初めての沖縄キャンプ編

ダイビングを始めてまもなく、友人から沖縄県のケラマ諸島に行こうと誘われた。
「ケラマ?  ダイバー憧れの地と聞くけど、何があんのぉー?」と聞くと、友人は私の顔も見ず
「海。」 「他は、な〜んも無い。」とだけ答えた。
海の他になんにも無い島に行くなら、「あいつ」と行くか・・。 この時、私の頭にはジェスパの顔が浮かんでいた。

ジェスパを連れて沖縄の離島に行くには? 航空会社、タクシー会社、フェリー、島で犬を泊めてくれる宿はあるか?
犬を預かってくれるダイビングショップは? キャンプは出来るか? 食材、売ってるガスボンベの種類は? 
(ぜ〜んぶ調べた)とにかく初めての事だから電話を掛け捲り、この月の電話料がスゴイ事になったのは言うまでもない。

そして、一生分のやる気を出しきった我々は「犬連れ沖縄ダイビング旅行」を決定し、この時、ジュンコを隊長とした
ユウコ隊員、他友人多数、そして 奴隷・ジェスパ・ユウ(ジェスパの妹)の「ヘなちょこ隊」が結成された。

まずは隊長が偵察の為(?)友人4人と先にケラマ入りした。 本当は犬が来る前にダイビングを満喫する為だけど・・。
11月のケラマの海は、風向きの関係で外洋に出れないものの 静かな内海で珊瑚の山と無数の小魚達に囲まれ
楽園の様。 海ガメに会ったり、ガーデンイール(砂地に顔を出すムーミンに出てくるニョロニョロの様な奴)に
出会ったり、白砂に反射する太陽の光を見ているだけでもリラクゼーション効果抜群だった。

うっかり使命を忘れかけた隊長だったが、後発隊の隊員と奴隷達の合流後 3泊はキャンプをする事になっていた為
さっそく島で唯一のスパー「105ストア」に出向く。 食料はどんなものが売っているか、ドックフードはア○ポしかない
など詳しく調べ、後発隊に連絡。 準備万端で出迎えた。(よっ! さすが隊長〜。)

その頃、ユウコ隊員と友人は奴隷1・2を早朝の那覇行きの手荷物に預け飛行機に乗り 那覇空港から港までの
乗り継ぎ時間たった45分をタクシーでぶっ飛ばし、息つく暇なくフェリーに酔い、ヨレヨレになってケラマに到着した。

キャンプ場までダイビングショップの車で送ってもらう。  大荷物を降ろし、早速 設営開始。 
がっ! そこに管理人のおじいちゃん登場〜。 「犬は禁止なんだよー。 あんた達が連れて来たの?」 
「・・・はい。」 「どこから来たの?」 「東京です。」 「・・・・。 (絶句) 連れて来ちゃったんだからしょうがないけど・・。」
我々のやる気に役場のじいちゃんが負けた為、キャンプ場は晴れてO・Kになった。 
と、言っても我々の他にキャンパーは1組しかおらず、その後は我々だけだったが。

設営後は早速ダイビングへ。 犬はショップの裏庭に繋ぎ「静かにおしっ!」と言い聞かせ 海に潜った。
この日のポイントは深く割れた岩の間を縫って進む。 アップダウンが多く耳抜きが忙しい。
途中、ガイドさんが海底に沈む砲弾を手に持たせてくれた。 錆付いた砲弾はズシリと重かった。
沖縄の慶良間諸島は、戦争で一番最初にアメリカ兵が上陸した島で、島民は集団自決をしたとガイドブックに
書いてあった事を思いだした。 こんなに綺麗な海なのに・・。  複雑な思いがした。

 
村の繁華街からキャンプ場へ向う道。買い出した食材を運びます     キャンプ場の前の阿真ビーチ。海はとても綺麗だけど、空が・・。

ダイビングの後、「105ストア」で買物をしキャンプ場へ戻る。 島のメインロード(店が数軒並ぶ道)から20分は歩く為
決して買い忘れは禁物。  道すがら買うべき物を呪文のように唱えながら歩いた。
食事は、持参したガスバーナー1台と鍋2つで作らないといけないので、夜と朝の献立は必然的に限られていまうし、
島では、肉は全て冷凍、野菜はほんの少しの種類しか売っていないから、カレーやペペロンチーノ、焚き込みご飯など
簡単な物ばかり作った。  そういうストイックなキャンプもたまには良いかな?

翌日も昼間はダイビング。  ショップによっては「閑散期だから」と犬を船に乗てくれ、一緒に海に出れた。
そして暇さえあれば犬とスノーケル。 人も犬も潮・潮三昧。  全員、ふやけるまで海に浸かっていた。

その日の夕食は、島に4つしか無い居酒屋の1つに出かける事にした。
夜道は街灯が無いので、これまた20分の道のりをヘッドランプを灯しながら歩かなければならない。
明かりの届く範囲以外は真っ暗でかなり怖いが、強面のボディーガードが前後を固めていたので少しは心強かった。
居酒屋では、ゴーヤチャンプルー、ラフテー、ぐるくんの唐揚げなど沖縄名物の料理を頼み、泡盛で乾杯!
美味い料理に舌鼓を打っている頃、ボディーガード達は我々のドンチャン騒ぎを恨めしそうに外で見守リ続けたのだった。

