ELECRAFT KPA500の電源ヒューズが飛ぶ(Dec 30. 2013〜Jan 3. 2014)


写真は依頼人から届いたELECRAFTのリニアアンプKPA500のフロントビュー(左)とリアビュー(右)。
このアンプは増幅デバイスにMicrosemi社のVRF2933(ドレイン損失648W)をプッシュプルで使用している。
電源はトロイダルコアに巻いたトランスを使用し、ブリッジ整流しDC60Vを得ている。また同じ巻線を5倍圧整流して得たDC270VをTRスイッチバイアスとして使用している。
電源トランスの1次側は、100V/117V巻線が2つあり、プラグ式ヒューズ(2本内臓)ホルダの向きを変えることにより、並列(100V/117V)または直列(200V/230V)の接続替えを行う。ヒューズはファーストブロー12A。
依頼人からの情報によると、100V運用で電源を入れるとヒューズが飛ぶとのことで、実装品は2本とも断だった。
状況を確認するために、手持ちの関係で15Aヒューズを実装し電源を入れると、ブーンとトランスが唸りヒューズは溶断。その間2〜3秒である。早めに電源を切れば溶断は免れる。また2本のヒューズの溶け具合は同一ではない。
原因がトランスの2次側にあるか負荷側にあるかを確認するために、2次巻線を外し電源を投入するが全く状況は変わらない。
それではと、試しにACラインとシャシ間の絶縁状況をテスタで当たると何と3Ω未満・・・可笑しい。
それで側板を外してみると数MΩ。これだ!とばかりトランスを確認するとコイルキズ。側板を締め付けていた皿ビスの先が、コイルの一部に接触し地絡していたことを確認。
トランスを固定しているナットを緩め、僅かに内側へずらして固定し難を逃れた。

写真は天板・フロントパネル・左側板を外したKPA500。
これらは主に多数の皿ビスで締め付けられている。皿ビスのため表面に突起が出ず中々グッドだ。

写真左はトランス位置を内側へずらし電源投入したKPA500。上蓋が開いていると左側板にあるマイクロSWがオフになりインターロックが働きトランス2次巻線が整流回路から切り離される。
KPA500のマニュアルには回路図が付属していない。驚きだ。依頼人はKitで購入して組み立てたそうだが、これだけのモノを組み上げるのに回路図が無いのは理解に苦しむ。と言うよりアマチュア無線家としては寂しいの一言だ。
KPA500関連WebサイトではPDFによる回路図を公開しているので、必要な場合はそれをダウンロードしてプリントアウトする。
写真下は測定のために工房シャックにセットた様子。



以下はIC780+KPA500とIC-780のIMDを測定したものです。 測定条件はKPA500の電力表示が500W出力になる様にIC780出力を調整したものが左、そのときのIC780出力(KPA500の電力表示は凡そ40W)を測定したものが右。
周波数は7.1MHz/LSB。ツートン発生はDTMマイクロフォンHM-118TN、スペアナはR3273/ADVANTEST、ダミーロードはBIRD8404、サンプラは自作。図はクリックすると拡大します。
エキサイタ(IC-780)出力よりリニアアンプ(KPA500)出力の方がIMDが良いのが興味を引きます。