記事タイトル:滑液包、腱鞘... 


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お名前: 桃原茂樹   
ウチのセンターでもこれまでに5〜6例巨大化したBaker’s cystを摘出したことがあります。
いずれの症例も、関節内に通常確認される炎症性の滑膜像と異なり、
嚢状の袋内に粘液状の滑膜がつまっていました
(こういった表現はありませんが、滑膜が融解したようなドロドロとした感じです。
実際見るとちょっと気持ち悪い(-_-;))。
従って病理には、いつも滑膜包のみ提出しておりました。
全例、下腿三頭筋の筋層と筋膜の間に認められましたが、
筋膜とは剥離が容易ですが、筋層とは癒着している個所もあります。
たいてい、膝窩部より遠位に垂れ下がるケースが多いのですが、
稀に近位側に嚢腫を認めた症例もありました。
関節包とは、膝窩部の膝関節包の後内側と繋がっていますが
(この部位が組織的に弱いと言われています)、
時には交通部が閉じて、しかも2つ3つの袋を形成している症例も経験されました。
術中写真もありますので、今度カンファで供覧致します。
或いは、ここに添付できるのでしょうか?

Baker’s cystは、RAのみならずOAでも認められます。
ただ、RAの滑液包炎とそれ以外の滑液包炎では全く様相が異なる印象があります。
嚢腫内の状態が、RAでは上記したようにようなケースが多いのに対して、
通常見られる肘頭や前膝蓋部、大腿骨大転子部に生じる滑膜包炎では、
内容物は稀血性または水腫で、またRA性に比べ滑膜包も菲薄している感じがします。

滑液包炎より関節炎の炎症像が強い理由ですが、私の根拠のない意見ですが、
滑液包は大抵周囲が軟部組織に覆われており、従って血行性も乏しくなく修復しやすいのに対して、
関節内には骨軟骨が存在し、炎症の沈静化に障害になる可能性があると思います。
(感染性関節炎も軟部組織に感染した場合より難治性です)
また、RAの関節炎を軟骨のプロテオグリカンやType IIコラーゲンなどが何らかの原因で炎症の
抗原になると主張している発表も聞いたことがあります。
あと可能性としては、関節は常に動きが激しいので、安静がとれにくく炎症が持続しやすく、
従って痛みも強いのではないでしょうか?
いずれもエビデンスの無い私論です。どうぞご批評をお願い致します。

正座に出来る滑液包炎は足関節外顆より足背にかけての部位です
(言葉が足りませんでした。スミマセンでした)。

滑液包は、腱などに対しても摩擦を軽減するための小嚢ですので、アキレス腱周囲にも滑液包はあります。
(肩でも、肩板と肩峰の間にもあります)。
よく整形外来にもRAとは関係なくアキレス腱周囲の痛みを訴えて来院される患者さんは多いのですが、
繰り替えしのストレスによるアキレス腱周囲炎の滑液包炎が原因だと思われます。

Fasciaは、解剖の本には内臓、腺などを被う結合組織性の膜もFasciaとよばれると書いてありました。
腎臓には、腎筋膜(ゲロタ筋膜) renal fasciaがあり、 腎筋膜は脂肪被膜の間に存し、脂肪被膜を2つに分けるとの記載がありました。
また、
Parotid nodular fasciitis in a mobile phone user.(J Laryngol Otol 2000 Nov;114(11):886-7)
(We describe the first case of nodular fasciitis affecting the deep lobe of the
parotid gland in a 39-year-old male telephone engineer and its possible
association with the high usage of mobile phones.)といった論文もあったので、やはり腺を覆う膜もfasciaというのでしょうか。
Myofasciitisという言葉もありますよね。
あと、fascitisとfasciitisですが、これはうろ覚えですが、以前英和医学辞書を調べた時にはどちらでも使われるような事が書いてありました。
(今、自宅なので医局に行かないと調べられません)
eosinophilic fasciitisは、確かShulmanが報告した時からfasciitisでした。
因みに、medlineで検索するとfascitisでもfasciitisがヒットされました。
[2001年3月18日 21時45分15秒]

お名前: 鎌谷直之   
桃原先生ありがとうございました。
内科ではしばしば粘液包と言います。滑液包と言うことの方が
少ないです。滑液包で統一していいとおもいます。

Baker’s cystは通常の滑液包とちょっと違うと思っていたのですが。
Baker’sの場合は滑膜だけではなく、関節包もかぶっているのでは
ないですか。なぜなら、関節内から飛び出したものでしょう。
だから関節包ヘルニアと呼ぶと思っていたのですが。滑液胞は、
滑りを良くするために生理的に存在するものだと思っていたのですが。
Bakerは飛び出してくるのでしょう。

もし、関節内と交通のある滑液包があるとすると、関節包はどのよう
に滑液包とつながっているのですか。それとも滑液包も関節包に
覆われているのですか。

皮下滑液胞と言えば、大腿外側のものがそうでしょう?両側の大腿外側
に極めて大きな滑液包の症例を見たことがあります。

ところで、前から疑問に思っていたのですが、痛風でアキレス腱の発作が
起きるでしょう。アキレス腱には関節はありませんよね。これはアキレス腱
付近の滑液包炎ではないでしょうか。肘頭や足関節の外果部の滑液包には
しばしば痛風発作が起きます。これらの滑液包にはしばしばリウマトイド
結節に伴う滑液包炎がおきますよね。滑液包炎というのは関節炎より
はるかに痛みは少ないですよね。これはなぜですか。

正座による滑液包炎は外果より、足背によくきませんか?

