ねたばれ注意報発令。

恋姫をクリアされていなくて、これからやるから見たくない方はお引き返しください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋姫SS

そんなわけで・・・


 

神社へと続く階段坂。

朝もはよからこの長い階段を上っているのは俺、こと佐々松小十郎だ。

ま、どこにでもいる普通の学生で、壷や印鑑を売りつけたりしないし、英会話テープも扱わない、自他共に認めるナイスガイだ。

(っていうか、能天気で、ちゃらんぽらんで、優柔不断なんだよね。お兄ちゃんは。)

ん、なんか聞こえたような………、気のせいか?

とにかく、俺は今、まだ朝の澄み切ったちょっと肌寒く感じるくらいの早朝の空気のなかを神社に向かっているわけだ。

何故早朝かといえば………、田舎の朝は早いからだ

決して、あんずに、

「明日の朝は、あんずが愛のこもった朝食をつくってあげるからね。」

などと言われて逃げてきたわけではない。

ましてや、朱雀が、

「あ、あんずや那美ばかりずるいぞ。ボクも手伝うからな。」

などと恐ろしいことをノタマッタなどという事は。

(ふ〜ん…、そうなんだ…)

ゾクゾクッ!

な、なんだ、風邪でもひいたか……。

と、とにかく、俺は最近疑問に思ってたことをじいさんに聞くために神社を訪れているわけだ。

なんせ考えてるより聞いた方が早いからな。

……っと、やっと着いた。

上から見ると結構高いな。

そういえば、朱雀にここから突き落とされたんだよな……(汗)。

よく生きてたな、俺………。

はぁ、ま、ここに来てからこれまでいろんなことがあったからな……。

幼馴染四人との再会、で、その四人と…………………でへへへ……………………

はっ!あぶね、自分の世界にはまるところだったぜ。

その後は、四人の本当の姿を知って、人間の世界とは別の世界、『隠れ里』に行って…。

四人の親達、『妖怪』の親玉とやりあって…。それがぜ〜んぶ俺のための、っていうか仕組まれたお芝居で、今では四人の妻帯者……。

ふっ、ぜって〜クラスの連中は信じねぇだろうなぁ。

ていうか、俺も信じたくねぇよ。いや、四人に不満があるわけじゃないが、まだ学生だし、これからの人生のパラダイスが………。

やはりここは、疑問解消して、脱出を…………。

 

「なんじゃ、小十郎ではないか。」

「お、じいさん、おはようさん。」

「珍しいのぉ、こんな朝早く。すずめならおぬしのところに行っておるはずだが。」

「あぁ、いや、じいさんに聞きたいことがあってさ。」

「なんじゃ、いってみぃ。」

あいかわらず、飄々としたじいさんだな。ん、じいさんか…。

そういえば、もう一つ謎があったな。いい機会だ、聞いてみるか。

「あのさ、俺のばあちゃんのことなんだけど。」

「ん?」

「ばあちゃんって、本当に人間か?実はじいさんたちの仲間だったりしないか?」

なんつっても、何故か俺の行動を逐一把握してたり、昔は熊、今は猪と素手でやりあえるみたいだし。

「唐突じゃのう…、じゃが、…………………本当に知りたいか?」

ん、庭を掃いてたじいさんの手が止まってるぞ。なんか、額に一粒汗が流れているような……………。

「あ、いや、その。」

「………………世の中には知らん方がいいこともあるぞ。」

「………………そんなにやばいのか?」

なんかじいさん、すっごく遠い目をしてるぞ。

「……………………フッ……日々命の綱渡り……、青春じゃった…………………………」

 

ヒュオォォ〜〜〜〜〜〜〜

 

やばやばいぜったいやばい!俺の本能が話題を変えろと強く訴えている!

 

「いや、実は、あの、俺の記憶についてなんだけどさ。」

さりげなく話題を変える俺。

「……………………チッ……………なんじゃ」

「………おい、今の間と舌打ちはなんだ?」

「あ、ワシには何も聞こえんかったがのぉ。」

「…ま、とにかく、俺の記憶のことについて聞きたいんだよ。じいさんが言ったとおり、俺は今まで皆のこともあの隠れ里のことも忘れてたし、こっちに来ようとするとなんでかいろいろと用事に邪魔されて来られなかったんだ。けど今年は特に何も起こることはなかったし、皆のことも夢に見たり、ふと思い出せたりするようになった。で、じいさんが俺の記憶を封じたんだったら、こうなった理由もわかるかと思ってな。」

