「……もしかしなくても、つくづく僕って甘いのかもしれないな」 当麻の寝顔を見ながらそう思う。この認識は、きっと当たっているのかもしれない。遼にはよく言われる科白だから。 「だけど変だなぁ。僕は当麻にめいいっぱい厳しくしているつもりなんだけれど」 それとも自覚がない? ――まさか。 いきなりふってわいた結論に、ぶるぶると顔を横に振り、ともかくと伸は視線を当麻に戻した。 当麻はきっとコンピューターの仕事で疲れているんだろうし、もしかしたら連日の徹夜明け、なのかもしれない。体調が悪いのかもしれないし、むやみに起こすのもためらわれる。 もちろん、ただ単に寝こけているだけと言う事態もあり得るけれど、もしも本当にそうだった場合は、一発叩き倒してやればいいことだし。 心の中で物騒なことを考えつつ、伸は当麻を見下ろした。 実に、実に平和そうな寝顔。 なんだか見ているこちらまで眠くなってきそうな……。 ふわぁと思わずあくびが出てきて、伸は苦笑した。寝顔につられたかもしれない。 耳に聞こえてくるのは、穏やかな寝息。 カーテンの外はあくまでも青空が続いていて、見ているだけでも引き込まれていく感じがする。青一色の色は、頭の中をクリアにさせてくれる。 その証拠に、青空を見ているだけで、ほらこんなに何も考えられなくなる――。 「…………」 本当に眠くなってきた。 ふわぁぁともう一つ大きなあくびをして、伸はちらりと目の前の、心地よさそうなベッドを見た。そこには既に当麻一人が大きくのさばっているが、その身体を退ければなんとか自分もう一人くらいは楽に眠れるだろう。 迷ったのは一瞬の事。 「よし、決めた」 即座に決定を下すと、伸はさっさと大きな図体を移動させ、その横に滑り込んだ。少々窮屈だけれど、手足を動かすことはできる。 このベッドは当麻の趣味で、キングサイズのダブルなのである。購入したと聞いた時は何もここまでと思っていたが、それが今回は役に立ったという訳だ。 「……良い天気」 横になった先には、四角い空が見えた。のんびり雲が浮かんでもいる。 そっと、瞼を閉じた。 こんな天気の日に、何も昼寝なんてしなくても良さそうだけれど。 でも、こんな天気の日だからこそ。 側に、人の気配を感じる。けれども、嫌な感じはしない。嫌では、ない。 「――――……」 程なくして、伸は眠りについた。 青い空色の下。二人はあおの夢を見ている。 あとがきへ |