ネタバレ注意……とらいあんぐるハート2をまだ楽しんでいらっしゃらない方、ネタバレ覚悟の上お読みください。「そんなのいやぁ〜」という方は先にゲームを終わらせてからお読みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”天国からのメール”

 

 

梅雨の6月の終わりを告げるかのように、青い空が広がっている。

久しぶりの晴天の週末に寮の皆もそれぞれに外へと出かけていった。

そして、その寮の管理人である、この俺はといえば・・・・・・

 

「いや〜、ほんといい天気ですね。久しぶりに外に布団が干せるし、洗濯物もよく乾くし。」

「本当に。いい気持ちです。」

 

ベランダで十六夜さんと共に日向ぼっこをしていた。

なんせ、ここんとこずっと雨が降ったり曇ったりで、まともに外に洗濯物を干せたことがなかったのだ。今日と言う日は俺にとっては絶好の日和だった。

 

「皆様も嬉しそうでしたね。」

「そうですね。なんてったって、あのめんどくさがりの真雪さんが昼から外に出かけていくんですから。」

「ふふっ、薫も今日は友人の方と買い物に行くそうですよ。」

「えぇ、瞳と駅前のデパートに行くとか言ってましたね。愛さんとゆうひは図書館に、真雪さんは知佳とリスティとみなみちゃんをつれて買い物に。美緒は望ちゃんのうちに行くとか。」

「耕介様はどこかに行かれないのですか?」

「そうですね、そういえば夕飯の買出しにでないと材料があんまりなかったような・・・」

「まぁ、耕介様らしいです・・・」

 

流れていく雲を見上げながら、のんびりと十六夜さんと話をしながら時間が過ぎていく。

今日はほんとにいい日だ、と思っていた。が、やっぱり騒動はやってくるものなんだ。

 

ダダダダダダダダダダダダ

「こうすけ、こうすけ〜」

 

ほらきた。

 

「お帰り、美緒。」

「ただいまなのだ。それよりも一緒にきてほしいのだ。」

「なんだ、一体?帰ってきてそうそう慌しい奴だな?おやつなら冷蔵庫にプリンが入ってるぞ。」

「それは後でもらうのだ。望が話したいことがあるんだって。早くくるのだ。」

 

俺の手をつかんで引っ張っていく美緒に、ついていく俺と十六夜さん。

そして、玄関には何故か暗いと言うか、怯えているような表情の望ちゃんがいた。

 

「や、いらっしゃい、望ちゃん。ほら、玄関に立ってないで上がった上がった。」

「あ、こ、こんにちわ。・・・お邪魔します。」

 

あいかわらず礼儀正しい子だ。どうやってこの美緒と友達になったんだろう?

靴をそろえて上がった望ちゃんをリビングに通すと、俺は冷蔵庫から午前中に作っておいたおやつのプリンとジュースを出して、美緒と望ちゃんの前に置いた。

そして、俺自身もジュースの入ったコップを持って、二人の前に座る。

 

「で、話があるって聞いたけど、俺に用なのかな?」

「あ、あの、実は・・・」

 

なにやら言いづらそうな様子である。もともとあまり活発な方でない子であるが、いつもとだいぶ様子が違う。

・・・・それにしても、美緒、おまえ、友達が困ってるのに横で一心不乱にプリンを食ってるなよ・・・

そのとき、横に座っていた十六夜さんが俺の腕に触れた。

 

「ん?どうしたの?十六夜さん。」

「望さまのあたりから、妙な霊気が漂っているように感じられるのですが。望様、何か心当たりがおありですか?」

「本当かい?」

 

俺は十六夜さんの言葉に望ちゃんのほうをうかがった。この前わかったのだが、どうやら俺にも強い霊力があるらしい。

すると、ちょっとびくっとした後、望ちゃんは持っていたカバンから、何か人形のようなものを取り出した。

灰色で体中にとげとげのある、手にピンクの手紙を持った・・・、それはどうみてもハリネズミである。そう、最近某会社のインターネットに加入すると抽選で当たるというメールを読んでくれる人形だ。

確かに、細長い糸のような霊気が立ち上っているように視える。

 

