EMTRON DX-1bのRFCホール対策他

JS1OYN/高橋氏からEmtron社DX-1bのプレートRFCのホール対策について助言を求められた。DX-1bのRFCはWebにある様に約35mmΦのボビンに密巻きされ垂直に取り付けられている。氏は18MHzバンドに発生したホールをバンド外に追いやるために巻き数を減らしたようだが、21MHzと24MHzバンドで新たなホールが発生していた。米国でWARCバンドも考慮に入れたRFCがある旨の連絡をした数ヵ月後、無事目的を果たしたとする報告が入った。

以下高橋氏の承諾を得て報告と写真を掲載すると共に若干の注釈を付けた。またプレートRFC対策の他に電監検査用の出力制限対策、160mバンド同調範囲対策、アイドリング電流対策も実施されており併せて掲載した。

それにしてもオリジナルの状態で最初からホールが発生するなんて・・・ハイパワーのマルチバンドリニアアンプで、一番難しいのはこのプレートRFCと言っても過言ではないでしょう。


1.実用までの経過

2002年12月:EMTRON社にDX-1b発注
2003年01月:入手
2003年02月〜10月:トラブル対策と変更検査を受ける為の改造を行う
2003年11月:160m-10m/500W検査合格
以降、RTTYコンテスト中心に使用トラブル無し


2.改造点

(1)プレートRFC

18MHzにホールを発見。1T-2T巻き数を減らしてみたが、21MHzや24MHzにホールが現れNG。オリジナルRFCは直径約35mmもあり1Tの変化が大きすぎると判断。米Surplus Salesの"ICH-10-15197 1.5Amp PlateChoke"を購入し取り付ける。このRFCはRF PARTSやAMERITRONでも取り扱っており、AMERITRONは同社のアンプに使っている。

<注>写真は取り出したオリジナルRFC。RFC自身が共振状態になりコイル表面の絶縁塗装に変色が見られる。Ipの値やディップ点の深さが他のバンドと揃わず、知らないで送信しているとRFCが焼け最後は断線する。面白いことにRFC上の電流分布は共振により一定にはならず節と腹が発生する。その違いが前述の絶縁塗装の変色度に現れる。巻き数の調整のためにトップ側に別素材によるコイルが巻かれており、試行錯誤の跡が伺える。

なおGU-74Bとタンク回路間の透明樹脂の仕切板は、RFCを横に寝かせて取り付けようとすると収まらないので取り去った。仕切板の目的は、DCブロッキングコンデンサをマウントするだけのように見える。
RFCは取り付けネジはインチネジである。インチねじは秋葉原のヒロセに豊富にあった。バイパスコンデンサのグランド位置は変更する事なく取り付ける事ができた。

<注>レイアウトのオリジナルはWeb上でご覧頂きたい。シングルの密巻きで200μH程度巻くと必ずと言って良いほど10数MHz〜20MHzの何処かに自己共振が発生し、適度の誘導性リアクタンスを得ることが出来なくなる。WARCバンドが無かった頃は18MHz付近に追い込めたが、現在はWARCバンドを含めたバンド間に納めなければいけなくなってしまった。写真のRFCは直径25mmΦのタイとボビンに分割巻きし、よりその目的を果たしている。冒頭で記したようにプレートRFCは、真空管式でマルチバンドのπ又はπL型タンク回路を構成するときの最も重要な部品のひとつです。


(2)出力低減のためのALC回路と3dB ATT追加

元々800W出力の物を500Wで申請する為に総務省から以下の指示があった。

a.添付資料には出力低減の手段を明示するこ

b.出力低減は操作法によらず500W以下になること

c.ALCの調整は容易に外部から出来ないこと

・・・これらの条件を満たすために、入力に3dBアッテネータとRF整流型ALC(AMERITRONのアンプ回路を使用)を追加した。 これらは、アンプのシャーシがアルミニウムで穴あけが容易であったことと、入力部にスペースがあったために実現できた。

<注>入力(G1側)にATTを挿入するやり方の他にEsgを下げる方法も考えられる。ただしこの場合はEsg回路の基準電圧用のツェナーダイオードを変更する必要がある。アンプとしての直線性がどうなるかは把握していないが・・・Esgを下げるとEcgを浅くする必要があるので、オーバードライブでIcgが流れないように注意を払う必要がある。こうした議論をしていると、総務省さんは出力電力管理に興味をお持ちのようだが、歪による隣接周波数への影響管理はそれ以上に重大と言えないだろうか。
この種の球のプレート損失はは冷却条件で大きく変わるので、GU-74Bの場合それなりの冷却が無ければプレート損失=800Wを得る事は出来ない。ややアマチュア的な使い方だが、もし連続して800Wの損失が許容されるのであれば、1本で容易に連続1.2KW程度の出力を得ることが出来る。


(3)1.9MHzの同調対策

1.8MHz付近はOKでも1.9MHzまで行くと同調していないようであった。このため、1T分タンクコイルをショートして1.9MHzに同調するようにした。


(4)アイドリングカレント変更

元々EBS運用前提で、アイドリングを300mAになるように設計されていた。EBSはSSB時に時定数が短かすぎるため頭切れを起こした。そのためEBSは使わず、アイドリングを180mAに下げた。アイドリング300mAはどうしてこうなっていたのかは不明。EBS無しの300mAはものすごい熱になる。なおプレート電圧は2.4KV。