書き込み欄へ
ヘルプ
お名前: 鎌谷直之
実は、この問題は全くの架空の問題ではありません。
ある不整脈を見つけた、某大学の某教授が、あなたは突然死の可能性が高い、
身辺整理をしたほうが良い、と患者さんに言ったみたいなのです。
めずらしい不整脈を見つけてうれしかったのですかね〜。
患者さんはそのため、田舎に引越しをし、それが原因でひどい鬱になってしまいました。
EBM的には某教授の主張には根拠は無いと思います。
しかし、我々はこのような考えをしがちですよね。
それから、赤真先生、
確かに医学判断学では先生のいうように事前確率などが定義されていますが、
私はこのように考えます。
統計には因果律が必要です。
遺伝学の場合は因果(遺伝子が原因で症状などが結果)がはっきりしています。
事前確率: 原因の確率
条件確率: 原因があったときの結果の確率
尤度: 結果があったときの原因のもっともらしさ。これは条件確率と同じ値になる。
事後確率: 結果があったときの原因の確率
このような定義にすると理解が多少簡単になるのではないでしょうか。
これを身長、体重などにするとどちらが原因か結果がわからなくなります。
[2001年12月17日 22時38分26秒]
お名前: 岡本 完
ここまで、話が盛り上がってきたところで、こんな事を言うのは躊躇してしまいます
が。
この危険なSNPがある事を医者から聞いて、不整脈を起こす確率や、自殺する確率なども
計算に入れる必要はないでしょうか?ムンテラの内容でどのように反応するかは、患者
によって違うと思いますが、これもある遺伝子のSNPが規定するとすれば、計算可能で
しょうか?そうすると、ムンテラするのに適した医者やムンテラ内容も話し方も規定し
た方がいいように思います。私にはとても難問です。
[2001年12月16日 18時47分38秒]
お名前: 鎌谷直之
前の項で「突然変異」は「突然死」の間違いです。
発症率は0.0001だったとします。日本人を1億人とすると1万人。非常に多いとは言えない
が、まれとも言えない。よくある病気の発症率ですね。
発症したひとの中でのSNPを持つ人と持っていない人との割合は
pr: 1-p=1:1
でしたよね。
r=199ですから、p=0.005
発症率は
pqr+q(1-p)=0.0001なので
q=0.0000503
となります。
即ち、
事前確率:
SNPがある: p=0.005
SNPが無い: 1-p=0.995
条件確率
SNPがあるという条件の元で、突然死する確率 0.01
あるという条件の元で、突然死しない確率 0.99
SNPが無いという条件の元で、突然死する確率 0.01/199=0.00005
無いという条件の元で、突然死しない確率 1-0.01/199=0.99995
だから相対危険は
約200
事後確率
突然死したという「観測データ」の下でSNPがある確率
これが、50%ですよね。
突然死しなかったという「観測データ」の下でSNPがある確率
これが0.5%ですよね。
発症率は、
SNPのあるひとについて
0.005 x 0.01=0.00005
SNPの無い人について
0.995 x 0.01/199=0.00005
合計発症率は
0.0001(日本人を1億人とすると、1万人)
つまり、相対危険199のSNPがあるとしても、そのSNPを持っている人のたかが1%が突然死
するにすぎません。しかも、これは特殊な病気ではなく、よくある種類の病気についての
考察です。これは、これからSNPの相対危険を解釈する上で大切なことです。
真の患者の利益を考えれば統計的考察が必要、というのがEBMの主張です。
たしかに山中先生のいわれるように1%でも10%でも本人に取っては同じという考えもわか
ります。しかし、例えば、この突然死にある治療法があって、それにより投与した人の
50%で突然死が防止できるとしましょう。しかし、この治療法には副作用があって2%の人
で死亡するとしましょう。これも比較的よくあるsituationですよね。
もし、SNP陽性の人のこの疾患による死亡率が1%なら、このような治療は行うべきではな
いでしょう。なぜなら、投与した人の死亡率は2%+98%x1%x0.5=2.5%ですが、投与しないと
1%だからです。しかし、10%なら行うべきでしょう。なぜなら投与した人の死亡率は2%+
98%x10%x0.5=7%で、投与しないと10%だからです。
さて、ここでsensitivity, specificity, 診断的中率(?)とはどれに当たる概念でしょう?