「あの、これ、なんです・・・。」

「うん、話してみてくれないかな?」

 

話し出した望ちゃんの話を聞くとこういうことだった。

 

最近別のプロバイダーに加入し直した際に試しに贈ってみたこのハリネズミの抽選に見事に当たってみたはいいものの、望ちゃんの持っているパソコン(”アイナック“というらしい)には接続できないものだった。それでもかわいいので飾っておくだけ飾っておこうとパソコンの横に置いておいたらしい。そして、夜、突然このハリネズミがしゃべりだしたと言うのだ。

 

「・・・気味が悪くて、それで、薫さんに相談してみようと思って・・・」

「うーん、そうだね。とりあえず、これ預かってもいいかい?薫が帰ってきたら俺から話しておくから。」

「はい、お願いします。」

「よぉーし、それじゃ、この話はこれでおしまい。美緒と遊んできな。」

「はい!」

 

 

 

その夜。

いつもよりちょっと豪勢な夕食をいつも通りさわがしく過ごした後、早速問題の人形を持ち出してきて、会議が始まった。

 

「へぇ〜、こんなんがねぇ。故障してるだけとかじゃねーのー。」

「でも、確かに霊気が感じられます。」

「でも、しゃべるだけなんだろ。たいして害はなさそうだけど。」

「そげん事言って、なんかあったらどげんするとですか!」

 

相変わらずの二人。ちなみに他の皆はといえば、

 

「あうー、こわいの、やですー。」

「大丈夫だよ、みなみちゃん。薫さんと十六夜さんがいるし。」

「みなみはおくびょうものなのだ。」

「はやー、そんなこともあるんですねぇ。」

「なんや、おもしろそうやな。」

「そう?」

 

といった感じである。

 

「なぁなぁ、これ、知佳ちゃんのぱそこんにはつかへんの?」

「めびちゃんの方なら大丈夫だと思うよ。」

「じゃ、今夜試してみぃひん?明日も休みやしちょうどええやん。」

「お、ゆうひ、いいことゆうねぇ。」

「仁村さん!」

「なんだよ、バ神崎。どういうことが起こるのか見てみりゃ、対応も考えられるだろが!」

「でも!」

「まあまあ。薫、真雪さまの言うことも一理ありますよ。」

「そんじゃ、決まりだ。全員参加な。」

「いややー、怖いの嫌いやー」

「だめ」

 

結局なんだかんだ言っているうちにとりあえず何が起きるか見てみようと言う意見で落ち着いたようだ。

若干一名パニックっている人がいるようだが・・・

 

 

さて、リビングに知佳がノートパソコン”めびちゃん”を持ってきて、さくさくと人形をパソコンに接続する準備を整えていく。

さすが、ハイテク娘。

 

「ソフトもインストールしたし、ちょっとどんな感じか試してみよっか。」

 

そういうと、なにやらカチャカチャと操作する。すると

 

『真雪サン。編集サンカラ、メールガキテルヨ。 

原稿締メ切リハヤクナリマシタ。ヨロシク。』

 

「「「「「おぉ!」」」」」 「なんだって!」

 

ハリネズミがしゃべりだした。みんな興味津々の顔で見つめている。あ、真雪さんの顔には縦線が入ってる・・・

 

「へぇ、おもしろいやん。で、耕介くん。実際、望ちゃんはなんて言ってたん?」

「天国のおばあちゃんからメールがきてるって、いわれたらしい。」

「ふーん。なんや、ほのぼのしてるな?」

「そうか?しゃべるはずの無いもんがしゃべったら、気味悪いとおもうが。」

「でも、地獄から、とかじゃ、なかったんやろ。」

「・・・・そういう問題か?ま、とにかく、どうする?薫」

「様子を見るしかないと思います。あ、知佳ちゃん、それパソコンからはずしといて。」

「え、いいの?」

「一応望ちゃんのとこではつないでなかったらしいから。同じ状況を作っといた方がよかと思う。」

「わかった。」

 

