SW電源アダプターの弱点(Oct 22, 2009〜)

出力ケーブル断線・・・ACプラグが組み込まれたSW電源アダプタを良く見かける。携帯電話の充電器もその仲間だ。暫く使いまわしているとDC出力ケーブルがブッシング部分で断線する事が多い。何も動かさなければ問題は無いのだが、移動運用したりする場合はそうも行かない。電源内部は正常なのに何とか断線を復旧させたいと思われる向きには参考になろう。
左はムラタのSWB1215J9と称する出力12.7V/1.1AのSW電源。この電源は写真の如く上下に薄いプリント基板が配置され不要輻射を積極的に抑えようとする試みがある。また基板上の部品配置も発熱を考慮して十分な空間とヒートシンク処理が行われている。小型を競い密集して作られる電源とは一線を画している。ビスは特殊セルフタッピング2本で、取り外しには専用ボックスドライバーが必要。写真は修理のためにケーブルを切断した様子。
材質がケーブルよりブッシングの方が固いため、ケーブルを引き回しているうちに導体が断線してしまう。また両者は一体構造のため、ケーブルのみを引っ張り出す事も出来ない。それで小型のゴムブッシングを用意して代用する。もう少しブッシングの柔らかさを考慮してもらえると寿命が延びると思われるのだが・・・。
基板上の部品が不良になる場合は別として、この様にケーブル断線により不良になる場合は容易に復旧できるので参考にされたい。

部品不良で発振停止・・・限りなく小型にして頂けるのは結構な事だが、電源の役割の重要性を考えたらもう少し何とかならないものかと思ったりする。
写真は3V出力でHUBに使用していた24時間通電の電源。一見しただけでは部品の変質など感じない。
写真では見難いが、良く見るとトランスが発熱しためワニスが変色したり溶け出したりしている。
周辺部品を調べたが出力Trの不良でトランスに流れる電流が増加して最終的にトランス巻き線のレアショートを招いてしまった模様。例えば巻き線の塗装が焼けてしまったとか・・・。
部品も悪化する順番があり、どうしても早番に責任をなすり付けたくなる。しかし部品の余裕度や保護回路とかが考慮されていればもう少し違う結果になったのではと推測する。
この種のトランスを巻き直す気力や同等品を探す元気も無いので棚上げ状態。もう少しエアの流れる構造か熱の逃がし方を考えれば寿命が延びたのでは・・・。
こういう姿を見ると、最近のSW電源アダプタって完全な消耗品なのかと、つくづく思う。電源が無ければ何も出来ない筈なのに・・・。

広帯域ノイズ発生源・・・SW電源の持って生まれた特徴。どうしてもスイッチングしている波形の高調波が重畳される。数十KHzをON/OFFしてトランスの1次側に流れる電流を切替え、目的電圧を2次側から取り出して整流・平滑する仕掛けだからひとたまりもない。
簡単なLPF処理はされているだろうと思い測定したのが写真。無負荷時の出力をスペアナ(50Ω)終端し10MHzまでの高調波状況を診た。SW電源本体にはModel No.GF12-US1210と記され、大きさは45x33x24(mm)と超小型。
高調波は-50〜-60dBm程度のレベルがあり、これじゃ通信に使うレベルと同等で受信は大変苦しい状況になると思われる。しかも電源だから切り離す事も出来ず装置にそのまま侵入してくる。負荷(装置)側の電源入力にコモンとノーマル処理のLPFが必須になる。しかし負荷側でそれをやっても給電ケーブルまでは輻射要素になるので場合によっては効果が無いかも知れない。
PLC問題もそうだが、このような電源が当然の如く出回る状況は何とかならないものだろうか。デジタル機器には使えても、アナログの微小信号を扱う中波ラジオや短波ラジオは全く使い物にならないのだ。
「電波グリーン月間」という言葉をよく耳にするが、こうした現状にも目を向けて欲しいと願う。