[2001年12月16日 17時54分12秒]
お名前: 鎌谷直之
赤真先生の言われる通り、一般的に疾患と検査の関係では、
病気のあるなしを事前確率とし、病気のあるひとと無いひとにわけてそれぞれが検査がど
うなるかを条件確率とするのが普通です。
その理由は、病気が原因で検査が決まるのであり、検査が原因で病気になるわけではない
からです。
しかし、SNPの場合はSNPが原因で病気になる、と考えるのが普通です。ここがゲノムと他
の検査の大きな違いです。この場合は突然変異が原因でSNPがこうなったとは到底考えら
れないでしょう。
例えば、RA因子の場合はRA因子が原因でRAになったのではなく、RAが原因でRA因子陽性に
なったと考えますよね。
しかし、もちろん赤真先生の考えで当然良いと思います。
また、結論として発症率が低い場合はSNP陽性であっても突然変異の確率は極めて低いと
いうことが導かれます。
次の項で私流の考察。
[2001年12月16日 17時48分5秒]
お名前: 鎌谷直之
赤真先生の言われる通り、一般的に疾患と検査の関係では、
病気のあるなしを事前確率とし、病気のあるひとと無いひとにわけてそれぞれが検査がど
うなるかを条件確率とするのが普通です。
その理由は、病気が原因で検査が決まるのであり、検査が原因で病気になるわけではない
からです。
しかし、SNPの場合はSNPが原因で病気になる、と考えるのが普通です。ここがゲノムと他
の検査の大きな違いです。この場合は突然変異が原因でSNPがこうなったとは到底考えら
れないでしょう。
例えば、RA因子の場合はRA因子が原因でRAになったのではなく、RAが原因でRA因子陽性に
なったと考えますよね。
しかし、もちろん赤真先生の考えで当然良いと思います。
また、結論として発症率が低い場合はSNP陽性であっても突然変異の確率は極めて低いと
いうことが導かれます。
次の項で私流の考察。
[2001年12月16日 17時47分58秒]
お名前: 赤真秀人
私は、「古典的?」EBMの手法かもしれませんが、最も臨床医として知りたい確率を事後
確率とする方が分かりやすいので、そうしたいと思います。すなわち以下、一部、鎌谷先
生のコメントをコピーしますが、
突然死をAとする場合、(健常をBとします)
事前確率・・・有病率q、これはP(A)。このとき、1-P(A)=P(B)です。
事後確率・・・これが解答になるわけで、最も知りたい。
SNPがある(S)という条件の元で、突然死する確率 、つまりP(A|S)
条件付確率・・・
突然死したという「観測データ」の下でSNPがある確率、つまりP(S|A)、
これが、50%ですよね。
突然死しなかったという「観測データ」の下でSNPがある確率、P(S|B)、
これが0.5%ですよね。
われわれの多くが取っ付きにくい(私も取っ付きにくい)ベイズの定理を用いると、
P(A|S)=P(S|A)P(A)/(P(S|A)P(A)+P(S|B)P(B))
=0.5q/(0.5q+0.005(1-q))=0.5q/(0.495q+0.005)=q/(0.99q+0.01)
つまり、q(有病率です)が小さければ小さい程、私の定義した事後確率は100qに近付い
ていくようです。突然死が、10万人に1人程度の稀な疾患であれば、SNPを有していて
も、その100倍といってもたかが? 1/1000の確率でしか突然死しないということにな
ります。どこかで、計算間違いをしていたらすみません。オッズ比は199だったけ
ど...。
私の考え方の方が、私を含めた凡人にとっては、鎌谷先生のアプローチ法より、分かりや
すいと思いますが、皆さん、どうでしょうか。
追伸:先日の私のコメント、sensitivity が特に高い、はspecificity が特に高いの誤り
でした。
[2001年12月16日 15時52分9秒]
お名前: 鎌谷直之
私も赤真先生の意見に賛成です。ちょっと用語は違うのですが。
事前確率:
SNPがある: p
SNPが無い: 1-p
条件確率
SNPがあるという条件の元で、突然死する確率 x (実はこれを一番知りたい。)
あるという条件の元で、突然死しない確率 1-x
SNPが無いという条件の元で、突然死する確率 x/r(相対リスクがrなので)
無いという条件の元で、突然死しない確率 1-x/r
事後確率
突然死したという「観測データ」の下でSNPがある確率
これが、50%ですよね。
突然死しなかったという「観測データ」の下でSNPがある確率
これが0.5%ですよね。
以下続く
[2001年12月15日 11時8分47秒]
お名前: 赤真秀人
sensitivity, specificity とも(特にsensitiity)高いのですが、結局、臨床医としては(患
