恐るべしCree社SiC Power MOS-FET(Apr 15. 2016)


サムウエイのリニアアンプDXV600Lに、初めて米Cree社(現Wolfspeed社)のSiC(シリコンカーバイト)Power MOS-FETが使われた。
このFETは元よりスイッチングデバイスで、RF専用Power MOS-FETに比したらHFハイバンドでの伸びは劣り競争にならない。
しかし10MHz程度以下ならそのON抵抗の低さから信じられない様な高効率をリニアアンプで実現する。
表にサムウエイ社が使用しているCREE社のFETのシリーズをまとめた。DXV600LはON抵抗160mΩのC2M0160120Dだが、シーリーズは80mΩのC2M0160080120D、40mΩのC2M0160040120D、25mΩのC2M0160025120Dとラインナップされている。
サムウエイ社のベンチテストではオン抵抗80mΩのC2M0080120Dを3パラプッシュプルで3KW出力の取出しに成功している。
オン抵抗が低くなると自らの発熱が抑えられ飛躍的な効率アップにつながる。
ここでスイッチングデバイスなのに何故リニア動作なの?と疑問の声が聞こえてきそうだが、プッシュプル動作の巧妙な少量設定のBIASと積極的なLPF処理でドレイン効率90%を得ている。かつIMD3は-30dBを楽々クリアする。
多量のBIASを流し、そこを中心にスイングする従来の考え方では理解(説明)できない領域と言える。 サムウエイ社は、DXV600Lで1KW出力の能力を持ちながら、不測の事態への余裕を持たせ600W出力としてネーミングしている。
仮にオン抵抗80mΩのC2M0080120Dを3パラプッシュプルで使ったらDXV1000Lとなるのだろうか…。
オン抵抗の低いデバイスはCinも増大するが、パラレル数を減少できる。また価格も倍々と高価になるので、この辺りはコストとの兼ね合いになるのかも知れない。
何れにせよ10MHzバンド以下なら、AC100V(120V)供給の壁コンセント容量で1KW出力の設備が出来上がってしまう。リニアアンプ用受電では200Vが常識とされてきた1KW局の受電環境が一変する可能性が有る。

なおCree社は2015年9月2日、パワー&RF事業の新会社の社名を“Wolfspeed社”と発表しています。