記事タイトル:X-linked,筋ジストロフィー 


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お名前: 鈴木由貴栄   
 大変勉強になりました。さすが、勝又先生。ありがとうございます。ところで、回診で
問題になっていた方は神経内科に転院してしまいましたが、その後どうなったかなんてわ
かりませんですかね。
[2002年8月20日 23時21分3秒]

お名前: 勝又康弘   
X染色体関連優性では、父親が罹患している場合には、その娘はすべて罹患するが、常染
色体性優性ではそうとは限らない。
X染色体関連優性では、母親が罹患していなければ、息子はどれも罹患しないが、常染色
体性優性ではそうとは限らない。
というように、形質の発現と伝達の状態に男女差があるかどうかで両者の区別ができる
のではないでしょうか。
因に、書き忘れましたが、前記のX連鎖性Carcot-Marie-Tooth病は、X連鎖性優性遺伝病
の代表例です。
[2002年8月11日 14時24分50秒]

お名前: 鎌谷直之   
勝又先生ありがとうございました。

今、外来でCPK、LDH異常上昇で、母方いとこ(男性)が二人遅発性の重症筋疾患で死亡した
方が居ます。上の分類からはやはりBeckerが疑われます。ジストロフィン遺伝子はものす
ごい長さなので、遺伝子を全部読むとなると大変ですね。

ところで、X染色体関連優性(致死ではない)の疾患があったとします。遺伝子の検索な
しに、遺伝形式だけで常染色体性優性の遺伝病と区別できるでしょうか。
[2002年8月11日 5時52分53秒]

お名前: 勝又康弘   
ついでに,現在病棟で疑われる,肢帯型筋ジストロフィーについてです。なお,これはX連
鎖性ではありません。

肢帯型筋ジストロフィー(LGMD):主として肩甲帯・腰帯筋と四肢近位筋を侵す進行性筋ジ
ストロフィーの総称であり,遺伝学的に多様な疾患包括している。常染色体性優性(LGMD1A
〜D)・劣性遺伝(LGMD2A〜H)または弧発例がある。常染色体性劣性遺伝が多い。発症年齢は
10-40歳代で,進行は緩徐であり,血清CK値の上昇は中等度であると言われていたが,最近
は様々な臨床病態を呈することが報告されている。各型の鑑別やBecker型などとの鑑別は
遺伝子診断を要することも少なくない。
[2002年8月10日 19時6分38秒]

お名前: 勝又康弘   
rheumatologyとは直接は関係ありませんが,何度か回診で話題になった,筋ジストロ
フィーとX連鎖性神経疾患について簡単にまとめました。

Duchenne型筋ジストロフィー:遺伝形式はX連鎖性劣性遺伝であるが,弧発例も少なくな
い。Xp21のジストロフィン遺伝子の異常が原因。幼児期の発症。進行性の筋力低下を生ず
る。血清CK値は数千から数万に上昇する。女性の発症者が稀にある。心筋も含めた全ての
骨格筋の破壊がみられるが,平滑筋異常については存在するという説としないという説が
あり決着はまだついていない(ジストロフィンは平滑筋にも存在する)。

Becker型筋ジストロフィー: Duchenne型と同じ遺伝子の異常で発症するが,不完全なジス
トロフィンが形成される。発症は10-40歳で,程度が軽く,進行も遅い。稀に心筋障害も合
併する。血清CK値の上昇は Duchenne型の約半分くらいの上昇(正常の5倍以上)に留まる。
Southernblot法や直接シークエンスを行うと90%程度の確率でジストロフィン遺伝子異常が
証明でき,診断の第一選択となった。

X連鎖性Emery-Dreifuss型筋ジストロフィー(X-EDMD):小児期に発症する緩徐進行性の筋ジ
ストロフィーで,筋力低下に先駆けて認められる後頸部,肘関節やアキレス腱の拘縮,肩
甲上腕腓骨型の筋萎縮・筋力低下,心伝導障害を伴う心筋症を特徴とする。1994年,Xq28
上のSTA遺伝子(エメリン)が疾患責任遺伝子であることが報告された。他に,常染色体優
性・劣性のものもある。小児期に発症する。血清CK値は軽度から中程度の上昇に留まる。

Barth症候群:1981年,拡張型心筋症,好中球減少,ミオパチー及びミトコンドリア異常を
呈しX染色体連鎖を示すオランダの大家系が報告された。1991年に原因遺伝子がXq28にマッ
プされ,1996年に原因遺伝子G4.5が単離された。発症は乳児期。ミンパチーは外眼筋と球
筋以外にみられ,非進行性で比較的軽度である。血清CK値は正常。ジストロフィン異常症
(Duchenne及びBecker型筋ジストロフィー)などとは,遺伝子解析により鑑別可能。

Danon病:発端者は男児で,肥大型心筋症,空胞性ミオパチー,知的遅滞を主徴とする。極
めて稀な疾患である。遺伝子座はXq24にあり,原因遺伝子はLAMP-2である。血清CK値は
1000 IU/l前後まで上昇している。ほぼ例外なく母親も症状を来すので,臨床的には,X連
鎖性優性遺伝形式をとると見なされている。

過剰自己貪食を伴うX連鎖性ミオパチー(XMEA):幼児期より下肢近位筋を中心とする筋力低
下と筋萎縮で発症し,血清CK値が上昇する(1.5-15倍)。進行極めて遅く,患者は寿命を全
うする。骨格筋に多数の自己貪食空胞を認める。Danon病とは異なり,心筋障害はなく,知
能も正常である。極めて稀な疾患であり,遺伝子座がXq28にあることは報告されている
が,原因遺伝子は同定されていない。

X連鎖性ミオチューブラーミオパチー(XLMTM):筋病理所見が,一見幼若な筋管細胞に似て
いることから名付けられた。1996年,Xq28にあるミオチューブラリン遺伝子(MTM1)の変異
が原因であることが同定された。患者は全員男児である。新生児期より著明な筋力・筋緊
張低下を認め,大半の患者は1歳までに死亡する。

X連鎖性Carcot-Marie-Tooth病: Carcot-Marie-Tooth病は,緩徐進行性の四肢(とくに下
肢)遠位部の筋委縮と筋力低下を主症状とする遺伝性末梢神経障害で,一般に常染色体優性
遺伝形式をとることが多いが,X連鎖性遺伝の家系も知られている。遺伝子座Xq13.1に位置
するconnexin32遺伝子の変異。諸外国では160を越える家系が,本邦では約10家系が報告さ
れている。

Rett症候群:女性に発症する自閉症,痙攣,失調歩行,手をもみ合わせるような常同運
動,言語の使用がないなどの臨床的特徴を伴う発達障害。1998年に責任遺伝子座がXq28に
同定された。更に,1999年に遺伝子MECP2の変異が確認された。この変異遺伝子を持つ男性
は,正常遺伝子を持たないために致死となり出生に至れないが,変異遺伝子を持つ女性は
正常遺伝子とのヘテロ接合体であることから,生存可能な患者となる。

脆弱X症候群(ERAXA),martin-Bell症候群:Down症候群に次いで頻度の多い遺伝性精神遅
滞。特徴的な顔貌を持つ。責任遺伝子はXq27.3のFMR-1。その他にも多数のX連鎖性精神遅
滞(XLMR)が報告/遺伝子同定されている。
[2002年8月10日 19時5分7秒]

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