者としてもです)、SNPを持っている場合にどれぐらい突然死するのかを知りたいわけです。こ
れを事後確率と言っていいと思います。ということは、事前確率を知らないとあまり大きなこと
は言えないと思います。有病率を調べることが重要と考えます。
[2001年12月15日 10時56分30秒]
お名前: 鎌谷直之
谷口先生、そうではないのです。
ちょっと考えてみてください。特定のSNPを持った人のSLEに
なる確率など、わかるでしょうか?どれだけたくさんの人を
集めなければならないか、考えてください。
一般に、case-control studyではこのように、SLEを持った人
のSNPの割合と、コントロール集団の割合が比べられるだけで
SNPを持った人のSLEの割合がわかっているわけではないことに
注意してください。
これは、EBMに本質的な問題で、皆が間違いやすい問題だと思います。
EBMドクターになったつもりで考えてください。
[2001年12月15日 10時11分18秒]
お名前: 谷口敦夫
すみません、再読み込みをしたらいっぱい入っていた後でした...。
[2001年12月15日 9時40分1秒]
お名前: 谷口敦夫
特定のSNPを持っている人100人を調べたら50人が不整脈で死亡していた。もっていない人
では200人に一人であった:ではないでしょうか。
[2001年12月15日 9時38分34秒]
お名前: 鎌谷直之
皆さんするどいですね〜。
確率とか比率は考えにくい概念なので、数で考えてみましょう。
今、日本にn人の人がいるとします。
この内、割合pがこのSNPを持っている、1-pが持っていないとします。
持っていない人のqの割合の人が突然死をし、持っている人のqrの割合の人が突然死をする
とします。当然、相対危険(リスク比)はrですね。また、全体の発症率はpqr+q(1-p)とな
ります。
今、日本でこのタイプの突然死をした人の数を数えます。その中で
SNPを持っている人: npqr
SNPを持っていない人: n(1-p)q
だから、突然死をした人の中ではSNPを持っている人と持っていない人の割合は
pr : (1-p)ですね。
突然死をしない人だけを集めます。
SNPを持っている人: np(1-qr)
SNPを持っていない人: n(1-p)(1-q)
だから、突然死をしない人の中ではSNPを持っている人と持っていない人の割合は
p (1-qr) : (1-p)(1-q)
ですよね。
この人たちからサンプルを集めるわけですが、もちろん日本人全員のサンプルを集めるわ
けではありません。しかし、例えば突然死をした人のm1人、しなかった人のm2人を集める
とすると、比率は日本人全体と同じになる可能性が強いでしょう。
実際にはm1人、m2人のサンプルの中のあるSNPを持った人、持っていない人の数の期待値と
いう事になりますが、まあ〜単純にSNPを持っている人と持っていない人の数はだいたいつ
ぎのようになるでしょう。
SNPを持っている SNPを持っていない 合計
突然死をした m1 pqr /(pqr+q-pq) m1 (1-p)q/ (pqr+q-pq) m1
突然死をしない m2 p(1-qr)/(1-pqr-q+pq) m2 (1-p)(1-q)/(1-pqr-q+pq) m2
だからodds比はこうなります。
odds=pr/(1-p) x (1-p)(1-q)/(p(1-qr))=(1-q)r/(1-qr)=(r-qr)/(1-qr)
qrはSNPを持っている人の特定の突然死の確率です。もしこれが小さければqrはほぼゼロに
なって、odds=rとなります。
即ち、case-control studyの場合はオッズ比が本当のリスク比に相当する。
猪狩先生正しい。しかし、これはqrが小さいときだけですね。
これを最初からサンプルの見掛け上のリスク比を考えるとどうなるでしょう。
ある特定の不整脈で死亡した人の遺伝子を100人調べたら、50人があるSNPを持っ
ていたのです。一般対象を200人調べたら1人しかそのような人はいませんでした。
だから、50%と0.5%を比べて、SNPを持っている人は100倍の危険があると判断
したのです。
このような考えは正しいでしょうか。
この見かけリスク=pr/(pr+1-p) x (1-pqr-q-pq)/(p(1-qr))=r(1-pqr-q-pq)/((pr+1-p)(1-
qr))
これはqrが小さくてもせいぜい、
r(1-q-pq)/(pr+1-p)となり、rには近くありません。
例えば、猪狩先生が計算したように
odds比=199
見かけリスク=100
となるわけです。
だから、そのSNPを持っていると持っていないより199倍、特定の突然死をしやすい。
最初の100倍よりさらに厳しい結果ですね。
さて、患者さんにどう説明しますか?
