第二の太陽       menuへ戻る

1 地球には、現在、海があります。             
              

 海の水は、蒸発して雨になり、川になり、その水のおかげで生物や人間が生きることが出来ます。地球を10cm大の丸い石とすると海水は、その表面の0.05mmでしかありません。普通、この程度のわずかな水では、石にしみこむか蒸発するかで消えてしまいます。全体からみればほんの少しです。でも、この水のおかげで生命が保たれているのです。地球の両隣りの火星や金星には、もう海の水はありません。火星にはそのあとが少し残っています。火星の水は地中にしみ込み凍り付いてしまったようです。金星の水は400℃をこえる気温のため蒸発・分解してしまいました。木星の衛星エウロパには、凍った海があります。  
                      

                                  
2 私たちの地球の海の水は、なくならないでしょうか。     
 
 海の水は、なぜ、蒸発してなくならないのでしょう。また、なぜ凍りついてしまわないのでしよう。それは一つには、地球が、太陽からちょうどよい距離にあるからです。地球は、太陽から約1億5000万km離れたところにあります。この距離は、地球が太陽の熱を受けるのにちょうどよいのです。そのおかげでほどよくあたためられ、海が液体で存在し、生物が住めます。もし、太陽にもうすこし近かったり、遠かったりしたら海の水は全部蒸発し、あるいは凍り付いてしまうでしょう。あと20%くらい距離が変わっただけでそうなるでしょう。しかし、太陽のおかげだけでしょうか。地球が太陽からちょうどよい距離にあっても海の水が地球内部深くへしみこんでしまっては、海は消えてしまいます。                 
                    

                               

3 なぜ、海の水は地球内部へ吸収されないのでしょう。           
 
 地殻の内部にマグマやマントルがありますね。地球の内部は、コアをもった直径1万2千キロメ−トル以上の高温のかたまりになっています。地下深く穴を掘っていくと100m当たり平均3℃づつ温度が上がっていきます。2,000mも掘ると40〜60度の温度になります。それ以上は熱くて掘れません。しかし、仮に掘れたとしてその割合で温度があがっていくと、深さ4km辺りで100度を越えてしまいます。地下40kmでは摂氏1,000度に達しているでしょう。さらに、地球の中心では、6,000度の高熱になっていると言われています。この6,000度というのは、太陽の表面温度と同じです。だから、これを地球内部の第二の太陽と呼んでもよいでしょう。これが、海水の地球内部へのしみこみをふせいでいるのです。
                              

                                                    

4 水の侵入を阻む高熱の壁 ー地下の巨大な第二の太陽ー     
 
 地球表面の水は、地下にしみこんでいきます。もちろん岩石にもすこしずつしみこんでいきます。地下深く行けばいくほど圧力が高くなりますので水のはいりこみは弱くなります。しかし、どんなに高圧でも岩石のままであるかぎり、また、水が液体でいる限り水はしみこんでいきます。もし地球が内部まですべて岩石だったなら海水はすこしずつ内部に吸い込まれ、海は消失していたでしよう。ところが岩石層でできている地殻は地下数十キロまでしかありません。地殻には、割れ目がいっぱいあります。たえず水はそこからも内部へしみこもうとします。しかし、しみこんでも地下30km〜40km程度で、それ以上は、ほとんど入り込めません。なぜなら、そこでは、もう水は、液体で存在することはできません。千度を超える高温のマントルが水をはねかえしてしまうからです。つまり、地球内部には高温の壁のようなものがあって水の侵入を阻んでいるのです。高温のマグマやマントルは水分をほんの少ししか取り込みません。時々、水蒸気爆発が原因で火山が噴火することがあります。これは岩石層の割れ目から地下へしみこんでいった水が内部の浅いところへあがってきた高熱のマグマに劇的にはねかえされて地表に戻されている姿です。私たちの地球の海は、空からの太陽のほどよい熱と地下からの「第二の太陽」(マントル)の熱のおかげで凍りつかず、地球内部へしみこんでしまうこともなく液体で存在できるのです。地球がもうすこし太陽に近くても遠くても海は消失してしまいます。これは前に書きました。それだけでなく地球内部のこの第二の「太陽」が、もう少し大きくても小さくても海は消失してしまいます。小さければ、海水は地球内部にしみこんでしまい、大きければ、熱水になり、もっと蒸発してしまうでしょう。もし、火星のように地球内部がもっと速く冷えていたならば、どんなに太陽からの熱がちょうどよくても青い海はその姿を消していたでしょう。地球の海は、このようなきわどいバランスの上に成り立っているのです。                          
                          

                                                

5 貴重な地球の海                      
 
 原始の昔、できたばかりの地球や火星が、高温だった時、どろどろに溶けた岩石の中から水が水蒸気となって吹きだし、それぞれの上空にただよっていました。それがやがて冷えて雨となり、その雨が豪雨となって数十年降り続き海ができたのです。火星では、集めた水蒸気もすくなく、小さな海ができたものの内部のマントル熱が速く冷えてしまったため、まもなく水が内部へしみこんでしまったのでしょう。地球は、火星よりも大きく、吹きでた水蒸気を強い引力で引きつけて逃がさなかったので広大な海をつくることができました。また、金星よりも太陽から離れていたので海水が沸騰することも水蒸気が分解されて失われることもなく残ったのです。この貴重な地球の海が現在まで保たれているのは、太陽からの幸運な距離と地球内部の第二の太陽の絶妙なバランスのおかげです。奇跡とも言える地球の海とそれがもたらす大自然の環境を私たちは、これからも大切に守って行かなければなりません。  2000年4月記
                                       

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