状や徴候の改善は、ランダム化二重盲
検プラセボ対照試験により検討され、エタネルセプトとインフリキシマブの効果が認められた。
早期RA例や、かつて施行したDMARD療法が無効であった活動性RA例でもエタネルセプトで改善が
見られた。エタネルセプトとインフリキシマブ両剤は、適正量のMTX単独治療では活動性が増し
てしまう患者においても、MTXとの併用によって効果を望めることが示されている。今日、MTX
との併用時に限り、インフリキシマブ使用が推奨されている。

 エタネルセプトとインフリキシマブの臨床試験では、治療開始2週後でさえ有効例があったよ
うに、多くの患者で早期に改善をみた。ランダム化試験によると、エタネルセプト単独あるいは
インフリキシマブとMTX併用治療では、MTX単独治療と比較し、1年後のX線写真上での進展は
少なかった。早期RA例での検討では、MTX治療と比してエタネルセプト治療では、RAの症状や徴
候は、最初の6か月ではより早く改善し、12か月の時点で効果は同等であった。

 ランダム化試験からのデータでは、2剤ともに、重篤な感染症や悪性腫瘍のような重大な有害
事象はなかったが、これらの薬剤の短期的、長期的安全性に関する懸念は続いている。TNFa
は、感染や腫瘍新生に対する宿主の防御に、重要な役割を果たしている。エタネルセプトとイン
フリキシマブの市販後の経験では、これら薬剤使用で重篤な感染症をきたし、入院や死亡した患
者が存在する。抗TNFa治療中に亡くなった患者の多くでは、重大な慢性感染症や、感染に対す
る危険因子を有していた。よって抗TNFa製剤は、感染症に感受性のある例または結核の既往例
では注意深く使用すべきである。重大な慢性感染症の存在する例では使用を避けるべきであり、
急性感染の全例では一時的に中止すべきである。

 市販後調査では、敗血症、結核、非定型抗酸菌症、真菌感染、他の日和見感染、脱髄疾患や再
生不良性貧血の報告がなされている。TNFaアンタゴニストを開始前に、結核が潜伏している危
険を評価すべきである。これら新薬のフォローアップ期間はまだ比較的短いが、これまでのとこ
ろ、エタネルセプトとインフリキシマブで治療した患者では、一般人集団と比較して、悪性腫瘍
罹患の増加は認められていない。現時点では、抗TNFa製剤使用時、機械的に検査モニターをす
る必要はなさそうである。しかし、患者に対し、あらゆる感染徴候や症状を報告するよう促すべ
きである。

 抗TNFa製剤の不利な点は、長期間に渡る安全性のデータがないことに加え、非経口投与を要
し、価格が高いことである。RA患者すべてが抗TNFa療法に反応する訳わけではなく、治療中止
後に再燃する。

昔日のDMARDs
 プリン類似体の骨髄抑制薬であるAZA(赤真注;アザチオプリンのこと)は、RAコントロール
に有用であるが、ほとんど使われていない。D-ペニシラミンは有効であるが、一部は不便な用量
スケジュール(用量を漸増することなど)により、またGoodpasture症候群や重症筋無力症とい
った自己免疫疾患を含む稀だがかなり重篤な併発が起きることから、その使用は限られている。
金製剤筋注は有効である。しかし、22週以降に維持量をより間隔を空けて使用することが可能
ではあるが、初めの22週間は毎週注射する必要がある。経口金剤は注射用金剤よりも便利であ
るが、有用性が明らかになるのに長時間(6か月まで)を要し、有効性がより少ない。
[2002年2月28日 16時31分13秒]

お名前: 小竹 茂   
引き続き、私の担当部分の後半を日本語に訳してみました。
担当したこの部分は慣れない内容でしたが、できるだけこなれた日本語を心掛けま
した。

『医療費についての考察』

社会に対してと同様に、個々の患者に対しても重要な経済的な関係がRAにはある。
年令、性別が同じ健常人にくらべ、個々のRA患者では、3倍の医療費、2倍の入院率、
そして10倍の作業不能性がある。最近の研究で、一人のRA患者の年間医療費は、
約8500ドルになると報告されている。罹病期間が長くなるにしたがい、そしてHAQに
よって測定される機能が低下するにしたがい、年間の医療費は増加する。作業不能性
と失業に関連した間接的なコストは疾患に関連した直接的なコストの3倍になる。

直接的な医療費に対する責任はしばしばthird-party payorそして一部患者に帰せら
れる、一方間接的コストの大部分は政府あるいは雇用者によって生み出される。ヘルス
ケアfinancing systemの多様性においては、これらの経済的危険性と誘因の分断化、
異なるrisk poolとヘルスケアdelivery systemへの患者の頻繁な転換、そして比較的緩
徐な疾患の進展などがすべて適切なケアへの接近に反対に影響を与えているのかも
しれない。

長い間、比較的安価な治療がRAでは行われてきた。しかしながら、COX-2阻害剤
の出現、生物学的製剤を含む新しいDMARDs、そしてコンビネーション療法の使用
の増大などのすべてにより医療費の考察が非常に重要となった。最善の治療の推奨に
よる文献のevident-basedなレビューに焦点を絞ることによって、ほとんどのガイド
ラインは一般的にこのコストの問題を避けてきた。しかしながら、経済的考察を無視
すると日々の治療にあたえる影響が不十分になると当委員会は考えた。