続きは明日ね。
[2001年12月14日 18時55分34秒]
お名前: 猪狩勝則
ムンテラの内容は...
一般と比べ推定相対危険度が200倍だが、その疾患になった人の中ではそのSNPをもつ人
が1/2、つまり今後その疾患になる可能性は五分五分です、というところでしょうか。
しかし、これだけriskの高いSNPが見つかれば予防法、治療法を確立できる可能性も高そ
うですね。これはもはや遺伝病です。
[2001年12月14日 16時50分34秒]
お名前: 猪狩勝則
さらに言えば対照に存在するそのSNPをもつ唯一の人も今後その不整脈がみつかる危険性
が高いですよね、きっと。
[2001年12月14日 16時43分0秒]
お名前: 猪狩勝則
鎌谷先生、ケースコントロール研究で直接相対危険度を計算してはならないので、この
場合はodds比を計算すべきですよね。その場合odds比は(50X199)/(50X1)=199になるので
推定される相対危険度は約200倍ではないでしょうか?ちなみにχ2値は116ですね。
どう対処するかというのは難しい問題ですね。
まずはこのSNPが影響を与える可能性のある遺伝子が不整脈の発生を説明できるかを検討
すべきですが、ここまでriskの高いSNPは偽陽性である可能性は低いでしょう。
この結果が偽陽性でないことを前提とすると、情報を知り得た以上治療法もしくは予防
法があるないに関わらず患者に説明しないわけにはいきません。予防法が確立していな
い場合にはつらいムンテラになりますね。
[2001年12月14日 16時28分55秒]
お名前: 山中 寿
患者の立場で考えてみます。
突然死しやすいSNPを持っていることを告知されたら、
1.医師に予防策を尋ねる。
2.治療可能であれば服薬も辞さない。
3.生命保険に入る(または見直す)。
4.遺言状を書く。
5.身辺をきれいにする。
6.人生観を見直す(どう見直すかは旧来の人生観による)。
突然死の可能性が0.1%/年でも50%/年でも同じ行動を取ると思います。
[2001年12月14日 15時58分2秒]
お名前: 鎌谷直之
反応が内容なので、それではこのように考えていきましょう。
100倍、特定の不整脈による突然死を来しやすいというのはこのような研究によるもので
す。
即ち、ある特定の不整脈で死亡した人の遺伝子を100人調べたら、50人があるSNPを持っ
ていたのです。一般対象を200人調べたら1人しかそのような人はいませんでした。
だから、50%と0.5%を比べて、SNPを持っている人は100倍の危険があると判断
したのです。この判断は正しいでしょうか。
[2001年12月14日 11時9分2秒]
お名前: 鎌谷直之
こういうことはこれからしばしば起きると思います。
あるSNPがあると無い場合に比べて100倍、特定の不整脈による突然死を来たしやすいとする。
目の前の患者さんがこのSNPを持っていることがわかった。
あなたは、どのように対処しますか?
[2001年12月13日 16時27分56秒]
このテーマについての発言をどうぞ。
※半角カナは使用しないようにしてください。文字化けします。
記事一覧に戻る