5T31 RFパワーアンプの入力トランスの実験

データは、5T31/450THでグリッド電流を流さない想定で実験したものです。ところが同管をフルスイングするには、GGでもGKであっても一定量のグリッド電流が不可欠です。よって5T31/450THアンプの製作過程中の実験データとして受け止めて下さい。当然ですが、グリッド電流を流さない4極管AB1級アンプにはこのデータが流用できます。


製作中の5T31アンプで使う入力整合トランスを試作。仮実装またはリアクターを装荷した状態でSWR特性を図ってみる。


@コイルは、#43材のトロイダルコアに協和電線の耐熱電線を10Tトリファイラに巻き、各コイルをシリーズに接続した。10Tとしたのは、低域でのインダクタンス低下を危惧したためだが、十分過ぎた。
50Ωで終端後、巻き数比2:3で5T31のフィラメントとグリッド間に接続した状態を、MFJ-259で測定した。5T31の入力容量は約8pFだが、ストレー容量や電極のリードインダクタンスがこれに加味される。
赤色グラフはその特性で、14MHzまでなら良好で21MHzまでなら実用範囲と言える。また、出力側がリアクタンス負荷であるため、36MHz付近にインピーダンスがゼロとなる点がある。

A次に5Tトリファイラでデータを取ったのが青色グラフ。巻き数を半分にした分、特性が高いほうにシフトして、実用レンジが広くなっている。2MHz以下は若干ではあるがSWRが上昇している。更に巻き数を減らし高域と低域が均等になるようにすれば、HF全域でSWR=1.5以下に押さえられるかも知れない。なおこの場合インピーダンスゼロ点は42MHz付近であった。

B今度は5Tトリファイラの出力側を110Ωで終端し5T31に接続した場合のデータが紫色グラフ。特性は一番良好で、28MHzバンドまでSWR=1.6以下に収まっている。前回までの測定であったインピーダンスゼロ点は、トランスの2次側を抵抗終端しているため発生しない。


C今までの実験を基に実用トランスを作る。1次側は50Ω、2次側は150Ωとした。コイルは5Tのペントファイラで巻きで、巻き数比3:5としている(注意:便宜上150Ωとしていますが、50Ωx5Tx5T/3Tx3T=139Ωが真の値です)。出力側を150Ωの無誘導抵抗と15pFのコンデンサで終端した状態のSWRが緑色グラフ。ここまで落ちればHF全バンドで問題なく使用出来る。

D更にコイルを4Tのペントファイラにして測定したのが水色グラフ

参考:より実用的にするには、HFのπ型LPFを挿入してドライブする方法がよりベターだろう。π型LPFのC成分を5T31の入力容量で置き換えるやり方である。これにより非同調広帯域入力回路が実現する。
なお、フィラメントは点灯してもしなくても、この測定電力ではSWRに影響は無い。
その後、ボードに各部品を取り付け筐体内に取り付けたが、実験と同じデータを得ることは中々難しく、低域では全く問題ないが、高域ではSWR=1.5程度になる。 なお、CDで、60W/CWで連続給電した場合のコア温度の上昇を確認したが、全く問題なかった。