フィラメントはPin番号で言えば①番と⑤番の間につながっています。一般に、回路図では①番でも⑤番でも等価のようにしか書いてないので、気にしなければ配線ルートを優先してつないでしまうでしょう。
さて、ここからが本題です。フィラメントの接続を(*はフィラメント、-は配線)・・・
・・・でどのような違いがあるか考察してみます。
(1)の場合はフィラメントの中点からみてフィラメントの配置が機構的にバランスせず、結果として電気的にもバランスしません。
次にフィラメントの中点(対Grid&GND間)に高周波を加えてみます。
(1)は片方が①番でもう片方が⑤番ですから、2管が均等にドライブできません。フィラメント上を通過する高周波電流の向きが一致しません。また周波数が高くなるとこの状況は顕著になり、場合によってはIg/Ipの位相が2管でずれる可能性もあります。この対策として、コンデンサにより①番⑤番をバイパスする手法がありますが、管内でのリード部分まではバイパス出来ません。
こうした考察の上に既製品のリニアアンプを見ると、必ずしも考慮したものばかりではありません。片管ばかり痛みやすいアンプや、均等に劣化していないアンプには、こうしたフィラメントの配線に考慮の無いものが散見できます。
よりベターなフィラメント回路は、上記(3)の接続に併せ、フィラメントチョークはトリファイラにしてフィラメントと中点に、トランス側もフィラメントとCT端子につなぎ、高周波的に完全にフィラメントを浮かす方法が良いと考えます。このやり方は、直列回路によるフィラメント電圧のアンバランスも回避できます。
Ampは一つの高周波電源ですから、均等に動作しない限り、片方がもう片方の負荷になることも予想されます。バイアス状態や低ドライブ時は揃っていても、高ドライブ時の出力が揃うとは限りません。3極管の場合は、グリッドバイアスかこのフィラメントの輻射バランスに頼るしかありません。