"3A5" 50MHz/AM Transceiver

少年時代のHandMakingで忘れてはならない存在に直熱双3極電池管3A5がある。そしてこの球を1本使った50MHzのAMトランシーバーは、少年達の製作意欲を大いにかき立ててくれた。それは誰にでも出来そうな非常に簡単な構造にある。多くの製作記事には回路図に併せ実体配線図が付属し、好奇心を大いにくすぐってくれたのだ。並3ラジオ程度の製作経験があれば何とかモノに出来、無線の世界に迷い込めたのである…。写真と図はオーム社編の「ワイヤーレスマイクとトランシーバ」第7版(昭和43年7月10日発行)の表紙と、その中で紹介されている3A5トランシーバの回路図と実態配線図である。当時この他にも、類似した製作記事が多くの図書で紹介されていた。

簡単に回路構成を説明する。V1は受信時も送信時も発振回路である。但し受信時はグリッド抵抗R2を10MΩ以上に保ちプレート電圧をVR/250KΩで(T1の2次側経由)調整し発振寸前状態をスイングする超再生検波(SuperRegenerativeDetection)である。また送信時はグリッド抵抗R1を20KΩとし、プレート電圧はCH経由でB電池から供給され通常の発振回路を構成する。
一方V2は受信時はイヤホンアンプで送信時は変調器として動作する。送信時はモニターも出来る。検波出力はRFCと0.001μFでLPFされT1の2次側にオーディオ出力されV2で増幅される。カーボンマイク出力はT1でステップアップされV2で増幅され出力側のCHでV1にプレート変調(ハイシング変調)をかける。マイクはカーボンマイクのため、A電池からT1の1次側経由でDCバイアスが与えられている。
非常にシンプルで無駄のない構成であるが、回路図から分かるように自励発振器のプレートに変調をかけているのでAM成分の他にFM成分も多かった。周波数調整はTV3chの音声(FM)で第2高調波を確認する等の工夫を凝らして対応した。周波数安定度やその他特性は今からみると大きく劣っていたが、簡単に作れて十分実用になった屋外仕様のトランシーバだった・・・大らかな時代の!。



写真の左2枚は1968年(中2)の作品。フィラメントに単一乾電池、プレートに67.5Vの積層電池を使用。受信は、3A5の半分で超再生検波、もう半分でAF増幅。送信は、検波回路の再生を深くして発振器とし、AF増幅を変調に流用した。AMのつもりだったが、自励発振のためFM成分も多かった。山七商店のスプリットステーターVCとバーニアダイアルで同調をとった。初めて50MHzの電波を聞いた記念すべきセットだった。アマチュア無線のライセンス取得前で、実際のQSOには至らずスクラップと化し、惜し気もなく次の実験に転用された。送信チェックはTVの3chでFM高調波を聞くのみであった。ラジオ製作を始めて3年頃の貴重なモノクロ写真である。原典は前述のオーム社「ワイヤレスマイクとトランシーバー」。右は2001年夏、秋葉原ラジオデパートで購入したRAYTHEONの3A5。