75A-4のAGC不具合と修理(May 12, 2018)
はじめに
2018年5月7日、友人のJA9CPYからCOLLINSの75A-4が届いた。早速電源を入れると確かに動作する。CALモードにすると綺麗なビート音を確認できる。ところがアンテナをつなぐとビックリ。AGC(AVC)が機能しない。AGCスイッチがOFFでもFASTでもSLOWでも全てOFF動作で、当然ながらSメータが振れない。直ぐAGC回路の動作不良と分かるが、裏蓋を開けてみるとこれまたビックリ。本来は6AL5のAGC検波の筈が、怪しげなダイオードが2本実装されている。どうやら旧オーナーにより改修が施された模様。しかし配線から改修回路を起してみると又してもビックリ。どう見ても機能しそうにない回路なのである。
写真は到着早々梱包を解いた75A-4のフロントビュー。下は場所を変えて上蓋を開けたリアからのトップビュー。
余談だが、この様な受信機を手にするとは夢のまた夢で、初めてその存在を知った高校時代には想像もつかなかった話である。



現状と対策
現状は検波ダイオード(写真水色に赤ライン)に印加されるRFレベルは100KΩを経由した値となり、AGC電圧を発生させるには程遠い状況。
回路をオリジナルに戻す前に、取り敢えず現状でAGCが動作する状態を作り出すことにした。
話は簡単、この100KΩをワニ口リードで短絡する。これでAGC動作を復活させることが出来る。写真はその様子。
AGC検波回路に何故に手を加えたか、また現状で満足されていたのか…想像を巡らすが良く分からない、謎だ。
なおAGC/SLOW状態でRF-GAINを一度絞ってから元に戻すと、復帰に時間がかかり煩わしい。RF-GAIN用のDCバイアス電圧がAGCラインの時定数回路のCに残ったままになっていると思われる。これはDCバイアスはチャージしない回路にする必要がある。
以下に現状の不思議な回路とオリジナルAVC回路を示す。



手が加えられた怪しいAVC検波回路
現物から回路図を起こしてみた(オリジナル回路を修正)。ダイオード2本の負極倍電圧検波に至る前に100kΩとオープンに近い抵抗が介在している。双2極管6AL5のプレート間を結ぶ1kΩも意味不明。B電圧(+)で直に6AL5と22kΩの直列回路を逆バイアスし、両者の接続点を検波RFルートへつないでいるが、+200Vも逆バイアスした6AL5に何をさせたいのだろうか…。
これでまともに働くとは思えない。何か考えがあってのことか理解に苦しむ。取り敢えず100KΩをワニ口でジャンパーしてAVC動作する様にしてある。


75A-4のオリジナルAVC検波回路
6AL5にBIASを与えたAGC検波と、時定数回路を持たせた負クリッパーで構成されている。



この後の予定
取り敢えず通常のAGC動作が行える様になった。
今後は…
@オリジナルのAGC回路を復活させる
Aメカフィル空スペースにフィルタの実装(購入かセラミックフィルタで実験か…)
B劣化CR部品の交換
C劣化真空管の交換
D真空管シールドケース欠品の補充
Eユーザー改修の復元(オリジナル化…AGC、背面追加RCA-Jack)
Fシャシの洗浄
…等を考えている。

製造から既に60余年を経過しているにも関わらず、SSBの復調音は非常にクリアで最新の装置に勝るとも劣らない。
真空管シールドケースの補充
欠品の真空管シールドケースが、7Pinが5本、9Pinが1本あったが、手持ちのシールドケースで補充した。
手持ちの国産のモノとサイズが合わないと思いきや、75A-4上でもPTOとその他でもサイズが事なっていて面白い。多少嵌合の悪いモノやメーカーの混在もあったが、ここでは泣くことにしている。
写真は補充した様子。シャシ上を俯瞰すると汚れや誇りが結構目立つ。
自分とほぼ同じころに誕生した受信機が、60余年を経って良く正常に動作するものだと感心する。特にPTOとBFOを連動させたIFシフト(ビート周波数を変えないで通過周波数を可変)など、電気と機械の合体作には感心せざるを得ない。