機能的状態とレントゲン像上の進行に有意な効果があると示された新しいDMARDsの
有望な短期の結果にもかかわらず、現時点では、そのような増大する費用が
最終的には疾患の総医療費が低下するということによって相殺されるかどうかを
決めるには不十分な長さのデータしかない。MTX療法が無効のRA患者への6通りの
異なる治療法の相対的なcost-effectivenessを調べた報告が最近あった。それは
1)etanerceptのみ 2)etanercept+MTX 3)cyclosporine+MTX 4)HCQ, SSZ, MTXの
3剤併用 5)MTXの継続 6)second-line agentなし である。ACR20 improvement
criteriaあるいはweighted proportion of patients achieving ACR20, ACR50, and  
ACR70 improvementによると3剤併用がもっともcost-effectiveだった。しかしながら
すべてのcost-effectiveな分析にありがちなように、この結果の妥当性を制限する
かもしれない前提があった。例えば、このモデルの期間は治療のはじめの6ヶ月に
限定された。さらに、このモデルでは限られた数の治療法のみが検討された。
leflunomideもinflixmabも検討されていなかった。作業能力やレントゲン像上の
進行のような結果への新しいDMRADsの効果についてのさらなるデータも必要である。

今日の医療費の締め付けが厳しい環境では、たとえ治療法の効果と副作用が同じでも
より安価な治療法が使われがちである。しかしながら臨床医は以下のような状況に
次第に直面してきている。複数の治療法がもはや等価ではない。ある治療に部分的な
反応しかない。副作用や病的な状態により、より伝統的な治療薬の使用が禁忌とな
る。ハイリスクや重症患者では、単独あるいは併用での新しい治療薬の使用が必要
となる、等々である。十分な数の患者と長期研究により、これらのデリケートな医療
費の問題は、しばしば進行性で衰弱性のこの疾患とうまくバランスがとれるように
なるであろう。
[2002年2月27日 18時49分34秒]

お名前: 鎌谷直之   
残りは、小竹先生(一部)、赤真先生、針谷先生です。よろしくお願いします。
[2002年2月27日 16時41分30秒]

お名前: 小竹 茂   
かなり長くなるので、まず、私の担当分の前半を日本語に訳してみました。

『外科的治療』
関節破壊のため非常に強い関節痛、可動域制限、機能障害がある患者では、外科的な
治療が考慮されるべきである。RAの外科的治療にはcarpal tunnelのrelease, 滑膜
切除、中手骨骨頭の切除、人工関節置換術、そしてjoint fusionが含まれる。新しい
人工関節の材質とセメントにより、無菌的looseningの予防を非常に改善され、そして
人工関節の寿命が延びた。


術前の機能的状態が外科的治療後の機能的独立性の回復率の重要な決定因子である。
機能的な回復を増大させるための戦略には、術前の機能の状態を最善の状態にするこ
とと、早期に外科的治療を行うことが含まれる。術前と術後の治療を行うチームには
数多くの外科的治療を施行してきており、そしてRAの患者のcareの経験のあるhealth
careのprofessionalが含まれるべきである。

『プウライマリーケア医と専門医の責任』
health careの状況に応じて、RAの患者のcareの大部分はひとりの医師(プライマリー
ケア医あるいはプライマリ−ケアを行っているリウマチ専門医)によって行われるかも
しれないし、あるいはその責任は分けられるかもしれない。プライマリーケア医の役割
は発症時にRAを認識し診断することであり、そして永続的な関節破壊がおきる前に患者
が適切な時期に治療を受けられるようにすることである。リウマチ専門医はRAの診断と
治療において患者とその患者を診ているプライマリーケア医へ支持とコンサルテーショ
ンを与えるべきである。

プライマリーケア医におけるRAの診断とマネージングのレベルは様々かもしれないの
で、正確な診断及び、RAの活動性や薬の副作用のモニタリングの責任は適宜、リウマチ
専門医が担当するべきである。もし一人のRA患者のケアが分けられるのならば、RAの
活動性(表3)と薬の副作用のモニタリングのための明確な計画が作られなくてはな
らない。どの医師がケアに責任をもつかを決めるときは、患者の好みが重要な要因かも
知れ
ない。

全体的な健康維持のための戦略が作りあげられるべきであり、そしてこの戦略の責任
は患者のヘルスケアを担当している者の間でコーデイネイトされるべきである。
高血圧や癌のためのスクリーニングや危険因子のようなルーチンの予防的検査は推奨さ
れるべきであり、そして危険因子は修正されるべきである。
[2002年2月25日 18時48分52秒]

お名前: 山中 寿   
日本リウマチ学会でもガイドライン作成をしています。
この掲示板に書き込んでいただいた訳を参考にさせていただきたいと思います。
皆さま、ご協力よろしく。
[2002年2月24日 14時16分30秒]

お名前: 山中 寿   
私の担当分です。

関節リウマチの治療ガイドライン 2002年改訂版
アメリカリウマチ学会・関節リウマチガイドライン小委員会

はじめに
関節リウマチ(RA)は原因不明の自己免疫疾患で、対称性、びらん性の滑膜炎を特徴とし、
関節外病変を生じることもある(1)。ほとんどの患者は慢性的で変動しやすい経過をたど
り、治療にもかかわらず進行性の関節破壊、変形、日常生活の困難をきたし、早死にする
こともある(2)。RAの結果として年間にのべ900万回以上の医療施設受診と25万回以上の
入院を生じている(米国において)(3,4)。RAによる日常生活の困難は多大な経済的損
失をもたらし、家族に深刻な打撃を与える原因となる。
RAは成人の1%を冒す。このように頻度が低いので、一般の医師は診断や治療に対してほ
とんど経験をもたないことがおおい。このRA治療ガイドラインは正確な診断がなされた場
合を想定して作られている。RAの診断は初期には困難なことがある(5,6)が、診断に至
る複雑な過程についてはごのガイドラインの範囲外である。
RA治療ガイドラインと薬物治療のモニタリングは1996年にはじめて作成された
(7,8)。その後の経過において、RAの薬物治療に大きな進歩があった。今や、早期治
療が有利であることや治療手段が予後を変えうることにエビデンスがある。新しいクラス
の薬剤も導入された。可能なかぎりこの改定ガイドラインはevicdence-basedである。しか
し、我々の知識にはまだ大きなギャップがあり、いくつかの勧告はbest practiceや委員会
のコンセンサスに基づき作成された。これらのガイドラインはリウマチ医、リウマチ学を
実践する一般医、OT, PT,Social worker,患者教育者によって検討された。

