About SSB Inverting with Frequency Heterodyne

フィルタータイプでSSBを発生させる場合、キャリア周波数が固定ならフィルターを2個(一般に中心周波数で±1.5KHz)用意して、USBとLSBを取り出すことが出来る。またフィルターが固定なら、キャリア周波数をフィルタの上下(一般に±1.5KHz)のキャリア周波数を変える事でUSBとLSBを取り出すことが出来る。この場合、前者はキャリアより1.5KHz高い方がUSBで1.5KHz低い方がLSBである。また後者はフィルタより1.5KHz高いキャリアの場合はLSB、1.5KHz低いキャリアの場合はUSBとなる。
ここまでは比較的容易に理解できるが、例えばフィルタとキャリアの関係ではUSBしか発生できない場合において、最終的にLSBを作りたい場合にどのような処理をすればそれが可能となるのだろうか。

まず通常の周波数変換(ヘテロダイン)について考える。例えば9MHzのUSB(キャリア=9MHz、信号は9〜9.003MHzの3KHzに分布)と5MHzの局発を混合したらどうなるだろうか。

即ち・・・・・・(9〜9.003)MHz±5MHz=(14〜14.003)MHz+(4〜4.003)MHzで14MHz/USBと4MHz/USBの2波が生成される。

ここで注目すべきは生成される信号は両者ともUSBであると言うこと。 そこで次に局発を13MHzに変えてみる。

前例に従い・・・(9〜9.003)MHz±13MHz=(22〜22.003)MHz-(4〜3.997)MHzと2波が生成される。

ところが、前項はUSBであるが後項は何とLSBに変換されている。
このように局発周波数をIF(この場合9MHz)より高く取ることで、逆ヘテロダイン(局発-IF)が行われSSBが反転する事が分かる。

SSBの自作を始めた頃、IF=455KHzのシングルスーパー受信機で、BFO=453.5KHz(USBのキャリア周波数)を注入しないと7MHzや3.5MHzのSSBが復調出来ないことを体験した。LSBだから456.5KHzを注入して必死に受信を試みたがボイスにならない。これは7MHzをIFに変換するための局発が7MHz+455KHz=7.455MHzになっているからで、この時点でLSBがUSBに反転していたのである。
またこの場合、逆ヘテロダインであるが受信周波数と局発周波数は455KHzの差があるだけで増減方向が同じなので逆方向ダイアルにはならない。ところが前述の(9〜9.003)MHz±5MHz=(14〜14.003)MHz+(4〜4.003)MHzの前項と後項を見ると、生成されるそれぞれの周波数帯で、局発5MHz(VFO)の周波数増減方向が前項は加算なので連動するが、後項はサイドバンドは反転しないが減算なので逆ダイアルになってしまう事が分かる。
八重洲無線のFT-200はIF=9MHzのプリミックス局発シングルスーパートランシーバーだが、バンド毎の局発クリスタルを減らすために一部バンドだけ周波数の増減方向が逆になっているバンド(14MHz)がある。装置内の周波数構成によりダイアルの増減方向が変わったり、サイドバンドが反転したりする現象は、限られた材料で最大限の能力を発揮しようとるす技術者の知恵と工夫とも言える。

最近はSSB送信機や受信機を自作する方がめっきり減ってしまったが、合わせてこうしたノウハウも消滅の一途にあるように思えてならない。写真は1979年8月当時のシャックであるが、使用している設備は全て工夫とアイデアに満ちたHandMadeのSSB機器だった。実はこの話を本コーナーにアップした理由は、あるHPで類似した内容で誤りと思える記述を発見したからである。