TVアンテナ分配器の特性と有効利用(Jul 26, 2009)

秋葉原の千石電商の店先で格安で販売されているTVアンテナ波分配器(Splitter)がある。国産大手メーカー品だと高価で手を出す気にならないが、これは非常に安価でつい手が出てしまう。多くのユーザーはTV受信の分配用として購入する筈だ。2分配のFB-2Vと称する製品を見ると、「CS/BS対応5-2400MHz」となっており一瞬ドキッとする。ひょっとしたらHFローバンドやBC帯でも使えるのではと直感する。国産のA社の分配器ではFM/VU/BS/CSと謳っているが、周波数10-1880MHzとなっておりその気が起きない。元々75Ω用と思われるが50Ω負荷でテストすると以下の如く使える事が分った。

写真はFB-2V、グラフ(赤線)は10MHz以下の周波数特性。10MHz以上はフラット。測定電力0dBm。片側は50Ω終端。10MHzでの分配ロス1.2dB。この特性ならLowBandやBC帯のアンテナ分配に使える。この程度の分配ロスでは高利得のアマチュア機では全く問題にならない。 本シリーズには4/6/8分配器FB-4V/6V/8Vもリストされ、多数Rxへの分配に有効。入力にスタンバイリレーを設け、送信時に60〜80dB程度の減衰を与えれば、オンエア・モニター・システムが構築できる。


写真はFB-2V(2分配)とFB-4V(分配)のツーショット。回路はFB-2Vを分解して回路を書き取ったもの。思いの他シンプルだ。TVアンテナ分配器の宿命で、アンテナ直下にブースターを取り付ける場合の電源供給ルートとして、出力側から入力側に電源供給が行えるよう工夫されている。この場合2つの出力から同時に電源重畳されても良いように、DCをダイオードミックスしている。RF的には伝送線路トランスによりHYBを構成しているがアイソレーション抵抗が見当たらない。また入力に対して出力50Ωが並列になるので入力Zは1/2、すなわち25Ωになる。したがって厳密に言うとアンテナ(信号源)とは不整合になると考えられるがどうだろう・・・一般的には整合トランスが必要と思うのだが。またf特の下降特性は当初トランスのインダクタンス不足と考えていた。それで巻き数を2倍にしてテストしたが殆ど変わらない。もしやと1000PFのカップリングコンデンサをワニ口の先で短絡すると見事にf特が0.5MHz付近まで伸びた。最終的に1000PFとダイオードをスルーすることでf特の低域を延ばすことにした。
ここまでくると国産も含めてどのような手法で整合を行っているのかに興味が移って行く。


写真は分解したFB-2Vとその内部。回路図は改修した部分を赤色で示している。ダイオードとコンデンサのOutput側の配線をFコネクタで外し、トランスへジャンパー線を張った。またアイソレーション抵抗も追加する。これにより0.5MHzの低下は-2.2dBと大幅に改善、10MHzの通過ロスは-3dBとなった。改修後のf特を上記グラフに追記(青線)した。Output側を50Ω負荷で終端するとInput側は25Ωになる。SWRアナライザで診るとその様子が良く分る。したがってInput側に2:1の変換トランスが欲しくなる。測定は不整合の状態で行っている。
しかし妙だ・・・フェライトビーズに1回通しただけのトランスがこんな低域までf特があるなんて以外だ。ひょっとしたらフェライトビーズでロードが掛からないまま微小インダクタでただつながっているだけなのかも知れない。まだ要調査である。