Mini-CircuitsのPOS-535によるUHF帯VCOの実験

Minicircuit社のPOS-535を使ったVCOを制作する。V/UHF帯の自作を楽しむ場合、ちょっとした信号源が欲しくなったりする。Mini-Circuits社が製造するメタル缶入りのVCOはこの用途にぴったりといえる。VCO電圧をVRコントロールで与えれば容易に目的の周波数出力を8dBm以上の高レベルで得ることが出来る。オーナーはこの出力を地上デジタルTV放送をミッドバンドに変換する局部発振器として利用している。
なおPOS-535は秋葉原の秋月電子で取り扱っている(\2500)。

POS-535・・・Freq:300-525MHz, Power Output:8.8dBm, Phase Noise(@offset):-93dBc/Hz/10KHz -116dBc/Hz/100KHz, Pulling pk-pk(@12dBr):2MHz, Pushing:0.4MHz/V, Tuning Sensitivity:10.5-24MHz/V, Harmonics:-23dbc/typ -18dBc/max, Current(@12V):18mA

(1)構 成
TAKACHのアルミダイキャストボックスTD 5-8-3B(55x30x80)にBNC/RCA/DCコネクタを取り付け、主役であるMini-CircuitsのPOS-535を組み込む。
このPOS-535は電源と制御電圧を与えるだけで容易に300-525MHzを発信させる事が出来る。
基板は使用せず出力を最短でBNCコネクタに半田付けする。
制御はVRによるINT-CONTと外部(RCA)からのEXT-CONTの切替がSWで出来る。
INT-CONTはVRを36mm/300度バーニアダイアルで回して制御電圧を微調整する。
VCOなので電源電圧の変動が発振周波数に影響しないようにレギュレーター回路を挿入している。 スペックによればハーモニックスが最大で-18dBあり、使途はこの値を考慮する必要がある。
機構部品を極力減らすため、バーニアダイアルの取り付けにナットは使用せずタップを立て対応している。
また、VRの固定は専用の金具等使用せず、太目のスズメッキ線による配線で周辺の部品とを結び固定している。

(2)内部構造
ケース中央に制御電圧可変用VR、左端は出力BNCコネクタでここにPOS-535出力が直付けされている。
取り扱うUHF帯なので怪しい基板等で処理するよりこの方法が簡単で確実。
その代わり電源や制御線はDCなので十分なバイパスを施せば適度な延長が可能である。
右端下はEXT-CONT入力用のRCAコネクタと右端上は電源入力コネクタ。EXT-CONTは外部からの鋸波でスイープ(掃引)発振を行ったり、PLL装置のVCOとして使用する事が出来る。
スイッチはVRによる制御電圧とEXT-CONTによる制御電圧の切替を行なう。
写真では3端子REGは未だ挿入していない。VRで生成する制御電源に電圧変動の他リップルやノイズがあると、VCOがFM変調されてしまうので純粋のDCである必要がある。
電圧の変動による周波数への影響を押さえるため、制御電源についてはRegとリップル・ノイズ除去回路が必要になる。

(3)回路図
左図に回路図を示す。非常に簡単な回路である。外部制御を必要としなければRCAコネクタもSWも不要である。
前述の如くこのPOS-535のハーモニックス特性は最悪で-18dBである。発振器としてのピュリティを上げて使う目的には馴染まない。その場合はフィルターの併用が必要である。
出力はCWであるが簡易にFM変調をかけたい場合は、VR中点にコンデンサ経由でオーディオ信号を加えれば良い。

(4)評価とまとめ
左に電源電圧12V(SunHayato)、EXT-CONTに9V(006P積層電池)を与え、発振周波数417.37MHz近傍のスペクトラムをを示す。
予想はしていたが結構スプリアスや歪みがある。制御電圧を電池から取っているので環境としては相当良好なはずなのに・・・。
なお主キャリア出力は9dBmあり規格を満足、また近傍IMは-52dB取れているがシングルトーンとは言えない。またこのレンジでは見えないないが、Harmonicsは2次:-30dB、3次:-37dB、4次:-42dBで、これは規格(-22dB)を満足している。
しかし主キャリア±7〜9MHz付近にある歪の様子は、供給する電源によって大きく変わる。この原因は一体何なんだろうと興味がわいて来る。ちなみにこの場合の電源はSunYahatoのトランス式のシリーズRegによるもの。
試しに、安物のSW電源アダプタを使うとSWパルスの影響をモロに受けて多くのスプリアスが重畳されてくる。時間軸のオシロスコープ波形では分からない成分が確認でき、粗悪電源のチェックには非常に都合が良い。
ここは純粋なアナログ技術が必要になる。電源と制御回路のノイズ除去は一考が必要である。しかし、それでも簡単な信号源には十分使えるので手元に置ける必須アイテムになるかも知れない。

受信機(IC-706MKU)で聴くSSBは音が濁って聞こえ、FMで聞くとまさに変調波であった。
気になり旧型スペアナ(アドバンテストR4131A)のRBWとSPANを最小(拡大)にして測定した波形が左。
これは静止画なので全てが表現できていないが、キャリアには細かな成分が様々な形(AM・FM・PM的に)で重畳されている。
この場合の電源条件は上波形のときと同じである。
VCOの電源は電池運用していないので、この後12V程度のバッテリーによるテストを行なってみる。
もし劇的な改善があればAC電源のDCピュリティを上げる工夫が必要になる。
色々と勉強させてくれる。

左は電源を13.2V/Ni-MH電池(HP-90A/PACO)に置き換えた状態を示す。7-9MHz付近にあったスプリアスがノイズレベルまで低下している。

左は同じ電源によるキャリア近傍の様子で、全体にピュリティが上がっている。
と言うことで使用するDC電源の純度に大きく依存している事が分かる。