RA治療のゴール
RA治療の究極のゴールは関節破壊を予防、コントロールし、機能障害を予防し、痛みを緩
和することである。図1にRA治療に対するアプローチをまとめた。RA治療の第一段階は、診
断を確立し、初診時の評価を行い(表1)、予後を判定することである。これらの初期計画
に自信のない一般医はリウマチ医に評価を求めることを強く推奨する。
治療の開始は患者教育であり、疾患について、関節破壊や機能障害の危険性を教え、治療
手段の恩恵と危険性も伝える。患者をOT, PT,Social worker,患者教育者などに受診させる
ことは意義がある。症状をコントロールするためにNSAID、ステロイド薬関節内注入、低容
量プレドニン等の投与を考慮する。新たにRAと診断された患者の大半は、診断後3か月以内
にDMARDを開始するべきである。RAによく処方されるDMARDは表2に掲載した。DMARDは疾患
を治癒させるものでなくコントロールするものであるから、RA治療は双方向性に行うべき
性格のものであり、疾患活動性や進行、治療手段の副作用などについて定期的に評価しな
ければならない。何度も増悪したり、疾患活動性が極めて強い場合(例えば、最大の治療
を3か月行っても進行性)や関節破壊が進行する場合には、現在のDMARD投与法を大幅に変
更することを考慮する。疾患活動性が1ないし少数の関節に限局している場合には、ステ
ロイドの局所注入が有用である。著しい症状がある場合には、ステロイド薬の全身投与を
始める必要や、あるいは投与量を一時的に増量する必要がある。
活動性関節炎は身体的機能を低下させるが、身体的活動により更に低下する場合もある。
したがってPT, OTなどに発症後早期のうちに受診させるべきである。休暇を取ったり仕事
内容を変更したり仕事を離れる時間をとったり職業を変えたり、あるいは就労を辞めるこ
とも必要になってくる。最終的な関節破壊に至り、解剖学的に著しく変形を来したために
痛みが耐えられないとか機能制限が強い患者では関節機能再検の手術を考慮すべきであ
る。機能再検術はRAのいかなる病気においても考慮されるべきである。
一部の患者では、DMARDを単剤や併用によりいろいろ試してみても治療に抵抗し、進行性の
経過を辿る。RA治療の究極のゴールは完全寛解への導入であるが、完全寛解に至る患者は
必ずしも多くはない。完全寛解は、1)活動性の炎症性関節痛の症状(関節変形による機
械的疼痛は含まない)、2)朝のこわばり、3)疲労感、4)診察による滑膜炎の存在、
5)連続したX線写真で関節破壊の進行、6)ESRやCRP上昇、のいずれもない状態と定義さ
れている(9)。
もし、完全寛解が得られなかった場合は、治療のゴールは疾患活動性をコントロールし、
疼痛を緩和し、日常生活や仕事上の機能を維持し、QOLを最大限に保つことになる。これら
のゴールを達成する挑戦は、NSAIS, DMARD, 低用量プレドニン、ステロイド局所注入、リ
ハビリ、麻酔などの治療手段の最も有効な組み合わせを選ぶというリウマチ医の技術にか
かっている。適切な疼痛除去はRAのような慢性疾患における大切なゴールの一つである
が、麻酔の依存症にならないように最大限の注意を払うべきである。
慢性的で増悪軽快を繰り返すRAの経過を考えれば、長期的な治療計画の作成が必要であ
り、患者のその作成に関与すべきである。議論すべき点は、疾患予後、治療手段、経費、
副作用、反応するまでの時間、患者の危険度、合併病態、薬剤投与時のモニタリング、そ
して患者の好み(意向)である。治療への期待や推奨される治療を行ううえで可能性があ
る障壁についても話し合うべきである。疾患に対する信頼(?)や自己の有効性を認知す
ることが患者の予後や治療への忠実さに影響することが知られている(10-12)。教育や
Arthritis Self management Programのような認知行動介入が健康状態を改善し、医療費削
減につながる(13-17)。

RAの初期評価
RA患者の初期評価は、疾患活動性の症状(関節痛の存在、朝のこわばり持続時間、疲労の
程度)、機能状態、疾患活動性の他覚的所見(疼痛関節数、腫脹関節数で評価した滑膜
炎、ESRかCRPレベル)、関節の機械的な問題点(可動域制限、れきさ音、不安定性、軸偏
移、変形)、関節外症状の存在、X線的破壊の存在などについて記載することである(表
1)。合併病態も評価する。VASを用いた定量的な患者の全身評価、医師の全身評価、疼痛
評価などの機能やQOLに関する確立した評価法は疾患経過の有効な指標である(18,19)。
このような初診時の情報は疾患の進行や治療への反応性の評価に大いに役立つ。
初診時の検査評価(表1)では、血算(白血球分画や血小板数を含む)、リウマトイド因
子、ESRかCRPを調べる。多くの抗リウマチ薬は腎臓、肝臓に毒性を示すことがあり、腎障
害、肝障害があると投与できないことがあるので、腎臓、肝臓機能の検査は必要である。
手足の関節はRAで冒されることが極めて多いので他の症状のある関節とともに初診時にも
X線を取っておくとその後の進行の評価に役立つ。構造的損傷を防止することは治療の一
義的なゴールであるから主要な罹患関節のX線写真は定期的に撮影するべきである。
治療手段の選択のためには予後の評価が必要である。若年で発症、RF高力価、ESR高値、
腫脹関節数>20では予後不良である(20,21)。リウマトイド結節、シェーグレン症候群、
上強膜炎、強膜炎、間質性肺疾患、心外膜炎、全身性血管炎、フェルティ症候群などの関
節外症状も予後不良を示唆する。活動性の多関節炎があるRF陽性のRAは発症後2年以内に
関節破壊やびらんを起こす確率が>70%という報告がある(21-26)。発症後早期のRAにお
いてはDMARDが経過を変える可能性があるとの報告があるから、このような好ましくない予
後因子を持つ患者においては診断がつきしだいすぐに積極的な治療を開始するべきである
(25-27)。

