デジタルAFパワーアンプDCP1100について(Apr 21. 2013)
友人のイベントPA支援のために、凡そ35年振りに最近のPA事情を覗いてみた。その高性能と低価格など信じられない様変わりに驚愕。新たなPA機材を衝動買いさせるに十分すぎる内容だった。
さて衝動買いした機材に"クラシックプロ"ブランドのデジタルパワーアンプDCP1100がある。上位機DCP1400/2000と共に仕様を下に記した。
サイズはそれぞれ同じにも関わらずDCP2000はブリッジ(BTL)出力で2200W/8ohm取り出せるとある。昔の頭では全く想像も出来ない数字だ。しかも重さは手の平でも支えられる程だから驚かない方が可笑しい。
1KWのAM-Tx変調器として使ったらお釣りがきそうな勢いだ・・・でも考えられるぞこれは!。50MHzでAMの1KWって愉快じゃない。或いは某局の非常用装置とか・・・。
購入から1週間半イベントから1週間経過し、現在は工房で音楽(BGM)再生に使っている。無入力時の静けさはアナログアンプでは味わえなかった環境だ。何となくザーとノイズが聞こえ、出てくる音量の予測がアナログ時代は出来たが、デジタルアンプではそうではない場合があり要注意だ。ノイズがないと思ってVRを上げているとプログラムが再生された瞬間に轟音が響き周囲を驚かすことになる・・・既にやってしまいひんしゅくを買っている。

DCP1100
 ■ステレオ出力(4ohms):540Wx2
 ■ステレオ出力(8ohms):300Wx2
 ■ブリッジ出力(8ohms):1,080W
 ■周波数特性:20Hz〜20kHz
 ■ダンピングファクター:200
 ■入力端子:XLRx2
 ■出力端子:スピコン
 ■消費電力:400W
 ■寸法:482W×210D×44H mm(EIA 1U)
 ■重量:3.3kg

DCP1400
 ■ステレオ出力(4ohms):750Wx2
 ■ステレオ出力(8ohms):450Wx2
 ■ブリッジ出力(8ohms):1500W
 ■周波数特性:20Hz〜20kHz
 ■ダンピングファクター:200
 ■入力端子:XLR
 ■出力端子:スピコン
 ■寸法:482W×210D×44H mm(EIA 1U)
 ■重量:5.6kg

DCP2000
 ■ステレオ出力(4ohms):1100Wx2
 ■ステレオ出力(8ohms):650Wx2
 ■ブリッジ出力(8ohms):2200W
 ■周波数特性:20Hz〜20kHz
 ■ダンピングファクター:200
 ■入力端子:XLR
 ■出力端子:スピコン
 ■寸法:482W×210D×44H mm(EIA 1U)
 ■重量:5.7kg

さて前置きが長くなったがここからが本題。 これだけの力を持ったアンプだからどうしても中を見たくなるのが人情。
40年以上もRFやAFのパワーアンプを作ってきた者にとってはその造りに興味があるのだ。特にスペックに見合った造りをしているのだろうか・・・と。
写真は上蓋を取り外したDCP1100。写真では分かり難いが、いわゆる棚板の耳の部分が筐体へ溶接されて塗装されている。
私的には耳部分は筐体へビス締めして取り付ける方法が一般的で汎用性に富むと考えるが、その意図が良く分からない。
右に電源部、左にアンプ部、そして背面に入出力部がある。一見すると整然と並んでいるが、手作業で行う半田付けやビス締め等に荒さが目立ち気になる。
なお冷却は、シャシ内をフロントパネル→右側面→右側面間をダクト風に仕切り、途中(右側)にSUNON社の小型ファン挿入して行っている。フロントパネルから吸って左側面へ排出する仕掛けだ。この流れの途中に基板やデバイスがさらされることになる。
上蓋を外すとダクトがオープンになるため冷え具合が分からないが、蓋をすると後述の課題を除き良好に冷却されていると思われる。もっともデジタルアンプで効率が高く、パワーデバイスからの発熱は非常に少ない。

写真はその荒さの一例。電源回路のパワーTrの半田付けのクローズアップ。
この半田の流し方はどう見ても素人細工としか思えない。
この様な箇所が5箇所以上に上り、数えていると心境は穏やかさを失う。
表面実装された他の微小部品は機械が半田付けをしたと思われ、良好で均一性がある。実に残念である。

写真はアンプ部に寄ったもの。こんなデバイスと放熱で本当に1000W以上のパワーが取り出せるの?と誰しも思うに違いない。それだけ効率が高く電源の利用率が高いのだろう。まさに振幅管理を捨てパルス幅管理に乗り換えた方式の勝利と言えないだろうか。

一番お見せしたいのがこの写真。今回の蓋開けで一番気になり問題と思われる部分だ。レーザー温度計は電源ブロックの一番左側のケミコン(4700μF/80V)上部を測定している。何と98.5℃を示している(室温15℃)。同じケミコンでも場所を変えると温度は下がるものの、30℃台を示す他の電源ケミコンに比し異常に高い。
またこの温度はアンプ負荷の大小には関係ない。無負荷・無入力でも電源投入後暫くするとこの温度に達する。これはケミコン個体の問題なのか回路的な問題なのか、真夏の屋外で気温が40℃近い環境では危なくて使えない。ちなみに表面には85℃と使用温度らしき値が印刷されている。
また「LUA」とする文字も印刷されているが、これは製造元なのか何かは良く分からない。
販売元へその旨お伝えしているが・・・暫く様子を見て欲しいとの返事だった。
この後ダミーロードによる最大出力と歪確認、そしてフルゲインでの入力換算S/N等をみる予定。

余談だが、出力にステップアップトランス(電源トランス可)を配置すれば、容易にKWのAM変調機が出来てしまう。7MHzや50MHzでやったら面白そうだ。