話しの種に、HD-TV(ハイビジョン)のSDI信号をスペアナで見てみた。映像内容はARIB(電波産業界)の75%マルチフォーマットカラーバーのHD-SDI信号である。右はPC上で擬似的に作成した75%マルチフォーマットカラーバー映像で、アスペクト比は周辺が16:9で内側のバー部分が4:3。
HD-SDI信号のベースクロックは1.485GHz(フィールド周波数60Hzの場合、59.94Hzの場合は1.4835GHz)であり、エネルギーがこの周波数に集中するが、DCからの伝送も満足されなければいけない、超ワイドバンドインターフェイスある。アマチュアが無線で言うSWRを、DCからマイクロ波帯まで満足させなければ、安定な伝送が保証されない。簡単に扱えるようだが中身は「先端技術」である。
振幅レベルは800mV/75Ω(ピークで8.5mW)なので、スペアナ用に75Ω→50Ω変換PADを挿入し、スペアナの入力ATTでレベルを合わせている。スペアナはADVANTESTのR4131A。
このレベルで5C-FBで100mの伝送を行える。但し個体差があるので、限界はまちまちである。限界を超える場合は、その手前でリクロッカー或いはリピーターを挿入し波形の再生を行う。リクロッカーは到着したSDI信号の波形整形しかしないので、伝送路で付加されたジッタ成分はそのまま出力してしまう。FIFOを使ったバッファ(メモリ)により書き込みと読み出しを行うリピーターでは、入出力関係を別クロックで構成できるため、伝送系で付加された低域ジッタが大幅に改善される。
HD-SDI信号の評価は、GHz帯のオシロスコープによるEYEパターン(開口率・低域・高域ジッター・信号レベル・DCオフセット)や、HDマスターモニターによるパソロジカル信号や映像信号による評価で行うが、こうしたスペクトラムを見ることは殆ど無い。
注:その後2000年頃から、測定機メーカー各社より容易にEYEパターン等を監視できる波形モニター(WaveFormMonitor)が発表され、現場でも定量評価が出来る時代になった。
微弱電力を扱うアナログの無線機を、このインターフェイスの近くで使うのはちょっと辛いだろう。
以下の写真はケーブルの種類による伝送スペクトラムの違いを表示したもの。信号源はLeader440DのCB出力(SDI)、スペアナはAgilentE4422B。
1m/5C-FBケーブル経由。
1.4835GHzで-5dB。
100m/5C-FBケーブル経由。
1.4835GHzで-30dB。
100m/L-6CHDケーブル経由。
1.4835GHzで-20dB。
L-6CHDケーブルは1.485GHzで5C-FBに比し10dBもの改善がみられる。
なお冒頭のアドバンテストのスペアナによる測定で、1.485GHz以外に見られるエネルギーピークは、信号源以外からの飛び込みと思われる。