表1。RA患者の疾患活動性と障害に関する初診時の評価項目
自覚症状
 関節痛の程度
 朝のこわばりの持続時間
 疲労の持続時間
 機能制限
理学的所見
 活動性の炎症のある関節(疼痛関節数、腫脹関節数)
 関節の機械的問題点:可動域制限、れきさ音、不安定性、軸偏移、変形
 関節外症状
検査成績
 ESR/CRP
 リウマトイド因子*
 血算**
 電解質レベル**
 クレアチニン**
 肝酵素レベル(AST,ALT,アルブミン)**
 検尿**
 関節液検査***
 便潜血**
その他
 機能障害度または標準的質問票で評価したQOL
 医師の疾患活動性に関する全体評価
 患者の疾患活動性に関する全体評価
X線写真
 選ばれた罹患関節のX線写真****

*  診断のために初診時のみ施行。最初が陰性の場合は発症後6-12か月後に再検しても良
い。
** 初診時、薬剤開始時、合併病態による臓器障害の評価時に施行する。
*** 初診時に他の疾患の鑑別のために必要であれば施行する。経過中でも増悪時に細菌性
関節炎の除外のために施行しても良い。
****疾患の進行や治療反応性をモニターするための基準に役立つ
[2002年2月24日 14時13分12秒]

お名前: 立石睦人   
まとめ
RAは慢性進行性の多関節炎であり、多彩な経過をとりながら、多大な障害と経済的損失を
もたらす。うまく治療して関節障害・機能低下を食い止めるためには、早期に診断して適
切な時期に抗リウマチ薬を開始する必要がある。治療の目的はRAの進行を止め、寛解させ
ることにある。寛解の得られる頻度は決して高くないが、非薬物治療や薬物治療、場合に
よっては外科的治療によりRA患者は恩恵を受け得る。RA患者を長期にわたってうまく治療
するためには、総合的な調整された患者ケアと、多数の広範囲にわたる医療関係者の熟練
が必要である。そして、RA患者の管理には、系統的かつ定期的な疾患活動性の評価、患者
教育/理学療法、DMARDsの投与、必要に応じた糖質コルチコイドの局所投与や低容量内服
投与、個人に対する負担の最小化、現行治療法の適否の評価、全身の健康維持、が必須で
ある。

追加:このガイドラインが完成して受理された後に、リコンビナントヒト型IL-1レセプ
ターアンタゴニスト(IL-1Ra) であるanakinraのRAに対する投与が認可された。IL-1βは
TNFαとともにRAにおける滑膜炎と関節破壊において重要な役割を演じていると考えられ
ている。IL-1RaはIL-1αとIL-1βのIL-1レセプターへの結合を阻害することにより、IL-1
の標的細胞の活性化を妨げる。
anakinraの連日1回150mgの皮下注投与によるRAの自他覚症状の改善度は、ACR20 
criteria による評価でプラセボよりも優れていることが、無作為二重盲検法によるコン
トロールスタディにより示された。anakinraはプラセボよりもHAQスコアを改善し、画像
所見の進行を抑制した。最近の研究では、1.0mg/kgまたは2.0mg/kgのanakinra とMTXの併
用療法はMTX単独療法よりも有効あることが示された。
anakinraは連日100mgの自己皮下投与量でRAに対する使用が認可されている。注射は業者
が供与する特別仕様の注射器の使用により簡易化されている。副作用としては注射部位の
局所反応の報告が最も多い。これらは投与開始後4週以内に最も多く、数日ないし数週で
消失する。このような副反応のために薬剤投与が中止されることも時々ある。他の生物学
的治療と同様、重篤な感染症や悪性腫瘍の危険性が心配されるが、安全性を示す資料は少
ない。喘息/COPDの患者では肺感染症の頻度が高いので、anakinraは注意深く使用される
べきである。anakinraは、いかなる活動性感染症の患者にも投与されるべきではない。
anakinraのRA管理における位置付けは他の生物学的治療と同様である(??原文:
Anakinra fits into the management of RA along with the other biologic therapies.
ですが、どう訳したら良いかわかりません。誰か教えてください。)
[2002年2月23日 22時25分46秒]

お名前: 立石睦人   
まとめ
RAは慢性進行性の多関節炎であり、多彩な経過をとりながら、多大な障害と経済的損失を
もたらす。うまく治療して関節障害・機能低下を食い止めるためには、早期に診断して適
切な時期に抗リウマチ薬を開始する必要がある。治療の目的はRAの進行を止め、寛解させ
ることにある。寛解の得られる頻度は決して高くないが、非薬物治療や薬物治療、場合に
よっては外科的治療によりRA患者は恩恵を受け得る。RA患者を長期にわたってうまく治療
するためには、総合的な調整された患者ケアと、多数の広範囲にわたる医療関係者の熟練
が必要である。そして、RA患者の管理には、系統的かつ定期的な疾患活動性の評価、患者
教育/理学療法、DMARDsの投与、必要に応じた糖質コルチコイドの局所投与や低容量内服
投与、個人に対する負担の最小化、現行治療法の適否の評価、全身の健康維持、が必須で
ある。

