TL-922の高圧DCブロックコンデンサ不良について(Aug 11, 2012)
TL-922へ50MHz機能を追加して約1.3KW出力の断続テストを行っていた。
数分間続けると突然DCブロックコンのプレートVC側にヒビが入り火花と黒煙が発生した。
様子を見ながらそのまま出力を断続させると出力が激減、増幅機能停止に至った。
この状況を以下の如くメーカーへお伝えすると次項の様な返答が合った。
@以下経過を推定していますが、大きな誤りがありますでしょうか。
A誘電体の絶縁破壊ではなく電極とロッド(金具)が外れ、周辺が黒化。
Bロッドと電極間にアークが飛ぶ。
Cその熱で膨張、圧力でモールドにヒビ。
Dロッドと電極が外れる要因はやはり熱で半田が溶けたから。
E熱の発生はRF仕様ではいため誘電体の損失によるもの。
Fしたがってコンデンサの仕様に合った使い方が必要。
@当該高圧コンデンサ名
DH30YZ102Z10K・・・現在生産中止済品。
A半田付けは推奨できない
端子部分にはんだ付けを行うと端子部分が高温になり、セラミックとの温度差により、セラミックにクラックが入って故障する場合がある。
B今回の故障について
可能性としてはいくつかあるが、写真だけでは特定はできない。
この商品高圧DC用途品なので高周波用途はご容赦いただきたい。
故障経緯の可能性としては、主に以下の2つが考えらる。
(1)半田付けの熱により端子直下のセラミックにクラックが入り、この部分のESRが上昇、あるいはアーク放電して発熱、故障に至った。
(2)高周波による自己発熱でコンデンサ温度が上昇し、端子が剥離してESRがさらに上昇、発熱、あるいはアーク放電により故障に至った。
*いずれの場合もコンデンサが高温になるので樹脂も強度が低下し、割れやすくなる。
写真は外れた端子ロッドを含め、薬品で付着したカーボンを洗浄したもの。思いがけない顔をのぞかせている。
写真は蒸着面のクローズアップ。
誘電体部分がえぐられている様子が分かる・・・まるでキャラメルだ。
このような状態になった経過に興味が及ぶ。
側面にTV.15KV.DC/WV.10KV.DCと標記されている。
末尾のDCは直流専用と理解せよという事で、RFでの使用は補償されない。
素人やアマチュアは、何も気にせずにRFの電力伝送に使っていたのではと思われる。
それで、Kenwoodさんのその辺りの理解を知りたくなる・・・。
それにしてもこのモールドされたパッケージを割ってしまう圧量も相当なモノだと思う。
RFって本当に奥が深い。
写真は取り残されたロッド。取り外す前に撮影したもの。ロッドの装置側はビス締めだが、その上から十分な量の半田が流し込まれている。
電極側はカーボンが付着しているが、電極の蒸着部の一部が剥離してロッドの周辺にくっ付いている。
ところがロッドの先端は洗浄すると上掲の写真の様にピカピカになった。
蒸着された電極へ半田付けされているはずなのに、このロッドには半田メッキされた形跡が殆んど無い。
これはひょっとして、最初からロッドと蒸着面は半田を介して面でつながっていなかったのではと思いたくなる。
一部つながっていた部分が、50MHzとKWのランニングで溶断、その後アーク発生し膨張、モールドパッケージにヒビが入り外部に火と煙・・・と捉えても不思議ではない。
しかしロッドが付いていた電極の蒸着が見えず誘電体がえぐれ凹んでいる。RF電力による熱で蒸着部と誘電体を蒸発させてしまったのだろうか。その際ロッド先端の半田も同様に蒸発・・・この考えもしかりだ。
色々考えると頭が痛くなるが、やはりメーカー殿が言われるように、全てはRF電力用ではないことに起因するのだろうか・・・。