May 7-8. 2005 ハチミツの収穫について            
7日の名古屋はは午前中雨が残ったが午後は快晴となった。この雨が遠ざかるのに合わせて清水の実家では今年最初のハチミツ搾りをやる事になった。清水の天気は7日は回復しないため、8日の朝から作業が行われた。ハチミツ(蜂蜜)はミツバチが花から採取し蓄え、彼らが年間を通して食料にするものを、人間が横取りしているモノである。したがって花の咲かない秋〜冬に掛けては、人間が彼らに代償である何らかの食料を与えなければいけない。これを怠ると人間(養蜂家)と蜂の信頼関係が無くなり養蜂業は成立しなくなる。花は自然や気候に影響される。花が咲いても雨が降れば蜂が行動できない。蜂の行動は蜜の採取ばかりでなく、植物の受粉と言う自然界で最も重要な役割を果たしている。植物の子孫繁栄と安定な成長には欠かせない。自然はこの様にそれぞれに深い関係で回っているのだ。ハチミツを採取しそれを食すると言う行為は実に人工的かつ瞬間的なことである事を我々は忘れないでいたい。
写真は巣箱入り口でなにやら相談している働きバチ(メス)。オンマウスすると蜂が一番嫌がる煙を巣箱に吹きつけ、蜂を巣から追いやっている様子が伺える。このあとハケで巣枠の蜂を完全に追い払い、巣枠を遠心分離機にかけ蜜を採取する。
この地方の主役はミカンの花であるが、今は咲く前の時期なので特定の花の蜜ではない。この日は18リットル缶に3本程の収穫であった。蜂や自然が好きでないと務まらない、決して楽な仕事ではないのである。

(1)身の安全を考えた服装
帽子にネットをかけ首回りにハチが侵入できないようにする。長袖・長ズボン・長靴・手袋・・・やや厚手の素材で格好を整える。シャツをズボンの外に出すような服装は容易にハチの侵入を許すので厳禁。半分は生命にかかわるので何が必要で何が不要かをよく考える必要がある。決して見た目の美しさにとらわれない事。

(2)巣箱を確認し上蓋をゆっくり取り外す
巣箱に異常が無いことを確認してゆっくり上蓋を外す。巣の上にかけてある麻布を取り外し特に変わりが無い事を確認する。
巣箱を押してみたり底を持ち上げてみれば、その重さでミツバチの集めたハチミツの容量が推測できる。ミツバチは何もしなければおとなしく自分達の仕事に励んでいる筈である。作業中に巣箱に衝撃を与えるのは厳禁で、もし誤ってやるとミツバチが怒り出して人に向かって攻撃して来るので注意。

(3)巣に煙を吹きかけミツバチを弱らせる
ミツバチが最も嫌がる煙を吹きつけて弱らせる。煙は麻布をふいごのついた缶にいれ火をつけ風を送ると煙が燻し出される。麻布は燃えていると言うより炭のように蒸し焼きにされていると言って良く、缶の内側や噴出し口にはタールが流れている位である。

(4)蜂が弱ったら巣枠を引き上げ刷毛でミツバチを追い払う
しばらくするとミツバチは弱り元気がなくなるので、巣枠をゆっくり引き上げ、刷毛を使ってミツバチを優しく追い払う。
煙をかけないで作業をすると怒ったミツバチから攻撃を受けるので、必ず弱らせてから相手の様子を伺いながら作業をする。作業中にミツバチが元気になる場合もあるので、煙はいつでもかけられるように近くに道具を置いておく。

(5)ミツバチを払った巣枠を採蜜場に運ぶ
この地方では巣箱に9枚の巣枠が入る。1箱分の巣枠が揃ったら採蜜場に運ぶ。採密場が離れている理由は最寄だとミツバチが飛来して次の作業がやり難いからである。小屋が近かったり屋外で採蜜する場合は、蚊帳を張りその中で作業したりする。

(6)巣枠をナイフで修正する
巣は後で遠心分離機にかけられミツを振るい落とすが、遠心分離機に挿入し易いように出っ張った巣や、ミツバチが自ら塞いだ巣のフタ(ミツが一杯になって)をナイフでカットする。巣はロウで出来ている。カットにはステンレス製の余り歯の鋭くないナイフをお湯で温めて使う。一連の作業の中で一番面倒だし時間のかかる作業である。ハチの子がいたりするがそこには手をつけないでおく。

(7)巣枠を遠心分離機にかけ蜜を振るいだす
巣枠を遠心分離機にかけミツを振るい落とす。前述のように遠心分離機も9枚の巣枠を実装できるようになっている。巣枠の上部が必ず外側に向くようにする。その理由はミツバチ自身もミツが下に流れないようにするためにやや上向きに巣穴を作っているから、流れ出し易い向きが自ずと決まるのである。なお場合によっては9枚に至らない場合があるが。そういう場合は円周上に巧く配置して重量が円周上に均等に分散するようにする。巣枠が実装できたら手動で遠心分離機を回す。回す力にもよるが右に50回、左に50回程度回す。遠心分離機の周辺にミツが振るい出され、それが下方に流れジョウゴ状になった底に集められる。

(8)遠心分離機のコックを開けフィルター付きジョウゴでゴミ除去
遠心分離機のコックを開けミツを流す。蜜はフィルター付きジョウゴで受け一斗缶に収穫される。フィルターはハチや巣の切りくずなどを除去するためのものである。最終的な出荷は更に細かいフィルターにかけられビン詰めにされる。 遠心分離作業もそうであるが、ここでもミツの濃度によりその作業時間が大幅に変わる。すなわち濃度が高いと粘りが多く低いとさらさら状である。このため遠心分離やフィルター通過に大幅な時間が必要となる。これは周辺の温度に大きく左右されるため、晴れた日と曇った日の作業とでは大きく作業能率に影響する。

(9)巣枠を取り外し後処理を行う
遠心分離機でミツを振り落とされた巣枠には最後の試練がある。巣には働きバチであるメスの巣と 受精時だけに必要なオスの巣がある。この時期はオスは邪魔なため、オスの巣にナイフを入れオスの首を絞める作業がある。オスの巣穴はサイズが大きく白っぽい蓋が被さり出っ張っているので直ぐ分かる。ちょっと可愛そうだが全体の生産性や効率を上げるための人間側の知恵である。

(10)巣枠を箱に戻し完了・・・まとめ
最初の作業の逆を行う。巣枠を元の巣箱に戻し、上に麻布をかけ更に上蓋をして完了する。この間常にミツバチが攻撃的にまつわり付いてくる。自分達の蓄え、生活の糧を人間が横取りするのであるから当然の成り行きである。それを危ないと思って人間側が乱暴に反応すると更にミツバチは襲ってくるので初期段階から注意が必要である。つまり優しく生き物として取り扱ってあげ、さらにミツは搾りきるのではなく当面の生活のために残してあげることが大切である。刺されるのは当然の結果で、それを叩きつぶすとその匂いに誘われて多量の仲間が飛来する。過去の実例だが集団のミツバチに殺された牛もいる位である。自然とのバランスの中で養蜂が成り立っており、人間はその一部で、採蜜はその一瞬でしかないという理解が必要であろう。
またミツバチは花の受粉を通して自然界全体に貢献している。何と素晴らしいことだろうか。しかし人間は果たして如何なものかと作業しながら感じてしまう。