マルチバンド4極管アンプの入力回路を、広帯域で作る場合のノウハウです。絶対に共振回路を使わなければいけないと信じて疑わない方は、このコーナーはお呼びではありません。ここでは、エキサイターのドライブを、ダミー抵抗で受けてグリッドをドライブする方式の話です。
ハイμの真空管は、グリッドの位置がカソードに近いため入力容量Cgkが大目です。筆者が良く使うGU-74Bは1本で50pFもあり、マルチバンドアンプを組む場合にハイバンドでその処理に悩みます。そこで、昔のアイデアに従い、共振の概念をここに持ち込むと、バンド毎の処理回路が必要になります。
それで何とか非同調で目的を果たせないかと考えたのが、図に示すLPFによる入力回路です。π型LPFの容量分を真空管の入力容量に置き換え、LPFの通過帯域は使用するバンドを十分通過させ得る周波数に設定します。この辺りの調整は、最近流行のSWRアナライザーで簡単に行う事が出来ます。
図は1.8〜50MHzアンプで使用した入力回路の定数です。これにより、50MHzバンドまで低SWRで駆動する事ができるようになります。またLPFの置き換える容量は、入力側でも出力側でもOKです。
当然ですが、この処理をしないで、直接ダミー抵抗とグリッドをドライブした場合は、28MHzから上のバンドではSWRが悪化し、エキサイターの動作が保障されません。
どうしても共振回路だ!とする向きの方も御一考ください、低Qの共振回路よりSWRの平準化を目指した方が得策です。近年、諸外国の4極管アンプは、こうした方式が一般的になりました。
グラフはGU-74Bシングル1.8〜50MHzアンプの入力SWR特性です。LPFを入れない状態と入れた状態を表していますが、その効果は抜群です。