R-390A/URRにプロダクト検波を組み込む


左は今でも現役のR-390A/URRと51S-1B、右はIFユニットにリング復調器によるプロダクト検波基板を組み込みテスト中のスナップ

R-390A/URRは非常に良く作られた受信機だが、設計が古いためSSBの安定受信には特殊な技能が必要だった。即ち、BFO注入レベルに合わせた、RF/IFレベルの管理(操作)がそれで、RFフルゲインでのSSB安定受信は不可能に近かった。この問題を解決するために、IFユニットにプロダクト検波を組み込み検波器のダイナミックレンジ拡大と、併せてAGC時定数の変更を行った。

IFT出力(455KHz)はIFTでステップダウンと平衡変換後、ダイオード4個によるプロダクト検波器(リング復調)に入る。一方BFO出力は、Tr用小型IFTによりステップダウンしてからプロダクト検波器に注入する。また、BFO管のプレート回路にリードリレーを挿入し、BFOがONになった時リレー接点によりプロダクト検波を選択するようにしてある。関連部品は全て50mm四方の基板に組み、IFユニット内に収めるが、バラスト管の空きピンもラグ端子代わりに使用した。
AGCの時定数は、ハイC&ローRの設計でアタック時間が長いため、これをハイR(10倍)&ローC(10分の1)に変更し、レスポンスを改善した。またIF出力との結合(負荷)状態が変わるので、IF最終段(6AK6)で行われているBFO信号に対する中和回路の再調整が必要になる。更に、モード間でレベル差(AM>SSB/CW)が生ずるので、AM回路に抵抗による減衰器を挿入しこれを吸収しておく。

以上により、可変周波数BFO(PTO)と相まって、最新のSSB受信機に勝るとも劣らない受信音を出力するようになった。
なお、IFユニットの周辺インターフェイスは触っていないので、オリジナルのIFユニットと互換性がある。当然、シャシ上からは両者の区別はつかない。また、オリジナルのANL回路を、AM/SSB/CW全モードで働くようにしているのもミソである。
最終段IFTの出力レベルは実測すると30V(P-P)もあり驚く。そのまま管球式のプロダクト検波器に入れるとレベルオーバーになる。これを知らないで管球式プロダクト検波器を組み込み、いきなり歪に悩まされた方もいらっしゃるのではないだろうか。

1982年の購入から既に20年近く経った(2001年現在)。もしプロダクト検波の組み込みが無かったら、シャックの隅か押入れの奥に追いやられていたに違いない。当初は下の写真の様に、背面のIF出力を受けた外部復調器(Ring-Det&Xtal-BFO)を作り運用に供していた(AGCもここから返すと良い)が、スマートさに欠けるのと可変周波数BFOをどうしても使いたかったため、上記方式に落ち着いている。なお、この外部復調のSSB音は今でも絶品だったと思っている。ただしAMの音はR-390Aに軍配。
メーカーのオリジナルにこだわるのも良いが、こうした互換性のある改修で持てる能力を現代に生かしてやることも必要だと考えている。


最初に作った外部SSB復調器の外観と内部・・・間に合わせ的な雰囲気であるが、SSBとAMの復調とR-390A出力を選択出来、SSB音は絶品だった


R-390A/URRをキャビネットラックに入れる

R-390Aをはじめとする軍用無線機はラックマウントを前提としている。ラックを選ぶ場合、フロントパネル幅は19インチで問題は無いのだが、縦のサイズとビス留め間隔が問題となってくる。国内ではJIS規格のものとEIA規格のものがあるので注意したい。 JIS規格は50mm単位でビス穴は両サイドの中心に1つ、EIA規格では45mm単位でビス穴は両サイドの端々に2個である。R-390Aは後者のEIA規格で、高さは6U/270mm(単位/1U=45mm)である。またネジ間隔もJIS規格と異なり1U幅のパネルで左右2個ずつ締める形で、高さが変わるとU数に応じて穴の位置が変わってくる。R-390Aでは左右に4本のビスでEIAピッチのラックに取り付けることが出来る。
写真はアイデアルのキャビネットラックRCS-07Uに実装したR-390A。7U分あり最上部はブランクパネルで、ここには将来外部SSB復調器とスピーカーを入れる予定である。 R-390Aは34Kgもある。このクラスのラックマウントは両サイドにレールを取り付けて挿入する形をとるが、それをやろうとするとラックの固定が必要になるため、ここではフロントパネルを5mmビス計8本で締めているだけ。 このラックシリーズには6UのRCS-06Uもあり、ぴったり収めたいときはこの方が便利。背面はパネルを外すと完全にオープンになるので配線などは大変やり易い。外見が改善され本体の保護にも有効である。ラック上に鎮座する51S-1とのバランスも中々良くなった。(2006.04.23)


外部SSB復調器を1U/EIAパネルに収める

2014年5〜7月、6DC6のAGC特性を調べるためにどっぷりとR-390Aに浸かった。
これを機にフロントパネル交換を果たすなど懸案の解決に勤しんだ。そして前項で述べている、ラック上部の1U/EIAスペースに外部SSB検波器の組み込みも果たした。
新たな基板作成は時間を取られるので、R-390A購入当時に製作した(上述)外部復調器の基板をそのまま移植している。
写真はラックに実装した様子。R-390A出力(AM/CW/SSB)の他、51S-1やAux入力(前面)を備え、受信システムの総合モニターとして位置付けている。