追加:このガイドラインが完成して受理された後に、リコンビナントヒト型IL-1レセプ
ターアンタゴニスト(IL-1Ra) であるanakinraのRAに対する投与が認可された。IL-1βは
TNFαとともにRAにおける滑膜炎と関節破壊において重要な役割を演じていると考えられ
ている。IL-1RaはIL-1αとIL-1βのIL-1レセプターへの結合を阻害することにより、IL-1
の標的細胞の活性化を妨げる。
anakinraの連日1回150mgの皮下注投与によるRAの自他覚症状の改善度は、ACR20 
criteria による評価でプラセボよりも優れていることが、無作為二重盲検法によるコン
トロールスタディにより示された。anakinraはプラセボよりもHAQスコアを改善し、画像
所見の進行を抑制した。最近の研究では、1.0mg/kgまたは2.0mg/kgのanakinra とMTXの併
用療法はMTX単独療法よりも有効あることが示された。
anakinraは連日100mgの自己皮下投与量でRAに対する使用が認可されている。注射は業者
が供与する特別仕様の注射器の使用により簡易化されている。副作用としては注射部位の
局所反応の報告が最も多い。これらは投与開始後4週以内に最も多く、数日ないし数週で
消失する。このような副反応のために薬剤投与が中止されることも時々ある。他の生物学
的治療と同様、重篤な感染症や悪性腫瘍の危険性が心配されるが、安全性を示す資料は少
ない。喘息/COPDの患者では肺感染症の頻度が高いので、anakinraは注意深く使用される
べきである。anakinraは、いかなる活動性感染症の患者にも投与されるべきではない。
anakinraのRA管理における位置付けは他の生物学的治療と同様である(??原文:
Anakinra fits into the management of RA along with the other biologic therapies.
最後の一文ですが、どう訳したら良いかわかりません。誰か教えてください。陳謝。)
[2002年2月23日 22時6分4秒]

お名前: 谷口敦夫   
担当分のp.332 RAの薬物療法からレフルノミドまでです。
なお1)2)などの小見出しは見やすくなるように私が勝手に付けたものです。

薬物療法
RAの薬物治療はNSAID, DMARD,steroidからなる。使い方などは表2,4,5および96年のガイド
ラインを参照。
1.NSAIDs
関節痛、関節腫脹、関節機能の改善のために行われる最初の薬物治療にはサリチル酸、
NSAIDs,COX-2 阻害薬が用いられる。しかし、これらは鎮痛作用や抗炎症効果はあるものの
RAの経過や関節破壊を妨げるまでの力はない。したがって単独で用いるべきではない。
1)COX-2阻害薬について
サリチル酸やNSAIDsはCOX-1やCOX-2の一つあるいは両方を抑制する。COX-1は血小板、胃腸
粘膜細胞、血管内皮細胞といった多くの細胞で構成的に産生されている。COX-2は特に炎症
部位の細胞で産生され、産生量は何倍にも増加しうる。選択的COX-2阻害薬は通常のNSAIDs
よりも有意に胃腸障害が少ないが、通常のNSAIDsよりもさらに効果が高いというわけでは
なく、高価である(15-20倍高い)。
2)NSAIDsの副作用(特に胃腸)
RA患者のNSAIDsによる重篤な副作用はOAの2倍である。NSAIDsによる胃十二指腸潰瘍の危
険因子は年齢(75歳以上)、潰瘍の既往、ステロイド併用、抗凝固薬併用、高用量の
NSAIDs、NSAIDs多剤併用、重篤な基礎疾患があること、である。重篤なGI副作用を来すリ
スクが高いと考えられるRA患者に対する対策として、NSAIDsのかわりに少量のステロイド
薬、non-acetylated salicylate(ドロビッドなど)、COX-2阻害の選択性が高い薬物、
NSAIDと胃保護剤(高用量のH2 blocker ,プロトンポンプ阻害薬、経口PGアナログ)の併
用、が考えられる。H2 bloskerはdyspepsiaには有効であるが、NSAIDs単独投与例に比べ
NSAIDsと低用量H2 blosker併用例の方がGI合併症の頻度が高かったという報告が一つある
ので、dyspepsia防止、あるいはNSAID胃障害の防止目的でH2 bloskerをルーチンに使うこ
とは勧められない。
3)COX-2阻害薬の副作用や使用上の注意
通常のNSAIDsよりも高選択性COX-2阻害薬の方がGI eventsが有意に少ないことは最近の2
つの大規模調査で示された。しかし注意点がいくつかある。抗血小板療法が適応になる場
合、低用量アスピリンが必要である。通常のNSAIDにくらべて高選択性COX-2阻害薬は血小
板の粘着や凝集に影響を及ぼさないから。低用量アスピリン併用投与すると高選択性COX-2
阻害薬のGI副作用減少効果が部分的に低下するかもしれない(訳注:原文ではameliorate
となっていますが、引用文献を参考にするとdeteriorateの間違いではないかと思うので
す。)。高選択性COX-2阻害薬は通常のNSAIDsと比較すると、血栓の発生(たとえば心筋梗
塞の発症など)が多いと報告されている。通常のNSAIDsとCOX-2阻害薬の併用は血管内
volumeが減少しているときや浮腫のあるとき(うっ血性心不全、ネフローゼ、肝硬変、血
清クレアチニン2.5mg/dl以上など)には避けるべきである。

