GU-84B & Socket/Chimney

ロシア製4極管GU-84Bと専用ソケットの雄姿。ソケットはセラミック製のチムニィと一体構造になっている。チムニィのトップにはフィンガーストックがありプレートに接するが、球の脱着の関係もあってかフィンガーストックにはバネ圧力は持たせていないのでリングで締め付けている。締め付けは右ネジと左ネジを組み合わせた機構で、ネジ(ビスを通した円形ノブ)を回転させる事で張力得ている。特筆はフィンガーストック根元にロウ付けされた4mmビスが貫通出来るラグ端子2個。位相を気にしてプレートトップにつなぎたい神経質な人は別として、大変有り難い構造だと言えないだろうか。なおプレートを摘む部分が狭いため、球の取り外しは差込む時より大きな力が指先に必要である。
底には同じ形で4本のPinがあるがこれはCgで4CX1600BやGU-91B等と同じ作りである。中央ピンとその外側の方向を決めるガイドスリットがヒーター(27V/3.7A)である。球の差込はGU-74Bの探りの世界に比べたら遥かに容易である。Sgはソケット内部で筐体金属にバイパスされて、リード板がソケット横に出ている。
K(Cathode)も同様のリード板が底に向かって出ているが、このバージョンはカソードと筐体が内部で接続されその間約0.57Ωの直流抵抗を示した。スペックについてはWeb上に多くの資料があるので参考にして欲しいが、友人のND2X/Paulのページが分かり易くまとめてある。またロシアのTUBES.RUは本場のWebで他ロシア球も含めた情報が満載である。
なおPd(プレート損失)についての記述が2.5KWだったり2KWだったりするが、プレート質量からみて2KWが正解ではないかとする意見もあるので、運用する場合には注意が必要である。


写真左は札幌のFDT LABORより入手したGU-84Bとソケット2組。ロシア製特有と言うよりアバウトな品質管理が伺え、金属部分に若干の歪みが有ったりするがこれはGU-74Bでも同じであった。しかし使い出すと見事に期待に答えてくれる筈である。
写真右は2本の内の1組である。もう1組は既にローカル局にQSYして50MHzのKWアンプに変身する事が決まっている。残されたこの1本も同じ50MHzアンプに組み込まれる予定だが作業の見込みはまだ立っていない。
こうしたロシア製真空管が米国製に比べ圧倒的な低価格で入手でき、各種実験が個人のレベルで行える事に大変感謝している。


このデータは上記ND2XのWebを参考に書き直したもので、Anode Dissipation(Pd:プレート損失)が2.5KWとなっている。
なお当WebのMakingコーナーでGU-84Bを50MHzで研究するページを設けているのでそちらも参考にされたい。



GU-84Bの各パラメータ曲線をRussiaのWebより転載した。標記がロシア語になっているのでやや分かりにくいが、使用している単位等でなんとなく分かる。それにしても低Epで高Ipを流せる真空管だと思う。GU-74Bと同様に、何処まで低Esgで高Epで使うことが出来るだろうか?興味深い。右のIg2(A)-Va(kV)カーブでVa≒320V付近Ig2がホッピングする現象も興味深い。Vaをここまでスイングしてはいけないという事だと思うが、図からはUg2(Esg)が何Vかの記述が伺えないがLY1DQの資料によるとUg2=400V時のデータらしい。もしそうだとするとVaがUg2を割り込んでも、ある程度は安定な動作を期待できると読み取れる。4CX1000A等とは全く素性を異にする4極管である。


Socket's Internal View

左は普段は余りお目にかかれないソケットの分解写真である。いずれも洗浄のために分解したものだが左はSgリングと筺体に接触するフィンガーストックと6分割型のバイパスコンデンサ。また右は筺体フレームとカソードリング間に挿入される抵抗10個が確認できる。この抵抗は全て並列に接続されるが、合成値はミニブリッジで測定したところ0.542Ωを示した。ところが約半年経過後に同様に確認すると0.7Ωを示し驚いている。通電による値上がりだと思うが、この抵抗をIpメーターの分流器などに使用する場合は要注意である。またこの抵抗がある限りカソードドライブ(GG)が出来ない不便さもある。同サイズのテフロンスペーサー等に置き換えればそれが可能になり、GGによるNFB効果による低歪化の実験も出来る。