ほろ酔い気分でフラフラとテントへ帰ると、友人のI氏が水中電気を取り出して夜の海へシュノーケルに行くと言い出した。
「やめろ〜!死ぬゾー--ッ!」と足を掴んで止めたが、ど〜しても行くと聞かないので 「お前が死んだら、奴隷のユウは
私が貰うぞぉ。」と言うと 「いいよ」と言うので 快く海へと見送った。 
しかし暫らくしても戻らないので、これはいよいよユウは私の犬になったか?と確認の為に浜へ行き、
友人として一応力弱くライトを振って見た。 すると、なにやらドッヂボールのような物を抱えたI氏が海から上がって来た。 
それは、パンパンに膨れたハリセンボン(怒ると針をいっぱい立てるフグ)だった。  
犬達は代わる代わるにフグに攻撃を仕掛けたが針で身を固めたフグに撃退されており、一同 大いに盛り上がった。
そして、心配を掛けたI氏を攻めたて(奴隷2が貰えなかった心残りもぶつけ)夜は更けたのだった。
(※海を良く知っている人でも危ないので、I氏のマネをしないで下さい。 お願いします。)

キャンプ最後の夜は暖かい風が強く吹き、なぜか昼間のダイビングの砲弾を思い出した
砲弾=戦争=兵隊さん=集団自決=沖縄=ここ=幽霊   段々と怖くなってお腹にジェスパ、背中にユウを
くっ付けても暫らく寝付きが悪かった。

3泊4日のキャンプ生活は、思いのほか快適だった。 初日に「犬はダメだから!」 「犬は繋いで!」
「流れが速いから遠くに泳いで行かないように!」とか、我々の顏を見るたびに叱っていた じいちゃんも
帰る日には、「またいらっしゃい。 (犬達に)お前達もまた連れて来てもらえなぁ〜。」と言ってくれた。
「うぅぅぅ・・。 ありがとう。 じいちゃんも長生きしろよなぁ〜。」と心の中で呟いてみた。

     
4日分のキャンプ道具&器材を撤収するとこんなに       ここが我等がパラダイス!犬ものびのびと過せるサザンウィンドです。

そしてこの日から、ペンションへ引越し。 ペンション「サザンウィンド」はケラマ唯一のペットO・Kの宿で、
ダイビングショップ「マリンサービス」も兼ね備えている。 外観は・・オンボロ。(-.-) でも、すぐリッチ気分にさせられた。
なぜなら、ペンションはオーナー・金さんの手作りの宿で、居心地が抜群だったからだ。 その上、料理が美味い!

翌朝、金さんとダイビングに出掛ける。 頑固オヤジって言葉がぴったりなオーナーだが、犬達にはムチャクチャ優しい。
当然の様に犬も船に乗せてくれた。 出かけたポイントでは、待望のハナヒゲウツボ(青に黄のラインが綺麗なウツボ)に
出会え、我々の満足度も高かった。 ダイビング後 港に帰る途中、浅瀬に移動し犬を泳がせてくれると言う。
犬好きオーナーならではのサービスだった。 浅瀬の場所では、日本で沖縄にしかいない「トウアカクマノミ」が生息して
居るというではないか。 我々は残った酸素で水深5〜6Mの海に潜りトウアカクマノミを探した。 
犬達も我々の後を追って海に飛び込み泳ぎ回る。 「居た居たっ! トウアカクマノミだぁ」  ちょっと感動したけど、
良く見るとたいして可愛くなかった。
オーナーの金さんは、水中カメラを持って潜っていたので目が合うたびに「写してもよろしくてよー。」と目で合図を送ったが
トウアカクマノミと写っていたのは、素潜りをしていたジェスパだけだった。 ( ̄^ ̄)フンッ!

        
ジェスパの左上の小さな白黒がトウアカクマノミ          ペンションのテラスから見渡せる阿佐地区の風景

アフターダイビングは、ペンションで一番居心地の良い2階のテラスでビールを飲み、一緒になった他のお客さんと
お喋りを楽しむ。 あ〜、の〜んびり。 本当に時間がゆっくり流れる島の雰囲気が味わえる。
キャンプも自由で良いけど、上げ膳下げ膳で時間がたっぷりあるペンションもなかなか幸せ。 来て良かったよー♪

ペンションでは、犬は自由にさせてもらえたので食事時間以外はほとんどノーリードですごせた。
金さんはジェスパとユウを可愛がってくれたが、2匹は主人以外に全くなつかず金さんに名前を呼ばれても知らん顔。
とうとう金さんは「じゃあ、奥の手だ」と沖縄産の分厚い鰹節スライスで犬達を釣っていた。
妹のユウは「何かくれる? じゃ、君の事を認めるよ」とすっかり金さんの術にハマリ、帰るまで金さんの(鰹節の)
虜になってしまった。 ジェスパは?と言うと、鰹節を手に持ってる時だけ金さんの所、あとは知らん顔を貫き通した。 

東京に帰る前の日、慶良間の海に沈む夕日を見ようと、展望台に向った。
誰もいない道を我が物顔で探検する犬達に付き合って歩いていたら、まずい、日が暮れてきた。
急に慌てて登ったがちょっとのところで夕日を見逃す・・。 真っ暗な岸壁を前に記念撮影となった。 

最終日キャンプの荷物とダイビング器材を送ってもらうものと持って帰るものに分けて全て梱包した。
良くこんなに持ってきたものだと関心。 こういう作業を想定して最後の日はペンションと決めていたが、
そうしてよかったと思うことしきり。
お世話になったマリンサービスの金さんに別れを告げて、夕方のクイーン座間味に乗りこんだ。
さようなら〜、座間味島。 ありがとうケラマの美しく豊かな海。 必ずまた来るからね〜。
こうして、我々の旅は終わった。

                  
                              

             

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