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8F45R/4CX5000R & 7F71RF Tetrodes with Sockets

次項以後で紹介する8F45R/4CX5000Rと7F71RFの雄姿、及びそのソケット。
前者はEimacのソケットSK-300Aに挿入されているが、後者は純正ではなく北海道のグループによる製作物(らしい)で真ちゅうの削り出しによる逸品。


NEC's 8F45R/4CX5000R Tetrode

8F45RはEimacの4CX5000R相当管である。EimacのソケットSK-300Aに実装した様子。この球は110MHzまでフルに使える事になっているが、業務用としてはFM-TXや更に周波数の低いRadio-TXの終段や変調器の終段として使われることが多かった。10KW出力規模のRadio-TXは1970年代頃までは8Tガラス管が好んで使われていたが、その後装置の小型化に伴い8Fセラミック管が多用されるようになった。しかし1990年代に入り、最終的に固体化された半導体PAの集合体に終段の座を奪われる。10KW出力のRadio-TXでは2本パラレルで使用されていた。写真はNEC製であるが、メーカーが異なるとセラミック色に併せて金属部分のメッキ処理も微妙に異なり面白い。この球を家庭で使う気は起こらないが、ソケットに差し込むと安定した置物になる。国産送信管の規格は中々まとまったものを見つけ難いが、TOSHIBA America ElectronicsのWebサイトが参考になる。
8F45R/4CX5000A(Max.ratings)…Heater/Filament(V)/(A):7.5/75, Freq for Full Input(MHz):110, Plate Voltage(V):8000,Screen Voltage(V):1500, Plate Current(A):3, Plate Diss(KW):5, Screen Diss(W):250, Input(PF):126, Output)PF):19, Cooling:Forced air, Length(mm):215, dia(mm):126, Weight(kg):3.8


HITACHI's 8F76R, 7F60RA & 4F64 Tetrodes

倉庫を整理していたら日立製の送信管が出てきた。段ボール箱に無造作に放り込んであった様だが保存状態は良好。8F76Rは10KWクラスのTV-TXの映像終段管として最もポピュラーだろう。7F60RAは1KW程度のFM-TXか・・・4F64はそのエキサイタ?。既に現役を引いて四半世紀も経つ歴戦の勇士たちだ。
8F76R(Max.ratings)…Heater/Filament(V)/(A):7.5/120, Freq for Full Input(MHz):250, Plate Voltage(V):11000,Screen Voltage(V):1000, Plate Current(A):5.5, Plate Diss(KW):15, Screen Diss(W):300, Grid Diss(W):100, Cooling:Forced air, Length(mm):257, dia(mm):188, Weight(kg):6.4
7F60RA(Max.tatings)…Heater/Filament(V)/(A):*/*0, Freq for Full Input(MHz):250, Plate Voltage(V):*,Screen Voltage(V):*, Plate Current(A):*, Plate Diss(KW):2, Screen Diss(W):*, Grid Diss(W):*, Cooling:Forced air, Length(mm):178, dia(mm):122, Weight(kg):2.7
4F64(Max.tatings)…Heater/Filament(V)/(A):6.0/2.8, Freq for Full Input(MHz):UHF-TV, Plate Voltage(V):2000,Screen Voltage(V):400, Plate Current(A):*, Plate Diss(W):180, Screen Diss(W):12, Grid Diss(W):*, Cooling:Forced air, Length(mm):66.5, dia(mm):41.3, Weight(kg):*7
v a 30.0/0.25 CT kv 400v 500w 180w 12w


TOSHIBA's 8F76RF Tetrode

8F76Rは10KWクラスのTV-TXの映像終段管として最もポピュラーだろう。8F76は水冷管で外形も電気的仕様も8F76R/RFに比べ一回り大い。8F76Rは強制空冷管であるが改良が加えられ最終的には8F76RFとして製造されていた。8F76RFはプレート下方にツバが設けられている。その目的は、全ての電極に対し同一のエアで冷却する方式を改め、プレート以外の電極へよりクリーンなエアを送るためである。プレートは比較的ラフな送風で構わないが、その他の電極においては湿気・塵埃・硫化ガス等により、フィンガストックの接触状況が変わり不安定な動作を招く可能性があった。このためプレートは従来通りに、その他電極は十分なフィルタ処理を施し送風系統を分離(2系統化)したのである。なお一般的な規格表には8F76Rまでの記述が殆どで、最終仕様である8F76RFの記述は非常に少ない。写真はVHFのTV-TXで使用されていた8F76RFの勇姿。
なおCPI/EimacのWebにY-863のデータがあるが、そこにThe Y-863 is a ceramic /metal VHF power tetrode intended for use as a retrofit for the 8F76R in VHF-TV amplifier service.とコメントが付けられているのが興味を引く。EimacがMade in Japanに敬意を表していた証だろうか・・・アマチュア無線家ならずとも実に興味深い話である。
なお国産送信管の規格は中々まとまったものをWeb上で見つけ難いが、TOSHIBA America Electronicsのサイトが参考になる。
8F76R/RF(Max.ratings)…Heater/Filament(V)/(A):7.5/120, Freq for Full Input(MHz):250, Plate Voltage(V):11000,Screen Voltage(V):1000, Plate Current(A):5.5, Plate Diss(KW):15, Screen Diss(W):300, Grid Diss(W):100, Cooling:Forced air, Length(mm):257, dia(mm):188, Weight(kg):6.4