2.DMARDs
1)DMARDsの意義、開始時期、種類
すべてのRA患者にDMARDsが使われるべきである。DMARDsはNSAIDsやステロイドと異なり、
関節の障害を減らすあるいは妨げる作用が期待でき、したがって、ヘルスケアのコストを
減らし、患者の経済的な生産性も維持できる可能性がある。診断が確定しており、NSAIDを
使っても関節症状・所見の悪化、ESRあるいはCRPの上昇、XPによる関節の変化が進行する
患者については3ヶ月以内にDMARDsを開始すべきである*。未治療で滑膜炎が持続し、関節
障害を持つ患者にはさらなる関節障害を防ぐ、あるいは遅らせるためにDMARDsを使うべき
である。
RAによく使われるDMARDs(表2)はヒドロキシクロロキンHCQ、SSZ、MTX、レフルノミド、
エタネルセプト、インフリリシマブである。使用頻度の少ないものは、D-Pen、gold 
salts、minomycin、シクロスポリン。DMARDsの有効性を示す報告は多く、一部を表4に示
す。しかし、DMARD同士を比較した報告は少ない。*訳注:要するに、RAと診断されて、
NSAIDsを使っても進行する場合は3ヶ月以内にDMARDsを始めよ、ということだと思いま
す。NSAIDsがRAの経過を変えるものではないわけですから、実質的には診断確定後3ヶ月
以内にDMARDsを始める、ということになるのではないか、と思われます。しかし、NSAIDs
を使って、活動性がそれほど高くない症例に対しては急いでDMARDsを使うことはない、と
も読み取れます。
2)DMARDsの選択(総論)
DMARDsの選択には多くの因子が関与する(表2,4,5)。患者と医師は、有効性、投与の便利
さ、どの程度のモニターが必要か、コスト(投薬とモニター、受診・検査回数も含め
て)、効果発現までの時間、重篤な副作用の頻度の起こる可能性に基づいて、最初の
DMARDsを選ばねばならない。医師は、患者要因(コンプライアンス、合併症、疾患の重症
度と予後)や投与する薬に対して医師がどれだけ自信があるか、について評価すべきであ
る。薬の毒性については表5を参照。妊娠可能年齢の女性については多くのDMARDsについ
て避妊が要求されている(96年のガイドライン参照)。
3)DMARDの選択(各論)
安全性や便利性、コストを考慮して、多くの場合、HCQあるいはSSZが選択される。しか
し、病勢の強い患者や予後不良因子をもつ(訳注:原文では因子=indicatorsなので予後不
良因子を少なくとも複数持つ、ということになりましょう)患者に対してはMTXや併用療法
が好まれる。寛解が得られない・最初のDMARD(s)の反応が不十分であり、さらにリウマチ
医に一度も診察を受けていない患者は、リウマチ医のコンサルテーションをすべきであ
る。(このような場合)MTXが一度も使われていなかったら、MTXを使うべきである。MTXが
禁忌の患者、あるいはMTX25mg/weekで効果不十分な場合は生物製剤あるいはほかのDMARDs
(いずれも単独あるいは併用)が適応になる。
4)HCQとSSZについて
HCQとSSZは初期で病勢の緩やかなRAには症状の改善効果がある。HCQ単独ではX線所見を遅
らせる効果はないが、 HCQによる初期治療は長期のoutcomeに有意に影響する。HCQで皮
疹、急激な腹痛、下痢がまれに起きるが、概して問題なく使え(well tolerated)、ルー
チンの検査も必要ない。しかし、定期的に眼科医を受診させ、網膜毒性が可逆性のうちに
早期発見に努めねばならない。網膜毒性のリスクは6mg/kg以上で増加する。有効性が発揮
されるのは1-6ヶ月である。
SSZはHCQよりもより作用発現は早いであろう。しばしば、1ヶ月で効果発現が見られる。
重要なのはSSZはX線上埜進行防止効果が示されていることである。SSZは最初の2-3ヶ月に
多くの副作用(吐気、腹部の不快感など)が起こるが、たいてい問題なく使える。これら
の副作用の頻度はgo low,go slowという使い方で減少できる。白血球減少が時たま
(occasional)起こるし、より重篤な副作用がいつでも起こりうるので、定期的なモニ
ターが必要である。臨床効果は4ヶ月以内に明らかになるので、この時点で(効果がなけ
れば)治療の変更を考慮する。
5)MTX
多くのリウマチ医が、特に病勢の強いRAに対して、MTXを最初に用いる。効果、毒性、コス
トなどの点から、MTXは新しいDMARDsが評価されるときのスタンダードになっている。ラン
ダム化試験や長期試験でMTXのX線所見改善効果が示されている。
MTXを投与された患者は3年以上MTXを継続しており、これはDMARDsのなかでもっとも長
い。MTX は「効果不足」よりも「副作用」で中止されることが多い。口内炎、吐気、下痢
そして、おそらく脱毛は葉酸あるいはfolinic acid投与で減らせられる。MTXの比較的禁忌
は肝臓疾患、腎障害、著しい(significant)肺疾患、アルコール乱用者である。
MTXの最も高頻度の副作用は肝機能異常であるので、肝機能をモニターする必要がある。し
かし、MTXの肝機能異常の危険度は低い。ACRによるMTXの肝障害モニターのためのガイドラ
インによれば、MTXを投与中あるいは中止後も肝機能異常が認められる場合に肝生検が行わ
れるべきであるとしている。まれであるが生命の危険のある副作用である肺毒性はMTXの投
与量や投与期間にかかわらず発生しうる。リンパ増殖疾患はMTX投与中の患者にまれに起こ
りうるが、MTXとの関係ははっきりしていない。コレラの症例の一部はMTX中止で縮小ある
いはよくなったりする。MTXは催奇形性の可能性があるので、投与中は避妊が勧められる。
6)レフルノミドLeflunomide(勝手にLFMと略)
LFMはMTXと同じくらい有効である。あるいはMTX無効例に有効である。RA疾患活動性の減
少、X線上の進行の減少はMTX小-中等量(modest)とほぼ同等である。十分量のMTXでも効
果が得られない症例に対し、MTX+LFMの併用が有効である。
LFMの5%、MTX+LFMの60%までが肝機能異常を呈する。LFMは腸肝循環があるので、LFMの半
減期は長い。chestylamine resinを用いる推奨プロとコールを行わないと、LFMは2年間体
内にとどまる。LFMは催奇形性があるので、服用中の女性が妊娠を希望したら、妊娠する前
にLFMを中止して、chestylamineを用いねばならない。LFM禁忌:閉塞性胆道疾患、肝疾
患、ウイルス性肝炎、重篤な免疫不全症、妊娠のコントロール(つまり避妊)が期待でき
ない場合(inadequtae birth control)、リファンピシン投与(LFM濃度が上昇する)。