好酸球性筋膜炎という病気があります。英語ではeosinophilic fasciitis
と言うのです。英語ではfasciaに筋肉を覆うという意味は無いのでは
ないでしょうか。
[2001年3月18日 6時47分53秒]

お名前: 桃原茂樹   
実際にこれらの用語を整形外科の中でも明確に理解して使っている先生は
少ないのではないでしょうか。或いは、明確に定義されていないところもあると思います。

筋膜:筋または筋群の表面を包む結合組織性の膜で、発達も部位によって異なるようです。
個々の筋をつつむ場合と幾つかの筋群をまとめて包む場合があるようですが、それも部位に
より強く癒着していたりします。最も表面の筋膜は体の全周を覆って皮下組織と筋層を分け
ています。Fasciaは、筋膜と日本語では略されていますが、本来筋を包むという意味は無く、
リボンまたは髪紐を意味するとのことです。内臓、腺などを被う結合組織性の膜もFasciaと
よばれるとのことでした(解剖学、金原出版)。

滑液包:筋や腱が骨、靱帯に接して通るとき、その間にあって摩擦を軽減する小嚢で、薄い
結合織性の膜に包まれ、中には滑液が含まれています。付近の関節と交通することも多く、
滑液包には筋下滑液包、腱下滑液包があり、また筋膜下滑液包や皮下滑液包もあります。
皮下滑液包は恒常的なものはむしろ少ないとのことです。病的な骨の突出があると二次的に
もできます。日本人は、正座をする習慣があるので、足関節外果部での滑液包炎の症例が
非常に多く(最近は西洋化スタイルが多くなったため少ない?)、正座の習慣がない中国には
同じ人種でも同部の滑液包炎は無いと中国の先生に聞いたことがあります。以前、このような
症例で疼痛が強い例を手術したことがありますが、足関節内と交通していました。
通常は、肘頭皮下滑液包炎、膝蓋前皮下滑液包炎などが多く外来で経験されます。この部位は
比較的外力がかかりやすいので、血腫や水腫を伴う滑液包炎を起こしやすいと思われます。
ただ、穿刺してもすぐにまた貯まることが多く、頑固な場合は袋を摘出してしまいます
(昨日も外来で肘頭皮下滑液包炎の患者さんを穿刺しました。その患者さんは1週前も
穿刺したのですが、2、3日で直ぐにまた貯まったと言っていました。ちょっとがっかり)。
膝関節後方は多くの滑液包があり、通常は拡張していませんが、膝窩包、腓腹筋半膜様筋包は
固有に関節腔と交通性を有することがあり、RAでもよく水腫を形成します。これがBaker嚢腫です。
この摘出術を行うと、膝窩部より下腿三頭筋の筋膜下にBaker嚢腫が確認されます。
時には、下腿中央より遠位まで伸びる事があります。
外反母趾では、母趾のMTP関節にBunionと呼ばれる滑液包炎が出現します。赤く腫れるので、
痛風との鑑別に大切ですよね。

腱鞘:長い腱に見られ、滑液包が長く腱を取り巻いたものを指します。腱鞘滑膜に炎症が起こる
と疼痛、腫脹が生じ、俗にいう腱鞘炎と呼ばれます。腱鞘が肥厚して狭窄を起こし、腱の滑走を
障害させる状態を狭窄性腱鞘炎と言います。手関節第1コンパートメント部位(長母指外転筋と
短母指伸筋腱が通る)でのde Qeruvain腱鞘炎や各指でのばね指が有名です。手関節伸筋腱には
滑膜が二重に腱を覆っていますが、RAではこの滑膜が増殖し、尺骨遠位端や手関節の滑膜炎も
加わって、伸筋腱の皮下断裂が生じると考えられています。

関節周囲の嚢状のものは、滑液包以外に例えばガングリオン(ブドウの房状ですが)や滑膜腫の
ような腫瘍もあると思います。粘液包という言葉は、解剖や病理の本にはありませんでしたが
如何でしょう(粘液、粘液変性、粘液腫はありますが)。

足りないところ、誤りがあったら補足をお願いします。
[2001年3月17日 16時14分48秒]

お名前: 谷口敦夫   
bursaは薄い膜でできた袋で、おもに腱の付着部周辺に有り、腱鞘とともに腱や関節の
動きを滑らかにする働きをしている。日本語では滑液包、粘液方、粘液嚢、ブルザと
呼ばれる。整形外科領域では滑液包と呼ばれることが多い。
・リウマチ病クリニックを訪れた患者の18%は軟部組織由来の問題が有り、
その内の58%は滑液包炎であった。
・高齢者では注意を要する。
・人体には300にのぼる滑液包がある。このうち股関節周囲には20以上が有り
滑液包の最も多く存在する部位である。
・新生児期に形成されたり、胎生期に形成されたり、後天的に形成される場合
もあるようです。
・滑液包液は関節液に比べて、疾患の性質による所見が顕著に現れない、のだそうです。
・滑液包壁にリウマトイド結節が生じ、その一部が壊死に陥り包状になったものと、
RA性滑液包炎と区別する必要がある。(区別が難しい、という意味でしょう)


以上、西林保朗著 股関節周辺のbursitis、リウマチ病セミナーI、p136より
[2001年3月17日 15時26分45秒]

お名前: 鎌谷直之   
滑液包、腱鞘、粘液包...
bursa, tendon sheath synovial cyst...
bursitis, tendovaginitis, tenosynovitis, tendinitis...
これらは同じものか違うものか?

bursaは関節内と交通しているかいないか?

リンパ浮腫の正体は何か?

fasciaは筋肉組織のみを覆う膜か?

bursaは関節周囲だけにあるのか?

関節周囲の袋状の腫脹は必ずbursaか?

以上に答えて下さい。
[2001年3月16日 15時42分39秒]

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