チップ型ターミネータのテスト

念願がかない、Florida RF Labs社のチップ型ターミネータ32-1005(50Ω/800W)を扶桑商事(大阪営業所)のご好意で入手することが出来た。当初日本にある代理店の存在などつゆ知らずで、米国のFlorida RF Labsに幾度かメールを送っていた。最初は春にメールしたが返事が無く、最近になって再び送ったところ返事があり、そこには世界の代理店や担当者の名前まで書いてあった。さらに日本の代理店担当者にもメールした旨の内容となっており感激した。米国は既にクリスマスと正月休みになっていたがその対応をFlorida RF LabsのセールスマネージャーであるMichaelがやってくれた。その直後扶桑商事のI氏より自宅に電話がありビックリ。幸運にも在庫があり購入の段取りを26日に済ませ物件は27日に受領した。
写真に受領したターミネータ31-1005(2個)と下に寸法図と安全温度領域図を示す。大した大きさでは無いのに本当に800Wを供給できるのかと心配になる。抵抗素子さえ耐えられれば後は放熱次第で何とでもなると言う考え方なのだろうか。ちなみに放熱器が100℃以下に保たれればフルパワーを加える事が出来る。
早速放熱器にマウントしてSWR特性と温度特性を測定してみた。なお同じ800Wで抵抗器として31-1005と言う製品がリストされているが、これは抵抗の両端が端子として外部に出たもので、フランジから見ると電気的に浮いており平衡状態である。GKアンプのグリッド抵抗とターミネータを兼用する場合に便利であろう。Florida RF Labs社のWebへは扶桑商事のWebからリンクできるが、当WebのMainMenuにあるLinkListからもリンクできる。2003年12月29日記。




SWR特性

放熱器は抵抗素子が破断した500W(推定)型の半分を使用した。チップ型ターミネータは写真の様に4mmのビス1本で固定し(合う穴が1ヶ所しか無かったため)、接合面にはシリコングリスを充填した。確認したのはSWRと温度上昇である。 その結果、SWRはKuranishiのBR-400で525MHzまで測定したがSWR=1〜1.05の範囲であった。但しこの値は低電力での測定結果である。したがって高電力を供給した場合の特性は、この限りではない事を念頭におく必要があろう。BR-400では0.01単位までは読めないので、グラフは1次曲線の上昇特性で且つ暴れが無い事を確認の上、上昇開始周波数SWRと最大周波数SWRをほぼ均等に手打ち入力し、イメージを作成している。


温度特性

温度上昇試験はIC-706MKUG+144MHzのリニアアンプで550W出力を連続供給し、常温からの温度変化をターミネータのフランジ側とトップ(セラミック面)側で測定しグラフにした。フランジ側の温度センサーは放熱器にフライスで彫られた穴がありそこに挿入した。トップ側はセラミック面に当てた。放熱器温度が90℃程度になっても、ターミネータの表面は未だ指先で触っても火傷をする程ではなかった。ターミネータの抵抗素子からの温度伝送が非常にスピーディに行われていると考えられる。
今回は放熱器の規模を半分(200mmx200mmx90mm)にしているが、2個を張り合わせ十分な風を送れば1KWダミーロードとして使えるものと思う。また、トランスオイル等で油冷すればかなりの効果が得られるものと思われる。500W程度のダミーロードなら現状のままで十分使用が可能である。
写真に測定風景を、図にSWR特性データと温度特性データをそれぞれグラフにして記した。 より完全なダミーロードを目指すには、放熱器をフライスでくり貫きターミネータを覆いシールド効果を上げる必要がある。いずれにしてもこのForida RF Labsのターミネータ「32-1005」の実力は相当なものである。なおベースとなる金属には酸化ベリリウムが使用されているので取り扱いは慎重に行う必要がある。