友達の結婚式というものに初めて招待されたときのこと。
結婚式はとかくお金のかかるものだと聞いてはいたものの、こんなにもかかるとは思わなかった。
もちろん、式を行うほうがかかるのだろうが、招待される者もなかなかの出費である。
服を新調し、それに合う靴、バッグ、アクセサリー、化粧品。なんとまぁ、用意するものが多いことよ。
使いまわしの利くものを用意すればいいのであろうが、今回はそうではなかった。
何しろ初めてなのである。
全てを用意しなくてはならない。
今までの人生でパーティーに招待されることなどなかったのである。
お呼ばれ服など持っていないのだ。
まずは、服を探すところから始まった。
一着買ってみたところで、毎回同じ服を着るというのも面白くないだろうと言うことで、貸衣装を利用しようとしていた。
しかし、百貨店の貸衣装のコーナーに行くと、とんでもない衣装の数々。
着られるわけないって!
何かの演奏会ですか?
それとも、私が主役ですか?といった服たちが並んでいた。
パーティー服専門の貸衣装屋に行けばそれなりのものがあったかもしれないが、服を探しに行ったその日は時間もなく、結局買ってしまおうという判断になった。
さて、服を探すとなったものの、意外にないものよ。気に入ったものが見つからない。
百貨店中を歩き回るうちに段々疲れてきて、もはや式になど出なくてもいいような気にさえなってきた。
泣きが入ってきたところで、ふと目に入った店になんとなく使えそうなものを見つけた。
すぐさま試着させてもらうと着られるではないか。
もう、それでいい。これ以上歩き回ることは耐えがたい苦痛であった。
そこで、即決し、次は靴探しとなった。
私は足が大きい。
甲が高い、幅が広い、そして長さもある。
なんとまぁ、標準から程遠い足よ。
自分の足が妬ましくも思えたものの、さすがは百貨店。
大きいサイズのコーナーでなんとか服にも合い、自分のサイズにも合うものを見つけることができた。
やれやれ。
という風にとにかく、服ひとつ買うのにも多大な苦労である。
このあと、バッグを手に入れ、アクセサリーを購入し、全体の調和を考え、化粧品も用意する。
この段階ですべて必要なものはそろった。
あとは当日を待つのみである。なんと長かったものよ。
そこでである。
ここまでで既に私は5万円を超える出費をしているのである。
さらにこのあと、ご祝儀を包み、交通費をかけて出かけていくのである。
二次会でもおそらく出費があるであろう。
下手をしたら、今回のこの式だけに10万円を越える出費となる可能性がある。
もちろん、式を執り行うほうがお金がかかるのはわかっているが、招待される客だって随分な出費なのだ。
招待する側も招待される側も大きな出費があるのが結婚式というものなのだろう。
しかし、招待される側にだってこんなにも大きな出費をさせる結婚式、果たしてなんでこんなことを行うのだろうと、疑問に思ってしまった。
結婚式とはやはり世間に認められるための儀式なのだなぁ、というのが実感である。
ところがである。
あれだけ「どうなのよ?」と思っていた結婚式。
そりゃ、大事な友達の結婚式だから、お祝いしたい気持ちはいっぱいあったものの、やはり、出費はかさんでいるのだ。
疑問に思うこともあり、純粋に祝いたい気持ちもあり・・・。
当日、式に出たのである。
これがまた想像を遥かに超え、すばらしいものであった。
なるほど、世間の人々が式を挙げるのがよくわかった。というよりも、自分もこんな幸せな結婚式がしたい!とさえ思った。
幸せいっぱいの二人を見て、こちらも幸せな気分になった。
心から末永い二人の幸せを祈った。
お金がかかる!!なんて文句を言っていた自分の浅はかなことよ。
そりゃ、お金もかかるさ。
だが、そこまでして式を執り行うことの意味をひしひしと感じたのであった。