2005 年 01 月 22 日(土曜日)午前 9 時 30 分から午前 11 時 30 分。 地球儀を利用しての球面三角形の実験を行なった。 参加したのは小学5年生から中学2年生までの12名。 3名ずつ4班に分かれて実験し、 各班には3人の大学4年生と私が一人ずつついて指導・助言を行なった。
財団に用意してもらったものは、地球儀、糸。 ほかには定規のコピー、分度器など。 あと、私が、メルカトル図法による世界地図のコピーを人数分だけ用意していった。 定規のコピーは、巻尺の代わりとして、地球儀に沿った長さを測るためのものである。 最初は方眼紙を切ってとお願いしたのだが、 財団の方が定規のコピーほうが便利でしょうと、 そちらを用意しておいてくださった。 また、 地球儀は財団の分だけでは足りず、近くの小学校から借りてきてくださったそうだ。 (財団および貸してくださった小学校に深く感謝します。)
まず、地図の上に、 ここ金沢と、 去年オリンピックが開催されたアテネとの間の最短ルートを想像して書いてもらった。 地図の上で直線で結ぶ人が多かったようだ。 次に、糸を使って地球儀上で調べることを提案し、試してもらった。 そして、そのルートの概略を世界地図上に写してもらうと、 北極のほうに寄った曲線が現れる。 さらに、定規のコピーを使って、そのルートの長さを測ってもらい、 縮尺から実際の長さを求めてもらった。 地球儀の大きさはまちまちだが、だいたい同じ長さになった。
次に、もう一つの都市としてコロンボを選び、 金沢、アテネ、コロンボのなす三角形の三つの内角を計ってもらった。 「二つ測ればあとは 180 度から引けばいい」との声が聞こえてきた。 角度の計り方は、ややむずかしい。 二人がそれぞれ一本の糸を持ち、二都市を通るように地球儀上に当てる。 そして三人めが交点に分度器をあて、角度を読み取るのである。 球面上で角度を測るのは初めてのようで、とまどいがあった。 班ごとに報告しあって、内角の和が 180 度を越えることを確認した。
こんどは、班で適当な地点を地球儀上に選んで球面三角形を作り、 その内角を測って和を計算してもらった。 だんだんに、 「三角形が大きいほど和は大きいのでは」 という仮説が広まってゆく。 また、正三角形を作ってみようという班もあった。 糸にマークをつけ、そこが頂点になるように広げるのである。
各班から報告してもらい、最後に 「実は、『三角形の内角の和が 180 度よりどれだけ大きいかで三角形の面積が決まる』ということが知られている」 ということと、 この事実を認めると、北極点を一頂点とし、 赤道上に残りの二頂点を持つ球面三角形の面積 --- これは比較的容易に計算できる --- から、超過した角度と面積が比例することがわかること、を話した。 ここはちょっとむずかしかったかもしれない。あとで質問が出た。 また、球面の上では平行線がない、と観察した班があったので、 直線外の一点を通って平行線が二本引ける世界もあるんだよ、と話した。 (予定では、我々の住んでいる空間も実は曲がっているのかもしれないね、 という話もしようかと思っていたのだが、むずかしくなりすぎるような気がして、 やめにした。)
坂本浩先生がやってこられて、 「夏にスイカを切る際にこの話を思い出してください」 と子どもたちに話されたので、私からも 「皮が(球面)三角形だったら内角の和から何等分したかわかる」と補足した。 (結婚披露宴のデザートによく出るメロンでもできるのだが、 あまり披露宴に出る年齢でもないだろうから、その話はしなかった。)
反省点。 二時間やっていると飽きてくる班もある。
生徒・児童の感想から。 「球面上だと角度などが測りにくい。平面っていいなあ」。 「食べたあとでもスイカが何等分かわかるなんてすごい」。 「**島が二つもあることを発見した」。 (文面どおりではありません。私のことばで言い換えました。)
2005 年 05 月 29 日(日曜日)午前 10 時 05 分から 12 時ごろまで。 中学2年生 11 名が対象であった。 補助として附属中学校の戸水先生、それに教育学部の大学院生が一名ついてくれた。
内容は、大学の数学のことばで言えば、 整数を成分とする二つのベクトルで平面を割ってできるトーラスの面積を調べてみて、 できれば、それをベクトルの成分で表わす式を予想してもらおう、である。 (証明は、たぶん中学生を対象としてはできないだろうと思う。)
財団に用意してもらったのは、 1センチ方眼のセクションパッドとトレーシングペーパー(いずれもA4)、 それに色鉛筆。 (色鉛筆は人数分はなかったが、一セットを二人で使えば十分。)
例えば、魚「σ卅<」が三匹並んでいる絵
σ | 卅 | < | σ | 卅 | < | σ | 卅 | < |
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次に、指定 --- このことばがいいかどうかはわからないがほかに思いつかなかった ---
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次に、いま塗ったマスの右隣を、別の色で塗ってください、というとこうなる。
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まだすきまがありますから、最初の色の下を第三の色で塗ってください、 などとやってゆくと、次になる。
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ここで、6 色が必要だったこと、それが 3×2 で計算できることを確認する。 「基本領域」ということばを教えて、 トレーシングペーパーを載せて、それを書いて確認させる。
■ ■■■ ■ ■ ■■ ■■■ ■■■ ■■ ■ ■のように何種類もあって unique ではないこと、 でもすべて 6 マスからなることを確認させる。 (ここまでで 30 分ぐらいかかってしまったのは予想外であった。)
次に、
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これは 5 色である。
ここでも基本領域の形を考えてもらうと、
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また、これは 「どの色を見ても、上下左右の四つの色が異なっている」 塗り分けであることにも注意。
次に、(確か)次の三つから好きなものを選んで、 同じように、何色いるかを調べてもらった。 (本当にこの三つだったかどうかは、記憶が定かでない。 もう一つぐらい全員でやったような気もする。)
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予想までゆくのはむずかしいだろうと思っていたが、 少なくとも2人できた。
その式をここに書くのはやめておこう。 いままでの例は、すべて、その式に絶対値がいらないものばかりであった。 “それ”が負にならないようにベクトルを選んであったのである。 ここで負になる例を見せて、絶対値の記号をつける必要があることを話した。 (絶対値の記号は、かなりの生徒が知っていた。)
思ったよりも進んだので、最後におまけとして
まとめとして、どうしてこの式で書けるのかの説明はいまはできないこと、 でも、あと三年ぐらいするときっと授業でこの式に出会いますよ、 という話をして終わった。
あと、予定では、絵を見て周期を読み取ることも考えていたが、 時間がなかった。 なるべく絶対値の小さい周期を選ぶとしたらどうすればよいか、 というような話もしてみたかったのであるが。
全員に書いてもらった感想では、 「おもしろかった」「理解できた」がほとんどだった。 式の予想はむずかしかったかもしれないが、 作業の意味はわかって、(それなりに)楽しく取り組んでもらえたようである。
色を塗る作業そのものに重点をおくなら、 もっと低学年を対象とすることもできそうである。 座標や負の数を習っていなくても、説明を補うか、絵で示せばなんとかなりそうだ。 式を予想するのは無理だから、 基本領域の形がいくつか見つかったところで、 それらの形から連想される動物・花などの絵で平面を埋めてみる、 などの方向へ持ってゆくことも考えられよう。
最後に、準備しておいた中から、割と使いやすい図になるものをあげておく。
9時から11時ごろまで、 明成小学校の科学教室中間検討会に、神谷先生とともに参加した。