越昭三 監修/高橋泰嗣・加藤幹雄 共著「微分積分概論[新訂版]」(サイエンス社)は、 微分積分学の講義の際にお世話になっています。 気がついたことを書きます。
定理 11 で a < c < b とあるが、a > b のときは a > c > b となる。
三変数関数の偏導関数の定義が、同様とあるのみである。 fx では x 以外のすべての変数を定数とみなす、 と説明する必要があると思う。
全微分を説明するのはむずかしい。とにかく dz = zxdx + zydy と覚えよ、と教えてみた。 一変数関数の場合は dy = (dy/dx)dx だ、と説明すると、 高等学校での置換積分の際の便法としてすでに習っている者もいる。
全微分の式の dz, dx, dy をそれぞれ z - f(a,b), x - a, y - b で置き換えると接平面の式になる、 p.21 の、一変数の場合の接線の式も同様。
全微分可能ならば接平面がある、は述べられているが、 接平面があれば全微分可能か、が論じられていない。
p.128 の合成関数の微分公式。 この公式を使わなくても、具体例では、実際に代入して微分すればできてしまう。 p.130 の問 21 も同様。 方向微分係数を考える上では必要である。
p.129 の例 14 と問 18 について。
(d/dt) = { h(∂/∂x) + k(∂/∂y) } なのだから (d/dt)m z = { h(∂/∂x) + k(∂/∂y) }m z なのは明らかでは? と考えてはいけない。
合成関数の微分公式について。 dz = zxdx + zydy に dx = xudu + xvdv, dy = yudu + yvdv を代入すると dz = zx(xudu + xvdv) + zy(yudu + yvdv) = (zxxu + zyyu)dx + (zyxv + zyyv)dv となって暗記の役に立つ。 全微分の使い道を示したことにもなると思う。
p.134 の陰関数の定義について。
F(x, y) = 0 は陰関数表示、y = f(x) は陽関数表示と定義して、 F(x, f(x)) = 0 をみたす y = f(x) を、F(x, y) で定まる陰関数の陽関数表示、 としないと、わかりづらいと思う。
定理 17 の証明について。
D < 0 とすると、(a, b) を中心とするある開円板で fxy(x, y)2 - fxx(x, y) fyy(x, y) < 0 かつ fxx(x, y) ≠ 0 となる。 よって、教科書どおりに、 この開円板の中では f(x, y) が常に正または常に負、が言える。
D > 0 とする。 h2 + k2 = 1 をみたす実数 h, k に対し ―― この h, k は教科書の証明の h, k とは異なる ―― t に関する一変数関数 φ(t) := f(a + ht, b + kt) を考える。 φ'(0) = 0 であり、 φ"(0) = h2A + 2hkB + k2C は、h, k によって、正にも負にもなる。 よって、h, k によって、φ(t) は 0 で極小にも極大にもなる。
(教科書の D > 0 の場合の議論は、F2 - EG > 0 までは正しい。 しかし、Δf は (a + θh, b + θk)での二階微分の値で決まる。 θ が絶妙に選べて、Δf が定符号、という可能性が残る。 θ が、よって E, F, G も、h, k に依存することを忘れてはならない、とも言えよう。 たとえば、二階微分が極座標で書いて e-1/r sin(1/r), なんてことは起こらないか。)
(上の φ がすべての h, k に関して t = 0 で極大(または極小)であっても、 f が (a, b) で極大(または極小)とは言えないが、上の議論は大丈夫である。)
この定理の証明はむずかしい。 「g(x, y) = Ax2 + 2Bxy + Cy2 の原点での極大極小を調べればよいことが知られている」 と言って避ける方法もあると思う。
第 8 問で、f が C1 級という仮定はどこで使うのだろうか? 一変数関数の合成関数の微分の公式は、微分可能という仮定のみで成り立つ。
「z 軸に垂直な平面で切った断面積 S(z) を z で積分すると体積になる」ことは高等学校でも学ぶが、 それが述べられていないので、p.171 の回転体の体積などの導き出しが煩雑になっている。
p.174 の回転体の表面積は、[a, t] の範囲の面積を S(t) と書いたときの dS(t)/dt を考えると公式が覚えやすくなる。
p.174 の球の表面積は、体積を半径で微分すると表面積になる、と考えると覚えやすい。