高等学校の教科書では,式 Δz/Δx = (Δz/Δy)(Δy/Δx) において Δx → 0 として dz/dx = (dz/dy)(dy/dx) が得られる,とする。 しかし,大学の教科書ではこれを認めていないことが多い。 Δx ≠ 0 でも Δy = 0 の場合があるからである。
高木貞治「解析概論 改訂第三版」40 ページには
《このような粗雑な証明を補修するよりも,むしろ初めから仕直すのが早い
》
と書かれている。
簡単な修正で正しいものにできないか,と考えてみた。 できたように思うので,下に記す。
y = f(x), z = g(y) とし,それぞれ,a, f(a) において微分可能とする。 Δy = f(a+Δx) - f(a), Δz = (gf)(a+Δx) - gf(a) とする。
f'(a) が 0 でないときは, 十分に Δx (≠ 0) を小さくとれば Δy は 0 でない。 だからこの論法で OK である。
f'(a) が 0 のとき,(gf)'(a) = 0 を示せばよい。
よって,Δz/Δx → 0 となる。
(最後の段落をきちんと示してみる。
或る正の数 δ1 と或る正の数 M とが存在して, 0 < |Δy| < δ1 ならば |Δz/Δy| < M が成り立つ。 よって, |Δy| < δ1 ならば Δz = 0 または |Δz/Δy| < M が成り立つ。
或る正の数 δ2 が存在して, |Δx| < δ2 ならば |Δy| < δ1 が成り立つ。 よって |Δx| < δ2 ならば Δz = 0 または |Δz/Δy| < M が成り立つ。
一方,任意の正の数 ε に対し或る正の数 δ3 が存在して, 0 < |Δx| < δ3 ならば |Δy/Δx| < ε/M が成り立つ。 δ = min(δ2, δ3) とおくと 0 < |Δx| < δ ならば Δz = 0 または |(Δz/Δy)(Δy/Δx)| < M * ε / M = ε となる。)