記事タイトル:インフルエンザよりも、麻疹が…… 


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お名前: 勝又康弘   
 日本における麻疹の予防接種は、1969年からは新たに開発された高度弱毒生ワクチンに
切り替えられ、その後1978年から定期予防接種に組み入れられましたた。その後、安定剤
として含まれていたゼラチンが重篤なアレルギー反応の原因となることが判明し、1996−
1998年にかけて除去あるいは低アレルゲン性ゼラチンへの変更等の改良が加えられつつ、
現在に至っています。予防接種後副反応報告の減少は、この効果が現れているものと推察
されています。一方、1989年、MMRワクチン(統一株)が導入され、定期接種のワクチンと
して麻疹ワクチン、MMRワクチンのどちらを接種してもよいことになりましたが、MMRワク
チン中に含まれるおたふくかぜワクチン株による無菌性髄膜炎の多発が問題となり、日本
におけるMMRワクチンは1993年4月、接種が中止となりました。

 麻疹ワクチン接種後の主な(臨床)副反応は接種後7-10日前後に時に発疹を伴う発熱を
認めることです。2000年度予防接種後健康状況調査によると、発熱は18.2%(うち38.5℃
以上は10.7%)であり、発疹は8.8%、局所反応は2.9%、蕁麻疹は2.8%、けいれん(この
うち90.5%は発熱を伴うけいれん)は0.34%でした。また、予防接種後副反応報告は平成7
〜12年度の6年間に総計618件の報告があり、報告頻度が高いものとしてはアナフィラキ
シー等の即時型全身反応、発疹、および発熱ですが、脳炎・脳症の報告も平成8、9年に
それぞれ1例報告されています。但し、予防接種後副反応報告はワクチンとの因果関係がす
べて直接証明されているわけではありません。また、国内外から関連はないと指摘されて
いる卵アレルギーと麻疹ワクチン接種後のアレルギー反応の関係を指摘する声もまだ根強
く残っていることも問題とされています。

 1978年以降、麻疹ワクチンが定期接種となりましたが、接種率はようやく80%を超えた
ところで、地域によっては50〜60%と低いようです。また、2001年度感染症流行予測調査
から得られた麻疹ワクチン接種率では、1歳(生後12〜24か月未満)児の接種率が50.0%と
低く、麻疹患者の中では1歳児が最も多いことを考えるとこの年齢での接種率を向上させる
ことが麻疹対策上の急務であるようです。2歳(生後24〜36か月未満)児では78.8%に上昇
するものの十分とは言えません。また、MMRワクチン中止(1993年)直後に生まれた年齢群
である7歳児の接種率に落ち込みが認められます。また、麻疹による入院患者中92〜96%が
ワクチン未接種でした。

 2001年に大阪で実施された調査によると、流行の翌年であったにもかかわらず1歳6か月
児における麻疹ワクチン接種率は73%と流行抑制には不十分であり、また保育園通園児や
母が若年である場合は麻疹ワクチン接種率が低く、麻疹罹患率が有意に高かったのです
が、ワクチン未接種児の保護者においても大半が麻疹ワクチンの必要性を認識しており、
ワクチンに対して否定的な見解を持っている回答は総計で0.2%(2292名中5名)でした。
接種を受けていない主な理由は、接種予定日の体調不良や単にまだ受けていないとする回
答でしたが、実際は一度機会を逃すと次の接種機会が得にくいという現状があるようで
す。

 なお、麻疹ワクチンの免疫獲得率は高く、ワクチン効果(VE)は95%以上と言われていお
り、最近の調査結果でもこのVE並びにワクチン接種者における麻疹抗体保有状況は概ね維
持されています。
[2003年2月16日 14時4分30秒]

お名前: 勝又康弘   
予防接種の問題については、私が学生実習をしていた7-8年前にも小児科の先生が憤ってい
たのを思い出しますが、その後なんら状況が改善されていないのは、やはり国民性やマス
コミ報道などに鎌谷先生がご指摘されたような背景があるからなのではないかと思いま
す。

ちなみに、1989年、MMRワクチンが導入され、定期接種のワクチンとして麻疹ワクチン、
MMRワクチンのどちらを接種してもよいことになりましたが、MMRワクチン中に含まれるお
たふくかぜワクチン株による無菌性髄膜炎の多発が問題となり、日本におけるMMRワクチン
は1993年4月、接種が中止となりました。麻疹ワクチンについては、現在も定期接種の対象
となっています。しかし、接種率はようやく80%を超えたところで、地域によっては50〜
60%と低いようです。

また、最近の統計によれば、麻疹の死亡数は、確かに1980年代は80-100人でしたが、最近
10年間は10-40人のようです。
[2003年2月16日 14時3分59秒]

お名前: 鎌谷直之   
もともと日本では麻疹は小児期にほぼ強制的に予防接種されていたのではないでしょうか。
しかし、予防注射による脳炎が発生したため、強制ではなくなったのだと記憶しています。

マスコミで大きく取り上げられ、騒がれた記憶があります。
マスコミが騒いで予防注射の率を下げたのに、それを今回騒いだら自分の責任を認める
ことになる。そのような理由もあるかもしれません。

北朝鮮の拉致問題もそうだけど、日本では大新聞の問題が極めて大きいと思います。
日本の大きな問題の責任の多くは大新聞にある。しかも国民の多くがその問題を
見抜けない。