Eimac's 4CX35000 & TOSHIBA's 8F68R Tubes

50KW/AMラジオ送信機で使用されていたEimacの4CX35000とTOSHIBAの8F68R。前者は2本パラレルで終段(被変調)に、後者はプッシュプルで変調機終段に使用されていた。両者とも強制空冷だが、4CX35000のプレート上部はホコリが焼き込まれたのかかなり変色している。この4CX35000は縦に長く、ぐらつかない様にソケットの底から管をホールドする機構がある。知らないで無理に外そうとして管やソケットを傷めた方もいらっしゃるのでは…。観賞用としては貫録十分であるが、これを家庭で使おうなんて人は普通は居ないだろう。フィラメントだけで3KW、グリッド(Cg)損失が500W…我々アマチュア無線家には信じられない値で、500Wと言う数字はプレート損失の事かと勘違いするほどである。8R68Rはフィンガーストック接点で囲まれた同軸形ソケットを使う。この球はフル稼働時の周波数が220MHzまで補償されているので、FM-Radio-TXやロウチャンネルのTV-TXにも使用された。しかしラジオやTVの終段は、FET等で固体化されたユニットアンプの集合体と電力合成器の塊にとって変わり、こうした名物はこれから直接見る機会は激減するだろう。

4CX35000(Max.ratings)…Heater/Filament(V)/(A):10/295, Freq for Full Input(MHz):30, Plate Voltage(V):20000, Screen Voltage(V):1500, Plate Current(A):15, Plate Diss(KW):35, Screen Diss(W): 1750, Grid Diss(W):500 Cooling:Forced air, Length(mm):440, dia(mm):248

8F68R(Max.ratings)…Heater/Filament(V)/(A):8.5/185, Freq for Full Input(MHz):220, Plate Voltage(V):10000, Screen Voltage(V):1500, Plate Current(A):8 or 10, Plate Diss(KW):25, Screen Diss(W):400, Cooling:Forced air, Length(mm):295, dia(mm):240.6
TWT LD7214D/Y8651

写真はNECの進行波管(TWT)LD7214D。Ku帯固定局のHPAに使用されていたもので、これ1本で300W出力が得られる。Tomson社のY8651と互換性があり名盤にこの名称も小さく書かれている。入力は左手のSMAコネクタで、出力は右手から導波管で行う。地上局では一般に直径4.5m程度のカセグレンアンテナを使うと14GHz帯では50dB以上のゲインが得られる。JSAT等の衛星では、地上からの打ち上げ電力はハーフチャンネルで凡そ56dBW/EIRPに管理されているので、HPAから供給される電力は給電線ロスなどを差し引いても非常に少ない。しかし降雨減衰が発生すると送信EIRPを上げざるを得なくHPAには広いマージンを持たせている。また複数波を同時送信する場合、例えば2波同時送信だと電力は3dBアップする事になる。TWTは陰極から陽極に向かう電子速度と、その周辺にあるへリックス上のRF信号速度との相互作用により増幅が成立するもので、その動作原理は非常に興味を引く。


7F64 & 7F64R TV-TX Tubes

写真は愛媛のK氏からお送り頂いた蒸発冷却管7F64(左)と強制空冷管7F64R(右)の写真。7F64の右側に突起している円管分が給水口で、上部のフランジが蒸気の排出口になる。運用時は耐熱のために、それぞれテフロン製コルゲートパイプで電気的に絶縁して接続される。高周波部分より冷却設備が大掛かりとなり、とてもアマチュア向きとは言えない。一方7F64Rは強制空冷管なので構造は簡単であるが、プレートフィンへの送風に合わせフィラメント端子(ピン・ソケット)の冷却も忘れてはいけない。この種の国産管は1980年代頃までTV-TXやFM-TXに盛んに使われたが、装置が固体化更新されたため多くが中古市場に流れた。ソケットの入手は絶望的なので、リン青銅製のフィンガーストックをプリント基板に貼り付けて製作するなどの工夫が必要なことと、フィラメント電力が桁外れに大きいのが難点である。


