八重洲無線FP-200Sの100W電源化(Jun 28, 2009)

写真は八重洲無線のFT-200S(10W機)の電源FP-200S。友人よりペアのFT-200Sと一緒にQSYしてきた。
後継機のFT-201は10W機であっても電源は100W用で構成され、配線により終段電圧が600Vから300Vに落とされていた。これはFT-101シリーズも同様である。
ところがこのFP-200Sは、100W電源のFP-200とは明らかに差別化が図られている。
100W用電源の600V回路を構成する整流器・平滑ケミコン・分圧抵抗等が最初から実装されていない。
当時、如何にローコストに製品を作るかに主眼が置かれていた「時代」を感じさせられる。
しかし、FP-200Sのトランスには480V巻き線がしっかりとある。
ここまで手を抜いたらトランスが2種類になり逆にコスト高を招いたのではと想像する。
FT-101やFT-201が10W機でも100W電源を母体にしているのは、豊かになって行く日本の経済状況が見えるような気がしてならない。
また1970年頃の電話級アマチュア無線家は、FP-200Sを購入するより、Toshibaの白黒TVのJunkトランス(300Vx2)を利用した自作電源を選んだOMも多い。
少ない小遣いでようやく買い求めたFT-200Sに、300Vと150Vにヒーターだけの電源なら当然の選択だったのかも知れない。
未だ豊かではなかったし、自作を潔さとする文化が健在だった時代だったのかも・・・古きよき時代の空気を感じる。

写真はFP-200Sの内部。お世辞にも上手とは言えず、配線処理と回路的な問題が見える。
ヒーターライン(12.6V/AC)のリターン線とその他電源のリターン線がコモン接続されておりHumや誘導に対して弱いと思われる。またACを安易にシャシ又はコモンルートへ流すのは如何なものか。ACは平行で送り出して負荷側で接地するのが好ましい。すなわち高周波・低周波回路電源のリターンルートは(ケーブル・筐体を含め)ACのリターンルートとコモン(共通インピーダンス)にならない設計が必要。
当時はリターンルートについての理解が薄かったように思える。こうした事が原因でAFゲインを絞ってもスピーカーからのHumが消えない現象に遭遇する。

さて当該のFP-200Sの改修である。使用した部品は1N4007x4本、470μF/450Vケミコンx2個、100KΩ/5Wセメント抵抗x2本、1L4Pラグ端子、耐熱電線。
@ケミコンの取り付け穴に3mmタップを立て(鉄板ビスの場合は不要)、ケミコンを3mmビスで固定する。
Aラグ端子をケミコンを固定したビスにシャシ内でナット締めする。
Bラグ端子にブリッジ整流回路を組み、トランス及びケミコン間を配線する。
Cケミコンを直列に配線し、ケミコンに100KΩを並列接続する。
D出力4番(600V)からの配線(赤)を高圧出力へ接続する。

写真はシャシに取り付けたELNA社の470μF/450Vケミコン(黒)2個。
固定は3mmタップをシャシに立ててビス止めした。左(灰)は元からある低圧(300V/150V)用ケミコン。
こうしたケミコンは経年変化による容量抜けを良く唱えられるが、駅漏れや破裂品は別として、概観に異常が見られなければ意外と容量は落ちていない。
受信音にHumを感じるために強力な平滑回路(ケミコン)を実装する場合があるが、思いの他成果が上がらない事が多い。
これは電源の能力よりアース回路のリターン回路がAC回路等と共通インピーダンスになっている場合が結構ある。
気になる場合はアース回路の見直しか共通インピーダンスの低下処理(アース強化)が必要になる。

マニア向けで余りお勧めではないが、600V電源のアース(マイナス)側は、接地するのではなく150V又は300V電源に接続し750V又は900Vで使う手もある。
6JS6Aの替わりに6146B等で使う場合はその効果が期待できるかも知れない。
いずれにしても終段管の入出力容量や内部インピーダンスが変わるので、入力同調や出力同調の位置がずれてくると思われる。

左図は100W電源FP-200の回路図。写真下は改修したFP-200Sの内部配線。
追加したケミコン2個は基板用なので端子が細い。
100KΩ分圧抵抗は5Wのセメント抵抗を使用した。
FP-200の回路を見るとこの抵抗値が500KΩとなっている。
FP-200Sでは300V出力に220KΩの抵抗が対アース間に挿入されているが、そのまま利用した。FP-200ではこの抵抗は無い。
整流用ダイオードはオリジナルケミコンと追加ケミコンの間のラグ端子を設け取り付けている。
配線は耐熱電線を使い線材はバインド処理した。多少は見やすくなっている
回路図ではトランス2次側に0-240-460-600V巻き線が記されているが、FP-200は0-480Vの巻き線しかない。 なお追加部品は必要最小限とし、ダイオードの分圧抵抗やRFバイパスコン類は省略した。その理由は近年のダイオード特性はバラツキが少なく分圧に拘る必要がなくなった(経験的に)。RFバイパスは外部電源でRF信号源から遠く影響が少ないと判断。

無負荷試験・・・一定時間通電放置して異常の無い事を確認する
無負荷電圧(実測)・・・HV=635V(Ec1=310V、Ec2=325V)・・・Ec1とEc2に差があるのは、分圧抵抗値の不一致が原因だが、問題となる値ではない。