2.4HGz無線LANで高速道路橋脚反射伝搬を試みる(Dec 10〜 . 2017)
はじめに
2.4GHzの無線LAN(Wi-Fi)端末と1m径のパラボラアンテナを使い、2km程度のスパンをリモート無線局の伝送・制御に使っている。ここはほぼ見通し関係にあり、空中線電力は10mW(10dBm)ながら、到着電界は-50dBmを確保している。
今回、学区の象徴、通称「高山」中腹にカメラを設置し、自宅まで無線LANでで引き込もうと目論んだ。ところが自宅と高山の間には標高150m程の山がそびえ見通しを遮っている。
マイクロ波伝搬だから普通はそこで諦めてしまうところ。しかしそこはアマチュア無線家、過去の経験から大まかな推測を立て挑戦してみることにした。
そこで、清水いはらIC(新清水JCT〜清水JCTの中間に位置)の橋脚を反射板にして2.4GHz無線LANの伝搬実験を行った。
余談…過去業務用マイクロ波装置で、見通し外伝搬を数多くこなしてきた経験があり、構造物や建築物を見ると反射させてみなくなるDNAが備わってしまった様だ。
伝搬ルート
写真はgoogle航空写真上にプロットした、高山と自宅、そして反射板となる清水いはらICのループ橋の位置関係。クリックすると拡大する。左がカメラ設置予定の高山中腹農道(土地改良区承諾)。右が自宅タワー。

反射環境
左は下道西側より見上げる橋脚群のスナップ。
スパン:2130m(1650m+480m)
標高(アンテナ高):高山=205m、自宅=57m
標高差:148m
反射板位置のフレネル半径:6.74m(直径=13.48m)
反射板の形と実行面積:コンクリート柱・平面及び曲面、垂直面、高さ80
反射板の見通し:高山及び自宅タワーから完全見通し、写真左下は高山カメラ設置ポイントから、右下はタワー越しの眺望



想定電界
送信電力Pt:10dBm(10mW)
自由空間損失Lo:-106.79dB
アンテナ利得Gt/Gr:24dB×2=48dB
ケーブル・コネクタ損失Lc:3dB(想定) 反射損失Lr:?dB 受信電界Pr=Pt+Gt+Gr-Lo-Lc-Lr=10+24+24-106.79-3=-51.79-Lr
これで反射損失Lrに-30dB程度を見込むと、受信電界は-80dB程度になる。
無線LAN端末のサーベイ機能で拾い上げる無線LAN局は-90dB程度まで識別するので、反射損失-30dBは一つの目安になりそう。
橋脚の面積や角度については詳細資料が無いので、実験的に確認して、受信電界から損失量を算出する。
実験装置
高山側・自宅側共同じ無線LAN端末とアンテナを使う。
左は2.4GHz開口1mメッシュパラボラアンテナ(Premiertek)を自宅で対向試験。右は無線LAN端末(Buffalo/WAPS-HP-G54/工事設計認証機)。電源は、高山側は太陽光と鉛電池をインバータで5Vに変換して給電、自宅側は無線部屋からLANケーブルでPoE/48V給電する。


無線LAN端末出力スペクトラム
写真はWAPS-HP-G54の2.4GHz出力スペクトラム。
ここではスペクトラムより出力レベルに興味があったのだが、スペアナを校正して測定すると、尖頭値は10dBmに至らず凡そ6dBmと言ったところか…。赤マーカーは特に意味は無いので悪しからず。
ちなみにWebサーバーによる出力設定はMaxになっている。
画像はクリックすると拡大します。

設 置
自宅タワーに設置しているマウンテン・リモートシャック用無線LAN端末へは、LANケーブルでPoEによりDC48Vを供給している。追加する無線端末用に、新たにケーブルを追加するのは骨が折れるため、既設のLANケーブルからPoE電源を分割しLANコネクタ(RJ45)出しする。写真はそのために改修したTRISTATE社のPeEボードとケーブル類のテスト風景。この無線LAN端末(Buffalo/WAPS-HP-G54)はPort1がPoEポートで、分割したケーブルコネクタはここに挿入する。ただ、DATA線は含まれないので、既設無線LAN端末からDATA線を渡す。ここではPort4間を渡している。(2018.06.18)

自宅タワーにパラボラアンテナを設置。写真は設置したアンテナ越しに見える清水いはらICの橋脚。手前の尾根の孟宗竹が伸び、伝搬路の多くを塞いでいる模様。下は無線LAN端末の収容箱の様子。手前が追加した無線LAN端末。奥が既設の対マウンテン・リモートシャック用無線LAN端末。基板が改修したPoE基板。(2018.06.22)



伝搬テスト@…NG
写真はカメラを設置するポイントで伝搬確認する様子。自宅と同型のパラボラアンテナと無線LAN端末、そしてPCをDC駆動している。遠方に清水いはらICが見える。残念ながらこのテストでは信号のかけらも確認出来なかった。と言うより、PCから無線LAN端末内を覗くことが出来なかった。
ところが、場所を清水いはらIC近く(橋脚の裏側)の農道(見通し外)に移動して同様にテストすると-72dBm程度で自宅タワーの信号が受かった。インターネットや自宅サーバーアクセスも可能で、NBRのスピードテストでは10MBPS程度の速度が出ていた。下がその様子。(2018.06.22)


所 見
2018年6月22日のテストでは、状況からして橋脚の多くが竹林で塞がれていて伝搬の可能性が低い。高山〜自宅タワー間には、他に中部電力の高圧送電鉄塔があり、伝搬ルート候補として2つが存在する。一つは高山〜自宅タワー間の鉄塔反射、もう一つは自宅の裏山の鉄塔反射。可能性はゼロでは無いので、橋脚反射の再テストも含め、この候補ルートのテストを行う予定。何れもNGの場合は、大峰のリモートシャックタワーが目視出来るので、大峰中継ルートも視野に入れている。ただその場合は待機電力の増と、リモートシャック回線のデータ輻輳を覚悟しなければならないが…。(2108.06.23)

伝搬テストA…向山までOK
ルートを変更して向山の中部電力鉄塔下での伝搬状況を確認した。写真の如くラフな形ではあるが、-47dBmでつながった。検索ツールを走らせると全ての無線LAN端末を拾い上げてきた。記念にリモートシャック鉄塔の富士山カメラ映像(霧で真っ白)をキャプチャし、自宅のサーバーに保存した。写真は測定中の様子で、眼下に東名高速〜新東名高速を結ぶ連絡路が見える。遠方に自宅タワーが見えるがこのサイズでは分かり難い。このポイントは高山からも 自宅タワーからも見通しであるが、高山〜自宅間は直接見えない。自宅タワーは凡そ30度程度の俯角となるため、鉄塔による拡散や尾根による回折を期待しているのだが果たしてどうなるか。この勢いで高山へ移動したが、PCのバッテリ切れと日没でこの日のテストは終了。(2018.06.24)

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