KWM-2の3.513MHzでJOFC(1521KHz)が聞こえる?(Jul 8, 2009)

7月7日、友人からQSYしたKWM-2がPM-2電源を実装してテストベンチに居座っている。朝8時、試しに電源を入れ3.5MHzバンドをワッチ。既に日が昇り電離層伝搬は殆どダメでノイズばかりだ。しかしおかしい。3.513MHzでAM放送が聞こえる。
誰かがSSBで再送信しているのかと思ったが紛れも無いAM放送だ。慌ててIC-756で中波放送をワッチし同じプログラムの局を探すとあった。何と1521KHzのJOFCじゃないか・・・それでKWM-2でその周波数関係が成立する根拠を探る事になった。


KWM-2の2ndIFは455KHz、VFOは2.5-2.7で1stIFは2.955-3.155MHz、LoXtalは6.555MHz。
したがて3.513MHz受信時のVFOは2.587MHzで1stIFは3.042MHz。
以上からJOFC/1521KHzをVFOが2.587MHzの時に受信できる周波数関係は・・・各IFとVFOやLoXtalとのイメージ周波数を洗い出し組み合わせる・・・朝から頭が痛い。
しかし何て事はなかった。1521KHの2倍が1stIFの3.042MHzにドンピシャだった。
しかし2nd高調波ってこんなに強かったかぁ?。放送局の2nd高調波は-80dB前後に抑えられている筈。
それではとicomのIC-756とIC-706MKUで3.042MHzをワッチすると両者共何とS9+5dBで受かるじゃないか。一体これはどういう事なのか?。好奇心を大いにかき立てられる。
写真はKWM-2で3.513MHzを受信中の様子。実は、Sメーターを振らすのはプリセレクタと1stミキサ素通りの3.042MHz(1521KHz x2)。

測定は以下による・・・アンテナ:L型Windom(40m長)&ATU(SG-230)、ATU:1.91MHzで整合、受信機:IC-756でCW/Nでキャリアレベルを測定。

左は事の発端となったKWM-2。
3.042MHzはプリセレクターのチューニング範囲を大きく逸脱するためSメーターの振れは少なくS2程度。
右はIC-756、SメーターはS9+5dBも振れ良好に受信できる。


左はIC-706MKU、SメーターはS9を示し良好に受信できる。
右は、それではと登場したRACALのTRA3755。3.042MHzに周波数を合わせるがAMでもSSBでも全く不感だった。

この結果をどう見れば良いのだろうか・・・送信波の問題なのか、強電界での受信機の問題なのか、益々分らなくなった。


7月10日、その後他の放送局では?と疑問を持ち調べると・・・JOFG(5KW):927KHz x2=1854KHz(S9+5dB)、JOPR(5KW):864KHz x2=1728KHz(S5ノイズレベル・・・存在有)であった。JOFGはJOFCと同じ地点で同一アンテナで送信電力は5KWと7dB高くスパン3Km。JOPRの送信電力は5KWでスパンは約6Km。
ちなみに各局基本波のSレベルは、JOFC=S9+46dB、JOFG:S9+46dB、JOPR=S9+30dB(注:アンテナにf特があるので送信電力に非連動)。
JOFCのx2高調波はS9+5dBだから、基本波との差は41dBしかない。ラジオ放送局の電波の質から見ても、こんな数字になる訳がない。
・・・もし有るとしたら、受信アンテナ系で金属接点部分のDiode効果(コネクタやATUリレー接点etc)で波形が歪んでいること位しか考えられない。
だとしたらJOFCとJOFGの和及び差周波数である2.448MHzと594KHzにも何らかの信号がある筈だ・・・と推測し実験すると両周波数で2波混合された信号がS9+5dBで入感し驚く。これは3波目のJOPRを含めた2波の組み合わせでも同様。
更に3波の組み合わせ周波数での状況を確認したが夜間混信が多く調査は後日の日中に委ねる。
ただ、RACALのTRA3755だけどうして不感なのか・・・益々疑問が深まる。
なお10MHzのモノバンドZeppアンテナ(サガ電子)では、基本波レベルは40dB程度低い(JOFC:S9、JOFG:S9、JOPR:S6)が、上記現象は確認出来ない。
これ以降以下による・・・アンテナ:L型Windom(40m長)&ATU(SG-230)、ATU:1.91MHzで整合、受信機:IC-756でAM(Nomal)で無音時のキャリアレベルを測定。

7月11日、日が高くなるのを待ってデータを取り直してみた。高調波はx4倍までとった。その他に各x2倍と各基本波との組み合わせや、基本波3波の組み合わせによる状況を見た(注:全てはテストしていない)。下表にその結果をまとめた。 注記については以下の通りである。なお時間帯で域外波やノイズの状況が刻々と変わるのであくまで参考である。

