オバチャリダ―になれなかった夏 
2002年
 


今回は一度も自転車に乗れなかった。
一度も梱包を解かずに送り返すことになった。
悔しくて涙も出たけど、
考えてみれば、身体作りも、気力作りも
何もしていなかった。・・甘かった!
只の「旅の記録」になってしまった。


7月17日 (水)

今年は去年の反省を元に、「初日は走らない」と決め、自転車も荷物も大沼のホテルに送ってしまってある。 
11:10 フロントバッグとウェストバッグだけで函館空港に到着。 雨は段々小降りになり、バスで函館駅に着く頃には殆ど止んでいた。

12:43の特急・北斗を確認して、朝市食堂へ行く。 小さいお店が沢山あって何処が良いか迷う。 前回トノと入ったお店は満員だった。 結局どこでも品物は市場のものだし、そう変わらないだろう。 
← 蟹・いくら・ウニ丼
予約しておいた大沼のホテル(クロフォード・イン大沼)に電話してみると、荷物は届いている。 
着いたら自転車を組み立てて、軽く走ってみよう。 
処が大沼公園駅に着いてみると雨は土砂降りになっていた。 
早めにステキな部屋に入って、まずはため息・・・ そして昼寝♪
目が覚めても疲れが取れていない、というより却ってアチコチの痛みを自覚する。
「明日どうしようかな〜?」 
こんなんで走れるのだろうか?
 


7月18日 (木)

腰が痛くて朝早く起きてしまった。 まだ明けない空からは音を立てて雨が降っている。
気持ちが萎えてしまう。 朝食の時間まで何時間も悩む。
朝食後やっと決心。 フロントに連泊を告げ、タウンページを借り、函館の治療院に電話で予約をする。
10;31の特急・北斗で出発。 万代町にある治療院へ。
理学療法士の資格も持っている60歳代のおじいさん先生のマッサージと鍼の打ち方は、いつも行っている治療院の先生と似ている。
「なんだぁ〜これは? このコチコチ、カチカチはぁ〜?」


大分スッキリし目も開くようになったけど、万一電車旅行に切り替えた時のために駅前のデパートで、「使わない時は小さくたためる」バッグを買った。
昼食後 14:00の北斗で大沼へ。 (北斗に二往復も乗ってしまった)
明日どうしようかな〜? (まだ悩んでいる)
ホテルで自転車を借りて片道30分の流山温泉まで行ってみよう。 その感触次第ということにしよう。
「運動機能障害に効く」 という温泉に入り気分良く帰ってきた。
夕食の時、ナイフとフォークを持ちにくいほど手の関節が痛い。  何度も手をこすり合わせながら食事を済ませた。 「もうダメだ」

明日函館から戻ってしまおうか。 
でも、自宅に居ても半分は職場みたいなもの・・・・ 
環境のせいにしている幼稚な自分を見て、更に落ち込みは深くなる。

 

7月19日 (金)

最小限の荷物を新しいバッグに詰め替え、 自転車、リアーバッグ、フロントバッグ等 自転車に関わる物を全部送り返してしまった。
今帰宅しても病院は連休に入ってしまうし、動きがとれない。 予定通りニセコに行こう。 ニセコに二泊して森林浴と温泉三昧にしよう。 ホテルあしりニセコに予約の電話を入れる。
「渓谷沿いの静かなホテル」というコピーに惹かれた。

9:53発の北斗で 長万部へ。
車窓から国道5号線が見える・・・。

長万部で 「かに飯」 を買う。

ここからニセコまでは小樽行きの各駅停車。
一両編成のワンマンカーは、 小さな駅にチョコチョコ停まりながら高度を段々と上げて行く。
気分は段々下って行く。
もう遊ぶ体力もないのか・・・、 かに飯を半分食べた処で涙が出た。
去年の涙は 「うれし涙」だった ・・・ そう思うとまた涙が出た。

ニセコの駅から送迎のマイクロバスに乗る。 なんだ 蘭越駅か昆布駅の方が近かったみたい!
時間は早かったけどお部屋に入れた。


改めて地図を見ると、ニセコのなんと広いことか。
足がないと身動きがとれない ・・・・ オイオイ ゆっくり寝るんじゃなかったの?

温泉に入った後、 フロントでレンタカーの手配を頼んだ。
明日は 有島武郎の小説のモデルになった画家・木田金次郎美術館、 彼の描いた岩内の海、雷電岬など絵と本物を見に行こう。 
「温泉付き、文学の旅」 はこうして始まった・・ジャ〜ン♪

夕食を摂っていると、さむえ(?)を着た男性が各テーブルを周っている。 料理長かな?
柔らかい物腰と笑顔に身体の力がフッと抜けていく。


7月20日 (土)

朝食後コーヒーを飲みながら地図を眺めていると、 あの料理長らしき人が現れ 
「お薦めのお店はここ、 温泉はこことこことこことここ!」
と地図に印を付けてくれた。
その後色々とお話を伺っていると、
Iさんはなんとここのオーナーだって。
経営の夢、挑戦・・・ 聞いていると、 「私もがんばろう!」という気になってくる。
元気をもらった♪

ガスだらけのパノラマラインを抜けると、最初のお薦め 「ノルマンディー チーズ ・ クレオ」 というチーズ工房、 そのチーズのショップ 「ケンブリッジ」が隣にある。
これはイケル♪
日本海側は晴れている。
狭い道のトンネルをいくつかくぐっていると、 奇岩があり、 ああ〜これが雷電岬だ。
お薦めの温泉、朝日温泉はあっという間に看板を通り過ぎてしまった。
尻別川に沿った道に入り、 湿った緑の中を走る。 「自転車だったらなぁ〜」 とついつい考えてしまう。
でも、正直言って 「ニセコに自転車で来なくて良かった」
だって、ものすごい坂だらけ・・!
ホテルまでもう少しという所に お薦めの「薬師温泉」があった。
看板には 「奇跡的に病気に効く」と書いてある。
希望をもって細い道をクネクネと入って行く。 
湯治場の趣き。 
深い湯船は、中で身体を動かしたり、リハビリの為ということらしい。
38〜39℃くらいのぬるいお湯だけど、浸かっていると思いの外温まるのか、汗が出てくる。

夕食後、またIさんとお話をする。
「奥湯本あじさいホテル」(浅田次郎著 プリズンホテル) に居るように、少しづつ気持ちがほぐれて行く。 癒されて行く。


7月21日 (日)

温泉街のはずれにある、ニセコの湧き水「甘露水」をペットボトルに入れ、出発。
真狩を通って支笏湖から千歳へ抜ける予定。
途中の 「道の駅、フォレスト276」のトイレには驚いた。 トイレロビーにグランドピアノがあり、自動演奏している。 個室は其々洗面台があり、ステキなランプも灯っている。
こ〜んな道の駅は初めてです。

夕方千歳空港に到着。
5年前の夏、ここから自転車の旅が始まったんだ♪ と思ったら、 なんとも言えず寂しくなった。