7F71R 1KW TV-TX

7F71R終段のTV送信機です。周波数はTV-5ch(fV=177.25MHz・fA=181.75MHz)です。国内の1KW(音声250W)TV-TXの標準的なものです。入力にはストリップラインによる整合回路が設けられています。出力は四角形のショートリングによるバリLチューンで、アマチュアにも参考になると思います。出力の取り出しは1ターン(Uターン)のリンクで行っています。主役の7F71Rはチムニィの中に隠れていて見えません。背面には電源と冷却用のブロアやダクトが設けられています。終段は、映像を低電力変調した後50W-PAを経てドライブされるリニアアンプです。TV-TX装置の特徴は、DCから4.2MHzに至る映像信号と残留側帯波による非対称のサイドバンドを扱う事です。メーカーはNECで、昭和58年9月の製造です。運用状況はEf=3.8V、Eg=-47V、Ig=0mA、Esg=490V、Ep=2.65KV・・・Ipのデータは何故か記入されていませんでした。

写真はNEC製7F71RF。この7F71Rシリーズは日本が生んだVHF/TV-TX管の傑作中の傑作と言っても過言ではないだろう。1KW級TV-TXが固体化されるまで多くの放送機(送信機)の終段、またはエキサイター段(この場合終段は8F管x2)やFM(RADIO)-TXやTV-TX音声終段で使用されていました。国内ではPAの固体化後TV-TX用としての役目を終えましたが、アマチュアの自作アンプマニアの間では未だに人気が絶えないとのこと。また東南アジアや中近東など日本製のTV-TXが設置された諸外国から、保守用品としてのリクエストも絶えないようです。そのためかTOSHIBAでは現在でもカタログにリストされています。

写真左は、左から東芝製7F71R、NEC製7F71R、NEC製7F71RF。メーカーによりセラミックの地肌の違いがあり面白い、東芝はピンクでNECは白である。7F71RFはプレート下部がスカート(ツバ)状の作りになっている。これでプレートの放熱効果を上げると共に、8F76FRと同様にプレート以外の電極を別ルートでよりクリーンなエアで冷却するためのモノである。並べてみると壮観だが、4V/78Aのフィラメントには閉口してしまう・・・。7F71RシリーズはNECとToshibaがTV-TX用に共同開発(1971年頃)したもので、この2社以外は製造していない。
写真右はToshibaの7F71RFのパッケージ。球はビニール袋にシリカゲルと共に収められスポンジのクッションで固定されている。側面にはこのまま輸送する事を禁じる旨が赤字で書かれている。なお参考までに7F71RAをTV-TXに使用した実装例と説明(NECマニュアル)を別掲しております。また7F71RAのスペックについてはWVS-TECHNOLOGYのサイトに詳しく掲載があり、海外でも知られた4極管であることが分かる。


5T31/450TH x2 AM 1KW TX

5T31/450THパラレルの放送用中波AM送信機です。中波であるために随分と穏やかな配線処理で、オーディオアンプを思い起こさせます。リニアアンプではありませんが、1KW連続運転が可能です。強制空冷などは行わず、自然空冷と言うのはやや驚きです。写真では分かり難いのですが、下方にエキサイター(UY-807→4P55)と変調器(5B38x2)が組み込まれています。メーカーは池上通信機(放送用ライブカメラのトップメーカーで米国でIkegamiはLiveCameraを指す)で昭和42年11月の製造。裏側に電源、RFタンク回路、変調トランス等があります。名盤には「60PM-41形ラジオ放送機・出力1.1KW・周波数範囲535〜1605Kc・出力インピーダンス300Ω」と記されています。


MCA TRCV Remote Controler

MCA無線と業務用無線機のリモートコントロールシステムです。5系統の制御網の内、3系統はモトローラ製800MHz帯MCA無線機で、2系統がNTT回線を使用してリモートコントロールされる。5系統を4つのリモコンパネルから、どの場所からでも運用できるように、シーケンサで制御している。リモコンシステムの製作は外岡氏/JF2KTVによるものです。