CPE710/TP-Link社の遠ざかり伝搬テスト(Oct 23. 2020)
TP-Link社では5GHz帯Wi-Fiで魅力ある製品を世に送っている。
これまで国内で屋外専用波とされるW56(5.6GHz帯)帯の無線LAN端末CPE510を、リモートシャックと自宅をつなぐ連絡回線に使用していた。
2020年2月にプレス発表があり、CPEシリーズにカセグレンバラボラアンテナを採用したCPE710が追加され、にわかにWi-Fiの長距離伝搬への期待が高まった。
早々にこのCPE710を入手し、リモートシャックタワーと自宅タワーに設置すると、その安定した動作に驚きを禁じ得なかった。
そして、リモート局と自宅タワー間のアンテナは固定したままにして、その延長線上を南下したら何処まで使えるのだろうかとする興味が沸いた。
拙作HPのTopicsではその実験の様子を複数回記してきたが、ここにこれまでのテスト結果をまとめてみた。
なおCPE-710についてはCQ出版のQEX誌No.37に、CPE510については同No.32で紹介している。
測定は、図の如くリモート局と自宅を結ぶラインの延長線上で、以下の4地点を測定車で回っている。
自宅周辺は見通し外又は半見通しのため、理論値通り(距離2倍で6dB減衰)にならない。また谷筋がウェーブガイド的効果を示していると思われ、H面V面同時輻射も手伝い、しぶとく距離が伸びている。
また電界値はCPE710が内臓サーバーへ読み出す数字をPCで覗いてい取得している。

条件1:リモートシャックアンテナは自宅タワー向けで固定
条件2:測定車はCPE710とPC搭載、アンテナ方向調整で最大受信電界に調整

A:リモートシャック(送信所)
標高:400m
パラボラ俯角:10°

B:自宅タワー(半見通し)
スパン:2km
受信電界:-60dBm
SNR:30dB

C:R1バイパス(見通し)
スパン:5km
受信電界:-60dBm
SNR:31dB

D:マリンビル(見通し)
スパン:8.7km
受信電界:-69dBm
SNR:21dB

E:ベイドリーム(見通し)
スパン:11.4km
受信電界:-70dBm
SNR:20dB

上記以上の伝搬は見通しポイントが見つからず未実施だが、SNRを14dBまで許容すれば23kmの伝送も可能と思われる。
また、リモートシャックのアンテナは俯角を付け自宅タワーのアンテナに向けている。これを振り上げることによりアンテナビームを遠方へ向ければ、更に距離を延ばすことが可能と思われる。
但し、ここでは回線の品質確保のためのマージンは考慮していない。

資料
〇アンテナ:H/V同相給電カセグレンパラボラ
〇CPE710出力:27dBm
〇アンテナ利得:23dBi
〇W56帯自由空間ロス:-134dB 〇当地ノイズフロアレベル:-90dBm程度
〇スパン11.4kmでの受信電界理論値:Pt(送信電力dBm)+Gt(送信アンテナ利得dB)-Ls(自遊空間ロスdB)+Gr(受信パラボラり利得dB)-etc(その他ロスdB)=27+23-129+23-2.14x2=-80.2dBm
〇同SNR理論値:-80.2-(-90)=9.8dB
〇参考サイト:日本電業工作D2ラボ