表5moniteringof toxicitiesから気のついたところを抜粋します。
SSZ:baseline evaluationにG6PDHが入っている
MTX:baseline evaluationに一年以内のCXP、high risk patientsでのHB・HCVチェックが
入っている。血液検査では一般検査(CBC,Cr,LFT)は最初6ヶ月は毎月、その後は1-2ヶ月
に一度。AST/ALT2倍以下の上昇時には2-4週のうちに再検、2-3倍では2-4週ごとにモニ
ターし必要に応じ減量。2-3倍以上の上昇が持続するときは投与中止し肝生検考慮。
LFM:モニターすべき副作用(下痢、脱毛、発疹、頭痛、免疫不全による感染)、baseline 
evaluationでhigh risk patientsにはHB・HCVチェックが入っている。血液検査では一般検
査(CBC,Cr,LFT)は最初6ヶ月は毎月、その後は1-2ヶ月に一度。AST/ALT2倍以下の上昇時
には2-4週のうちに再検、2-3倍では2-4週ごとにモニターし必要に応じ減量。2-3倍以上の
上昇が持続するときは投与中止しコレスチラミン投与、肝生検考慮。MTX併用例では少なく
とも毎月LFTをチェック。なお、コレスチラミン療法とは、コレスチラミン4-8gを一日3回
投与し、5日続ける。妊娠希望のために行うときはもっと長く続ける。
[2002年2月23日 17時44分15秒]

お名前: 寺井千尋   
担当分P332の2項です。


RA活動性の評価 Assessment of disease acvitity
 医師は、患者の通院ごとにRAが活動性か非活動性かを評価する(表3)。遷延する朝の
こわばり、疲労の持続時間、診察時の活動性滑膜炎などの炎症性関節病変(機械的な関節
障害に対応する語として)による症状があれば、RAは活動性であり、治療プログラムの変
更を考慮する必要がある。ときに、関節の診察所見だけでは疾患活動性や関節の構造的損
傷を十分に反映しないことがあり、赤沈・CRPの定期的な測定や関節機能評価ともに、罹患
関節のレントゲン撮影も必要である。関節の機能は、AIMS(Arthritis Impact Measurement 
Scales)やHAQ(Health Assessment Questionnaire)のような質問表によって評価する。関節
機能低下が進行するときは、それが炎症の結果なのか、関節の機械的損傷によるものか、
あるいはその両者なのかを見分けることが重要であり、その結果として治療の戦略がか
わってくる。
 ACRではRAの改善や臨床的寛解を定義する基準(criteria)を設けている。これらの基準
は臨床試験の結果評価に用いられるようになってきたが、日常の診療に幅広く使われるに
は至っていない。ACR20とは腫脹関節数と疼痛関節数が20%改善し、かつ次の5項目;患者
による全般評価(patient's global assessment)、医師による全般評価、患者による痛み
の程度、患者による身体機能の評価(原文では、degree of disability)、急性期反応物質
のレベル、のうち3つ以上が20%改善した場合をいう。これと同じ基準で、50%、70%改善
した場合をACR50、ACR70と拡大して用いる。このほかにも、Paulus criteriaなどの基準も
用いられる。さらに最近では、レントゲン上の進行評価(Sharp scoreなど)も結果評価に
使われている。

RAの非薬物治療 Nonpharmacologic treatment of RA
 RAの最善の治療のためには薬物療法以外の治療も必要である。まず病気の始めの段階
で、患者自身はRAという病気とともに生きていかねばならないことを受け入れ、治療法を
決める過程にも関わっていく必要がある。もし治療がRAを完全に抑えきれない場合は、患
者はこの持続し、再燃し、同時に身体機能が失われていく病気と折り合いをつけるため
に、感情的にも肉体的にもがき続けることになる。リウマチ医や他の内科医、同僚スタッ
フは、患者やその家族にRAについて教育し、長期にわたって支えていくうえで重要な役割
を担っている。リウマチ財団(アメリカの、The Arthritis Foundation)も有用な教育的
資料やプログラムを提供している。ナース、PT、OT、ソーシャルワーカー、health 
educator(適訳なし)、心理療法士、整形外科医などのRAに精通した広範囲な医療関係者
(health professionalsの訳としては間違っているか)のチーム・アプローチもRAの総合
的治療に必要である。
 関節の保護法や体力の消耗の回避法、家庭で行える関節ROM運動やストレッチングプログ
ラムを教育することは、関節機能の維持というゴールを達成するために重要である。運動
療法や作業療法はADLが障害された患者には、有効なことが多い。体をダイナミックに動か
す運動、場合によってはエアロビクスのようなプログラムに定期的に参加することによ
り、疲労感を増強したり関節症状を悪化させることなく、関節可動性を改善し、筋肉を強
化し、有酸素運動能力を改善し、さらには心理的にも良い状態をえることができる。

表3 RAの疾患活動性の評価

診察時毎に、自他覚的に疾患活動性がないかを評価する
 関節痛の程度(VASによる)
 朝のこわばり持続時間
 疲労の持続時間
 活動性炎症関節の有無(圧痛、および腫脹関節数)
 身体機能制限
定期的に疾患活動性、疾患の進行度を評価する
 診察上、疾患の進行の所見はないか(可動性の低下、不安定性、関節の不正
(malalignment)、変形)
 赤沈 or CRP
 罹患関節のレントゲン上の進行
その他の治療反応性評価指標
 医師による疾患活動性の全般的評価
 患者による疾患活動性の全般的評価
 質問表を用いた身体機能やQOL評価
[2002年2月21日 22時40分13秒]

