BIRD43とKuranishiRW-3003Lの表示例

知人のT氏からクラニシの電力計RW-3003LがBIRD43に対してどの程度違うのかを調べて欲しいと依頼があった。その目的はBIRD、BIRDと国内ではもてはやされているが、果たしてその真相は如何なものかを確認するためである。
写真はT氏から送られてきたRW-3003LとBIRD43(エレメントは1000A)をTXとダミーロード間にカスケードに接続した様子。なお順序はRW-3003LがTXに近い方である。
測定は50.5MHzのCWをIC-756より送信し自作のGU-84Bパワーアンプで増幅したRFを通過させた。参考までにスプリアスは-60dB以下に抑えられ、またSWR=1である。
100Wステップで1KWまでの電力をRW-30003Lのメーターで振らせ、そのときのBIRD43の表示を記録したものが以下の表である。

背景に写る怪しげな機械はロシア製4極管GU-74Bシングルによる144MHz/1KW-PA。たまに電源を入れドライブするとBIRD43が気持ちよく1KWを越す。但し元々500W程度の熱設計なので連続運転には自ずと制限がある。こうした自作機の評価グッズの一つとして電力計は必須アイテムであり、より精度を求めたいグッズでもある。

全体の印象としては1KW程度のレベルでは誤差は殆ど無いと言っても良いが、200W以下の比較的低レベルにおいて誤差が大きくなってくる。これはダイオードの整流特性よるものなのだろうか・・・1.8〜60MHzのワイドレンジなので致し方ない部分なのかも知れない。
なお全体にRW-3003LはBIRD43より同じ電力だと大目に振れているが、これは校正の問題だろう。数字に極端なうねりや前後飛びが無くまずまずの特性と言えるだろう。
周波数レンジが狭い分BIRDは特性を維持し易いがワイド周波数対応のRW-3003Lは逆にそれが難しいと言うことになる。したがってワイドレンジであってもバンド毎の校正カーブを持っておれば、BIRDでもKuranishiでも同じと言える。しかしここで表示したBIRDはあくまでもここでの標準値であり真の値ではない。ダミーロード両端のRF電圧を測定しそれから電力を算出したデータと比較すると面白い結果が出そうである。
と言う事でしっかりとした校正カーブを取得できれば測定精度においてはBIRDにのみ軍配が上がる事は無い。しかしそれを維持するためには、バンド毎に校正カーブを作成するなどの努力が伴う。また運用性においても標準化されたBIRD社のコンポーネントは互換が利き大変使いやすいものである。しかしアマチュアの場合は1.8〜60MHzと言うワイドレンジも逆に魅力である。と言う事でここでの結論は「判断はユーザーの目的や価値観に委ねられる」としておこう。