それからは、みんな、リビングで思い思いのことを始めた。

相変わらず怖がっているみなみちゃんのそばには、知佳がついているし、リスティと美緒は一緒にゲームをやっている。

真雪さんとゆうひと愛さんは話をしているし、薫と十六夜さんも様子をうかがいつつ、その話に参加している。

ちなみに俺は軽い夜食を作らされている。

そういえば、こういう一部屋に集まってお泊り会みたいなのは始めてかもな。結構楽しいかも・・・。

みんなの様子を見ながら、俺はそんなことを考えていた。

 

 

 

さて、夜も1時過ぎると、年少組みを起こしておくのはと、愛さんのお達しでリビングに布団を引いて、明かりを落とした。

最初はハイになっていた美緒も今はもうすっかり熟睡である。

結局起きているのは、俺、薫、十六夜さん、真雪さん、愛さんだけである。あんだけ騒いでたゆうひまで寝てやがる。

 

「ふぅ、なにもおきませんねぇ。」

「うーん、今日ははずれかな?」

「確かにそうかもしれんですね。」

「ちぇ、おもしろくねえの。」

 

さすがに3時近くなってくると今日は駄目だろうという雰囲気が強くなってきた。

そして、何気なく愛さんがそれに触れたとき・・・

 

『愛サン、耕介サン。天国ノオジイチャントオ父サントオ母サンカラ、メールガキテルヨ。』

 

「何!」

「愛さん!下がって!」

 

薫と十六夜さんが身構え、俺は愛さんを引き寄せる。

そして、メッセージが流れ始めた。

 

『愛、結婚オメデトウ。

ワタシタチハ貴方ヲ育テルコトハ出来ナカッタケレド、イツデモソバデ貴方達ノ幸セヲ見守ッテイマス。

耕介サン、娘ヲヨロシクオ願イシマス。

オメデトウ、愛、耕介。幸セニナ。』

 

 

「 ! これ・・・。」

「愛さん・・・」

「耕介さん、これ、お父さんが、お母さんが・・・、おじいちゃん・・・」

 

唖然としていた愛さんの瞳が次第に潤んでいく。

 

「・・・うん、きっとそうだよ・・・。きっと、みんなそばで見守ってくれているんだ。3人のためにも幸せになろうよ、ね。」

「・・・はい、・・はい。」

 

思いがけない出来事にもかかわらず、何故かこれは真実だと確信できて、俺は愛さんを引き寄せるとぎゅっと抱きしめていた。

愛さんも嬉しそうに微笑むと俺に身を預けてくれる。

『 追伸  孫ハ女ノ子ヲ期待シテルゾ。』

 

って、おい!・・・・あ、愛さん真っ赤だ。・・・俺もか・・・。

 

「おい、神崎、こりゃ一体どうなってるんだ。」

「・・・たぶんですが・・・、その前にそのビデオカメラ下ろしたほうがよかとですよ。」

「ふん!これもあたしの”さざなみ寮、愛と耕介の面白・恥ずかしライブラリィ”に加えるんだ。」

「まったく、この人は・・・」

 

 

 

結局、薫と十六夜さんの説明によると、感じられた霊気はいわゆる電話線のようなものでそこにそばにいるモノのメッセージが流れ込んだのだろうと言うことだった。

今回、愛さんが触れたことで愛さんの両親や祖父のメッセージが届いたのだろう。

ただ、必ずしもいいものだけが寄ってくるわけでもなさそうなので、封印して神崎の実家に送ることに決められた。

 

 

 

そして・・・

 

「へえ、こんなことがあったんだぁ」

「うちも、寝るんじゃなかったわぁ」

 

次の日、しっかりと真雪ビデオコレクションは公開されていた・・・・。

うぅ・・・、俺達のプライバシィは・・・・

 

「そんなものはない。」(By 真雪)

 

 


 

後書きのようなもの

 

某会社のあのネズミをみて、思いついたまま書いてみました。

始めは、もっと違う方向に進むはずだったのですが、何故か話はこっちの方向に・・・。

なぜだろう?

ちなみに筆者はこのネズミは持ってませんので、あしからず。

一応、愛さんシナリオ後のお話です。

それにしても、この二人は結婚してもこの呼び方のような気がしてます。

皆さんはどう思いますか?

written by 2000.07.01 Ver.1

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