お名前: 鎌谷直之   
以下のように割り当てましたのでお願いします。

Introduction → 山中先生

Goals of RA management → 山中先生

Initial evaluation of RA → 山中先生

Table 1 → 山中先生

Assessment of disease activity → 寺井先生

Nonpharmacologic treatment of RA → 寺井先生

Pharmacologic treatment of RA (NSAIDs) → 谷口先生


Pharmacologic treatment of RA(DMARDsのleflunomideまで) → 谷口先生


Pharmacologic treatment of RA(DMARDsのAnti-tumor necrosis..からOlder DMARDsま
で) → 赤真先生


Pharmacologic treatment of RA(DMARDsのTetracyclinからDMARDsの最後まで) → 針
谷先生


Pharmacologic treatment of RA(Surgical treatmentからCost considerationまで) →
 小竹先生

SummaryとAddendum → 立石先生
[2002年2月20日 18時40分6秒]

お名前: 鎌谷直之   
糖質コルチコイドの使用法の項目を約しました。

低用量(プレドニゾンで一日10 mg未満相当)の経口糖質コルチコイドや糖質コルチコイ
ドの局所注射は活動性のRA患者の症状を抑えるために非常に有効である。活動性の多関節
炎の患者は低用量糖質コルチコイド服用開始の数日後から速やかで著明な機能の改善を認
めることもある。しばしば一つ以上のDMARDsを投与されている併用療法の患者でさえ糖質
コルチコイドが中止されると機能障害の強い滑膜炎が再燃する。従って、RA患者の多くは
糖質コルチコイドに依存性であり長期にわたり継続する。

最近の証拠によると、低用量の糖質コルチコイドは関節破壊の速度を遅くし、そのために
疾患修飾の可能性を持つようである。糖質コルチコイドを中止すると関節破壊が強まる可
能性がある。

しかし、低用量糖質コルチコイドの利益は常に副作用とてんびんにかけなければならな
い。長期に低用量の糖質ステロイドを経口的に投与した場合の副作用は多方面にわたり、
骨粗すう症、高血圧、体重増加、液貯留、高血糖、白内障、皮膚の脆弱化、若年性動脈硬
化などがある。糖質コルチコイドを始める前にこれらの副作用について詳細に患者と議論
すべきである。長期の疾患コントロールのためには糖質コルチコイドの量は最小量にすべ
きである。RAのほとんどの患者ではこれは一日10 mg以下を意味する。

RAは糖質コルチコイドとは無関係に骨粗すう症のリスクがある。5 mg/dayの少量の糖質コ
ルチコイドの投与量でさえ骨粗すう症のリスクを上昇させるので、糖質コルチコイド投与
中は定期的に骨の喪失を評価する密度測定を行うべきである。糖質コルチコイド投与中の
患者は1,500 mgの基礎的カルシウムを毎日取るべきであり(食事と栄養剤を含んで)、毎
日400-800 IUのビタミンDを取るべきである。ホルモン補充療法が不適応でない生理終了
後の女性にはそれを考慮すべきである。骨吸収抑制薬であるビスフォスフォネート製剤は
骨喪失を抑制するので糖質コルチコイド開始時には考慮すべきである。

糖質コルチコイドの関節内や関節周囲への注射は経験ある内科医がやれば安全で効果的で
ある。最も強く冒されているニ三の関節をRAの早期に注射すると局所的な、場合によって
は全身の効果が得られる。効果はしばしば画期的であるが、一時的である。関節内の糖質
コルチコイド注射により急速に良くなると治療が効果的であるという確信を植え付けるの
に役に立つ。一つかニ三の関節のみが炎症悪化した患者では、しばしばその関節への糖質
コルチコイドの注射のみで他の治療を変えずにうまく治療できる場合もある。局所の糖質
コルチコイド注射は、また、関節機能の低下を防ぐためのリハビリをより積極的にさせる
ことに役立つ。

RA患者の関節炎悪化のすべてがもともとの疾患によるものではない。関節の感染、微小結
晶による関節炎を糖質コルチコイド注射の前に除外しなければならない。一般的に、同じ
関節を3か月以内に二度以上糖質コルチコイド注射をすべきではない。同じ関節になんど
も注射をしなければならない、あるいは多くの関節に注射しなければならない、というこ
とは全体の治療プログラムが十分かどうかをもう一度再考する必要があることを示している。
[2002年2月20日 18時30分55秒]

お名前: 平田信太郎   
>赤真先生
ネット医局からでも、女子医大ホームページからでも、図書館にリンクしていて
オンラインジャーナルでA&Rはfull textでみられますよ。
青山からも見られるようになって、大変べんりです。
[2002年2月20日 12時12分36秒]

お名前: 赤真秀人   
是非、目を通そうか、と思いましたが、まだ2月号(コピーも)が手に入りません。私は
ACR学会員でもないので、雑誌は送られてこないし・・・・。近日中にコピーさせてくだ
さい。
[2002年2月19日 21時6分54秒]

お名前: 山中 寿   
RA治療の 2002年版ACR guidelineが発表されました。
A&R 46(2):328-46,2002
まだ読んでいる最中ですが、診断の確定したRAを対象としていること、evidence-basedで
はあるが、臨床体験や委員会のコンセンサスも含まれている旨が記載されていて、立場が
明瞭になっています。
いくつか興味のある点として、
・治療のゴールは完全寛解と明記されている
・DMARDは診断後3か月以内に開始すべき
・予後不良因子を考えた薬剤選択の推奨
・治療費を考慮した薬剤選択の推奨
・MTXが標準DMARDになったことが明記された
・MTX 25mg/wで無効なら生物製剤!!
・レフルノミドはMTXに匹敵する
・抗TNFα療法は感染症に注意
・DMARD2,3剤併用が増えている
・ステロイド投与中は骨粗鬆対策が必須
・局所的増悪時のステロイド関節内注入の推奨
などが目に付きました。すごく勉強になりますから是非読んでいただきたいと思います。
[2002年2月18日 21時37分34秒]

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