西暦2000年7月16日の皆既月食から、太陽までのおよその距離と太陽の大きさを求める(続) menuへ
今回の皆既月食は、月が地球の影の中心を通る際のずれが、数パーセント程度です。ほとんど太陽、地球、月が1直線に並んだと言って良いでしょう。この3つの天体の関係を探る上で貴重な天体ショーです。ここでは、観測のデータを小数第4位まで扱うことによって角度の精度を上げて計算してみます。
2000.7.16皆既月食のデータ
食始め 皆既始め 食の最大 皆既終わり 食終わり 20:57 22:01.8 22:55.5 23:49.2 24:54.1
このように食分の大きい月食は、1953年7月26日(1.86)に次ぎ、47年ぶりです。
赤経の衝 22h 55m 50s
地球からみて月が太陽と赤径180度差の位置にくる時刻
食の最大の食分 1.77
月が最も本影に隠れた時刻、皆既月食での最大の食分は、
月の中心と地球の影の中心が接近する程、数値が大きくなる
参考 皆既月食で月が完全に地球の本影に隠されても、まだ、赤銅色の薄暗い月が見えます。これは、地球の大気圏を通過しようとして太陽光が空気層によって屈折、散乱され、弱められて月に当たっているからです。従って地球をかすめて直進し月に到達する太陽光は、光の散乱を起こす高度80km位までの成層圏のさらにその上を通過していくわけです。
参考 今回の皆既月食では、月が地球の本影の円のほぼ中心を通過したので有効なデータがとれました。月が皆既月食中に動いた距離は、地球の本影円の直径分にほぼ相当します。それで、本影は、月の直径の何倍かを求めると、(月の本影通過時間)÷(月自身が隠れる時間)=2.6574....倍
となりますが、皆既月食なら、いつもこのように2.6倍以上になるとは、限りません。右図のように月が本影の円のへりによって通過してしまえば、この数値は下がってしまいます。
では、詳しいデータの「皆既月食の詳細図」で考えてみましょう。
上図でみかけの太陽の大きさ(視直径 )は、約0.5245度
次に太陽から見たと仮定して
地球のみかけの大きさは、上図から(視直径)は、約0.0049度
これから 0.5245÷0.0049=約107倍 太陽の大きさを地球の約107倍とし
地球の実直径1万2,756kmとして
12,756×107=136万4,892km
およその太陽の大きさ約136万km(正しくは、139.2万km)
次に太陽-地球間の距離を求めます。
これは太陽を中心とする地球の公転半径rを求めることですから、
円周を求める公式より、 πを3.14として
地球の実直径=2πr×地球の視直径÷360 の式を変形して
距離r=実直径÷視直径×360÷2π
地球の実直径1万2,756kmと視直径0.0049をこれ代入して
r=12,756km÷0.0049×360÷6.28=1億49,23万1,769km
よって 太陽ー地球間は、約1億5千万km
(正しくは平均1億4,959万km)
このように皆既月食のデーターを手がかりにして、かなり正確に太陽の大きさと、太陽ー地球間の距離の両方を同時に求めることができます。
参考 この皆既月食は、月が最遠距離40万6,200km辺りで起き、その時の月の速度は、月の直径を3,476kmとして3,476÷64.9=53.5km/分 約0.9km/秒です。
参考 皆既月食の理論上の最長継続時間は、1時間47分17秒と計算されています。今回の継続時間は、1時間47分であり、何と17秒しか違いません。
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