三味線の弦を糸掛けダイアルに使う

大正15年生まれのK氏より真空管式5球スーパーを展示のためにお借りした。ラインナップは6WC5⇒6SK7⇒6AV6⇒6V6/5MK9と異色のハンドメイド。恐る恐る電源を入れると横行きダイアルのパイロットランプが点灯。暫く待つとスピーカーからブーンとハム音と高周波ノイズ。ダイアルを回すと横行きダイアル指針が動き出したが途中から動かなくなった。アレッ可笑しいぞ!。
フロントつまみを外し、シャシを固定している木ネジを緩めると容易に本体が飛び出てくる。見ると糸掛けの紐が切れて同調バリコンが回らない状態だ。

ここから糸掛け復活の修理が始まる。糸掛けの紐は昔はどこのラジオ店にもおいてあったが、現在は同じ物を探すのは大変。職場の出入り工事業者Y氏と歓談している時にこの話になり「それは三味線の弦がいいよ!」とアドバイスを貰った。早速福井市中央にある伊与和楽器店に赴き、細い弦とやや太い弦のを2本購入する。
糸掛けダイアルなんて数えてみると1970年以来の事だった。昔は意識的に大きなダイアルドラムをブリキ巻などを利用して作り、駆動側は極力細くしたシャフトとフライホイルで構成し高回転比のダイアルを作った・・・場合によってはバーニアダイアルのストッパーを外しシャフトを駆動して回転比100以上を得ていた・・・と想い出に浸る。

早速に掛け直し作業を始めたが、よく見るとバリコンの方向性が逆。普通は右に回すと容量が減り同調周波数が高くなるが、こいつは逆だった。また糸掛けはバリコンを直接回すだけでなく、横行きダイアルの指針も動かす仕掛けだからちょっと厄介。
つまみの回転方向や指針の移動方向とバリコンの回転方向を考慮しながら糸掛けルートを頭の中にイメージして作業を進める。先ず糸でループを作っておき、それをプーリーに掛け最後にスプリングで引っ張って固定するやり方が楽。 何とか修復を追えるが、今度はプーリーのすべりが悪く同調つまみが重い。こちらはCRC5-56を1滴軸に流して解決。見事復活と相成った。

写真上は伊与和楽器店から購入した三味線の弦。素材は絹との事。この状態はノリがしみ込ませてありパリパリ状態だがしごくと馴染んでくる。またナイロン製もあるとのことだが、音の話になると絹製が安定しているらしい。修理する場合の参考になれば幸いである。
写真下はK氏労作の5球スーパー。昭和20年台にありあわせの部品を組み合わせて作ったとの事。前述の如くそのラインナップには驚かされる。6V6のハカマはUZ⇒GT変換で涙モノ。奥に張り替えた糸が見える。