 Noise:ノイズで不感。
 Noise(有):Noiseに埋もれ放送内容は分らないが信号の有無を確認できる。
 Noise(確):Noiseだが辛うじて放送内容を確認できる。
 ○:良好に受信できるが時々Noiseがある。
 ◎:Noise無しで良好に受信できる。
 他局:他地域からの放送波。
 勝山?:JOFGの勝山中継所(100W)と思われる。



それでも基本波2波の組み合わせと一部x2倍と基本波による組み合わせによる輻射は非常に高レベルだ。この状態ではローバンドDX運用など永遠の夢に思える。また参考までに、40mWindomアンテナ&ATU出力をスペアナで見た。-10dBmのレンジでこれだけ振れておりスゴイ。アンテナは1.91MHzに共振しf特を持っているからそのまま鵜呑みには出来ないが・・・受信機も楽ではい。良く見るとこの入力レベルで既にスペアナ自身がIMDを発生している模様。特に、594KHz、1.7MHz付近、2.448MHzや3.042MHz他に相応のレベルが確認できる。スペアナを歪ませないで使うのにも苦労する。
なおTRA3755は、日中の作業でノイズレベルが低下し不要成分をようやく捉える事ができた。しかしIC-756やIC-706MKU等に比べ圧倒的に低レベルなのは何故?。Dレンジの問題?、DSPによる違い?、それともコモン系からの侵入?と興味が膨らむ。TRA3755にはSメーターが存在せず評価は耳Sに依っている。
さてこれで状況はほぼ確認できたので、次はアンテナ系の調査に移る予定。

上記現象の原因が何なのかを探るため以下の如く2つのテストを行ったが目論見通りではなかった。
即ちアンテナ系は問題無しと考えられ、受信機内の歪み(IMD)が浮き上がる結果となった
 @ATUを異なるVerに交換する・・・SG-230の新Verに交換してみるが状況変わらず(リレー等の接点がDiode化している可能性)。
 Aワイヤーエレメント同軸直結・・・上部垂直エレメント(13m)と下部水平エレメント(27m)を同軸直結したが状況は変わらず。

7月12日、ダメ押しが欲しくワイドバンドレシーバーAX-400B(スタンダード)を取り出した。 これでアパート屋上と各放送所から10Kmの地点(福井市北部・九頭竜川と日野川合流点・・・写真)で受信評価を行った。測定はSメータを読むが、AX-400Bを手に体を180度回したときの最大値とした。その結果を表に追記した。
距離が伸びると受信レベルが落ち、局間のレベル差も減り不要波激減。これを見てIC-756で内部ATTを入れたのに状況が変わらない事を思い出した。それで試みに外部ATTを挿入すると状況激変。ステップATTで調べると-20dBでTRA3755と同程度の受信状況になった。
なおIC-756の内部ATTの動作が今ひとつで、ANTコネクタとR-ANTコネクタとで状況が異なる事も判明。内部ATTはその切替出力にあるがSの振れ方が違い、R-ANTの方がマシに思える。これは仕様なのか故障なのか・・・。
以上から本件は受信機の能力の問題と結論付ける。アマチュア機でS9+を振るラジオ局には十分な注意が必要だし、それなりの理解と対策が必要と言う事だろうか。
日中のローカルラジオ局の伝搬は安定で良い信号源になる。受信機のテストには格好だ。今回の経験は受信機やトランシーバを選ぶ時の目安になるに違いない。
一時はアンテナ金属接触部分のDiode化を疑ったがチト電界が弱すぎたようだ。TRA3755は明らかに影響が少なく、さすがミリタリーとその実力に驚いている。アマチュア機の評価は千差万別だが、明らかに弱い部分についてはメーカー陣の奮起を期待したい。写真は調査が終わった午後4時、九頭竜川土手でのスナップ。


7月18日、帰省時に静岡(清水区)シャックでの状況を確認。放送所から距離があり、かつ山で遮蔽され見通し外のため、福井での受信状況とは大分異なった。
 @JOPK(882KHz/10KW)…S9+38dB(14.5Km見通し外)
 AJOPB(639KHz/10KW)…S9+20dB(14.5Km見通し外)
 BJOVR(1404KHz/10KW)…S9+40dB(19Km見通し外)
不要波を受信できたのは、JOVRのx2倍(2808KHz/S7)とx3倍(4212KHz/S4)が放送内容が確認出来、それに@-A-B(1161KHz/S1)が存在だけ確認。ただx2倍以外は時間帯によりノイズや混信で確認できなくなる。またこれら以外にも、ノイズに埋もれ確認出来ない不要波があると思われる。またx2倍は-12dBの内臓ATTで完全に不感になる。以上はオーナーの受信環境での場合。
Rx:IC-756 Ant:1.9/3.5MHzInv-vee(Trap式デュアルバンダー・22m高)