更に左の写真は、Sgリングやカソードリングとその間の絶縁ベークリング、それにカソード抵抗群も分解して取り外した様子。分解にあたっては、当初の形を写真などで撮影し全体の位置関係を見失わないようにする。Sgリード位置は筺体との関係で決定されてしまうが、カソードリングを始めとするその他リングはある程度自由に角度を変えることが出来るので、オリジナルに戻せない場合がある。もっともこの特徴を利用して電極リードのレイアウトを意識的に変更することも出来る。
右下段→左下段、右中段→左中段、右上段→左上段の順で積み重ねる。左上は締め付けフランジとチムニィから上の部分で、試作中の50MHz出力タンクコイル(Variable Inductor)が取り付けてある。


Ecg-Ip Merit by JH2CLV

凡その特性は球のデータシートで分かるが、カットオフ手前の状況がどの程度のものか気になり50MHzアンプで実際のEcg-Ipの関係を測定してみた。
Ecgの可変はBIAS-VRによって行ったので可変範囲に限界があるが、ある程度の感じは掴めていると思う。
グラフはEp=3.3KV(Ipにより変動あり)、Esg=370Vで測定したもの。これによると調整範囲の最大マイナス点で約10mAのIpが流れているから、カットオフ点は-100V前後ではないかと思われる。また最小マイナス点は-40Vであるがこの時はIp=760mAを示している。
曲線の直線部分を仮に延長してみるとEcg=0Vの時Ip=1560mAに達する。したがってIgが流れ出す程にドライブをすると入力は4.5KWを超える…但しそんなにリニアに伸びるか不明だし、冷却不足や電源容量不足が先に発生するだろう。
図に示した特性曲線はEcg電源の製作やBIAS電圧決定の参考になると思う。なおスタンバイ時のカットオフ電圧は-150Vとしている。

最終的にこの50MHzアンプではEp=3.2KV、Esg=320Vで、15Wドライブで1KW出力、30Wドライブで2KW出力、45Wドライブで2.7KW出力、60Wドライブで飽和出力3KWを得ている(スプリアス-50dB以下)。仮にEp=3.5〜4KVに維持できれば直線性は更に改善され、飽和出力は4KWを超えるものと推測される。いずれにしても4極管の安全使用領域であるEp-ep>Esgを順守した設定が必要である。詳細は前述のURLを参照されたい。


GU-84B(4CX2500E)と4CX1600Bの比較

GU-84Bと4CX1600Bが同等管とする記述が一部の海外サイトで見受けられるが、まったく別物なのでご注意願いたい。
なお米RF PARTSでは、表記の如くGU-84B=4CX2500Eとして取り扱っている。
写真はSvetlana製の4CX1600B(左)とGU-84B(右)を専用ソケットに挿入して撮影したツーショット。
GU-84Bはプレート径が非常に大きく、またその割にはプレートフィンが小さい特異な形状をしている。カソード径は一体どの位なのか?、或いは各電極の位置取りやグリッドの目合わせはどんな風なのか?と興味がわいてくる。しかし、この大きさのプレートPd=2.5KWと言うのはやや心持たない気もする。
この球は前項の条件を遵守しないと、入出力特性で出力側がホップする現象が発生する場合がある。出力が伸びるから、或いは利得が上がるからと言ってEsgを無闇に上げるのは特性を悪化させますのでご注意を!。
インターネット上でGU-84Bを使用したPA製作例を参照できるが、出力電力に主眼がおかれ、こうした現象を伝えているサイトは稀です。是非とも客観的なデータと考察を添付して欲しいと思う。
GU-84Bは低Epで高Ip運用する使途に適している球です。Ep=4KV等で使うのはアマチュアの実験としては理解できるが、安定運用と言う視点から見るとやや疑問を感じます。