確か、麻疹の予防注射をすべての小児に行うと数年に一人位の割合で脳炎による
死亡者が出る。しかし、やらないと年間数十人の死亡者が出る。

従って、予防注射による死者の数だけ見ると新聞にとっては大きな記事の種です。

確かに死亡した人や家族にとっては、予防接種をしなければ死亡することはなかったわけ
です。
マスコミは何もしないで年間数十人が死亡するのは許せるが、何かの行為で数年に
一人死亡することは許せない。

(またいつも統計か、といわれるのはわかっていますが)
ここにもやはり統計と疫学の教育の不足が影響していると思います。
そして、日本の行政(厚生省は特に)に覚悟が欠けていると思います。日本の医師と
同じように。(臆病な医師、勇敢な医師、覚悟の医師のモデルがあると思いますが)

数年に一人の死亡者について説明するための論理は統計しかありえないと思います。
しかし、国民はそれを納得いく形で教育されていないため、実感がわきません。

欧米で新薬を医師に使用させる手法は統計疫学的論理です。日本で新薬を医師に
使用させる手法は、偉い先生のすすめとイメージ(インスリン抵抗性とか)です。

同じような問題が厚生省にもマスコミにも存在すると思います。
[2003年2月16日 5時44分1秒]

お名前: 勝又康弘    URL
ちなみに、同日朝刊の記事によれば、

厚生労働省は14日、今月3日から9日までに指定した全国約5000の医療機関から
報告があったインフルエンザの患者数が2週連続で減った、と発表した。患者数は13
万7108人で、1つの医療機関が報告した1週間の患者数は平均29.03人。前々
週は38.52人、前週が35.02人で少しずつ減少している。厚労省は「ピークは
越えた感じだが、下がり幅は小さく、まだ警戒が必要」としている。 


それから、前記の国立感染症研究所の提言は、新聞記事からの引用ではなく、厚生労働
省のホームページからの引用です。
[2003年2月16日 2時0分4秒]

お名前: 勝又康弘    URL
ちなみに、同じ夕刊には、小さく、「はしか予防接種率向上目指し提言へ」という記事
も掲載されていました。

国立感染症研究所 感染症情報センターの提言によれば、「麻疹に対する特異的な治療
法は存在しない。公衆衛生学的にいえば麻疹流行、個人レベルでは麻疹ウイルスの感
染・発病に対する確実で有効な予防手段は麻しんワクチンしかない。天然痘はワクチン
の力により根絶された。ポリオもワクチンの効果により、日本を含む西太平洋地域にお
ける根絶宣言が2000(平成12)年10月に出されたばかりである。両疾患には有効な治療
法は存在しないが、このように対策が成功した最大の原因は原因ウイルスがヒトを唯一
の宿主としたことと、効果の高いワクチンが開発されたことである。麻疹はこれら2つの
疾患と同様の条件下にあり、ワクチンによる根絶可能疾患であると考えられている。南
北アメリカやヨーロッパ諸国においては、ワクチンによる対策が奏効し、多くの国々
が、WHO分類の麻疹排除(elimination)期(国内伝播はほぼなくなり、根絶
(eradication)に近い状態)に至っている。一方、日本は最も初期の段階であるWHO分類
の麻疹制圧(control)期(麻疹は恒常的に発生しており、時に流行が起こる状態)にある
と評価されている。WHOでは麻疹患者数を非常に低いレベルに維持するためには新規ワク
チン対象者(日本の場合は1歳児が該当する)の麻しんワクチン接種率を95%以上に保つ
べきとしている。」

マスコミはこういうことをもっと大きく報道/啓蒙すべきと思いますが……。それは、や
はり厚生労働省や医者の仕事ということでしょうか。
[2003年2月16日 1時53分56秒]

お名前: 勝又康弘    URL
最近、インフルエンザの報道が目立ちます。本日(2/15)の朝日新聞夕刊にも、「インフ
ルエンザ 突然の「脳症」症状よく見て」という記事か大きく掲載されていました。
記事の内容にご興味のある方はURLをクリックしてお読み戴くとして、私が話題にしたい
のは、その記事の最後に付け足しのように書かれていた、以下の段落です。

ただ、専門家によると、インフルエンザから脳炎を併発し、さらに死にいたるのは、ま
れなケースだ。はしかの場合、年間の患者数は10万〜20万人、死者は80〜100
人に上る。死亡率は発症者1000人に1人の割合とされる。これに対し、インフルエ
ンザ患者のうち脳症を発症するのは1万人に1人、死者は5万人に1人だという。

ちなみに、同じ記事によれば、「インフルエンザ脳症は、毎年、数十人の死者が報告さ
れ」「1週間で10万人を超す子どもたちがインフルエンザにかかっており」とのこと
ですから、実際、この記事だけから判断しても、インフルエンザ脳炎よりも麻疹の方
が、死亡数も死亡率も高いわけで、保健衛生の観点からは、インフルエンザよりもむし
ろ麻疹の方が問題なのではないかと思います。そして、少なくともこの記事を書いた記
者や編集部はその事実を知らないわけではないにも関わらず、実際の報道は、そのこと
よりも、耳目を引きやすいインフルエンザの話題をセンセーショナルに取り上げている
わけです。そして、結果的には、効果的な情報を提供するというよりは、むしろ社会の
不安を煽ったり、マスコミが同様に最近話題にしている小児救急医療の危機的状況を更
に悪化させるおそれもあるのではないでしょうか。

まあ、新聞は、新聞を多く売ることや、読者に好まれる記事を書くことを目指している
のであって、国民の健康や日本の医療を向上させることを目的としているのではありま
せんし、医療行政に何ら責任や義務を負っているわけではないのでしょうけど。
[2003年2月16日 1時34分44秒]

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