「ふむ、確かにの。ワシも疑問には思っておったが、この前の騒動でなんとなくじゃが思い当たることがあるにはある。」

「さすが、じいさん。教えてくれ。」

「ふむ、これは話すだけよりも実際思い出しながらの方が良いじゃろう。よしよし、ついてこい、小十郎。」

そういうと、本堂の方に入っていく。

後についていき、たどり着いた部屋は、あの隠れ里への入り口となったでかい鏡のある部屋だった。

「?。なんだ、隠れ里に行くのか?」

「いや、これの表面に映すんじゃよ。ま、見ておれ。」

じいさんが鏡に近づいていきその表面を羽箒みたいなのでひとなですると、まるで水面に水滴を落としたかのように中心から波紋か広がって何かが浮かび上がってきた。

「これはおぬしが生まれてすぐの頃のことじゃな…………」

 

浮かび上がったのは…、氷の部屋。2人の女性。一人は氷部の長、静氷さんと……

(あれがおぬしの母じゃよ。)

そう、どこか見覚えがある長い黒髪の着物の女性。

「すみません、静氷様。私も体がこんなに弱くなければ母乳を飲ますことも出来るのでしょうが…」

「いいのですよ。私の娘まゆきも生まれたばかりですから、一人も二人も同じようなものです。それに、私たちは家族のようなものです。遠慮はいりませんよ。」

「ありがとうございます、静氷様。」

そんななか、どこからともなく泣き声が聞こえてきた。

「あらあら、まゆきが泣いてるみたいね。」

「うちの小十郎がなにかしたのかしら?」

二人が子供を寝かしていた部屋の方に移動していく。

そしてそこには…………

「オンギャァ、オンギャァ…」

「あらあらあらあら。」

「こ、こじゅうろう!?」

…………見事に氷の氷像と化した小十郎が転がっていた。

 

「………おひ(汗)」

「この後、おぬしの母殿が倒れられるわ、掛け付けた竜王の奴が氷を溶かそうと火であぶって危うくローストしそうになったりと大騒ぎじゃった…」

 

次に映ったのは、どうやらばあちゃんの家の縁側のらしい風景。

そこにシートをひいて座っているのは、幼い頃の俺とあんずだ。

「は〜い、あなた。ご飯ができましたよ。」

どうやらおままごとなどしているようだ。

「うむ、ご苦労。」

渡された茶碗には本当にご飯のようなものが入っている。

「ほんとーに食べれるんだからね。召し上がれ♪」

「え、で、でも、お米じゃないよ、これ。」

「…お兄ちゃん、あんず、一生懸命作ったのに…食べてくれないんだ………グスッ…」

「あ、た、食べる、食べるよ、うん、い、いただきます……」

おそるおそるその白いポロポロしたものを口に運ぶ小さな俺。

プチ、プチプチプチ

「う、うぐ………あ、あんずちゃん、…これ、なに?」

「うじむしのいちや干し!おいしいでしょ?あんずの愛情たっぷりなんだから♪」

 

「………………(汗汗)」

「おぬしはこの後腹痛で寝込んでの。おぬしの両親は慌ててワシのところに飛び込んできおって、ムシムシいうから、ワシも慌てて虫下しをわたしてしもうて、そりゃぁもう大騒ぎじゃった……」

 

また場面が映り変わる。

今度は…、あの丘の上か。

一緒にいるのは……朱雀だな。………いやな予感がする…。

「なぁ、小十郎!ボク、また新しい技を覚えたんだ。」

「え、そ、そうなんだ。俺、用事思い出したから…………」

「あ、小十郎、この前見たいっていってたよね。ほんとはおじいちゃんに見せちゃ駄目って言われてるんだけど、小十郎はボクのお、おムコさんになるんだから、特別教えてあげるよ!」

「え、あの、いや、すずめちゃん……」

「いくよ!

鞍馬流!空中大回転!モズ落とし〜!」

「うわぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!」

 

「あうあうあうあう(汗汗汗)」

「…この後、すずめの奴が泣きながらボロボロになったおぬしを引きずって帰ってきての。おぬしの母殿が卒倒するわ、居合わせた静氷殿が動揺して仙指整体術を誤って、危うく全身ゲルになるかけるわで、天地がひっくり返るほどの大騒ぎじゃった………

 

さらに場面が変わる。

そこは、なんだか豪華な一室だ。映っているのは、子供の頃の俺と那美だな。

俺が猫を抱いてなでてるところだ。

「小十郎、その猫は?」

「うん、ミイだよ。かわいいでしょ。」

「……メス、ですか。………えぇ、かわいいですね。……ちょっと失礼しますね。」

那美が部屋を出て行ったようだ。けど、なんか目がやばかったような…。まさか、相手は猫だぞ。そんなわけが………

「お待たせしました。私、小十郎のためにクッキーを焼いてみたんです。どうぞ、食べてみてください。」

「うわぁ、おいしそうだね。あっ、ミイ、どこ行くんだよ。」

「まあまあ、そのうち帰っていますよ。それより、はい、あ〜ん♪」

「あ、えっと、あ、あ〜ん。」

パクッ、ムシャムシャ、ゴクン

………………

「…う、うぐ……、こ…れ………は?」

「あら、トリカブトのクッキーです。大丈夫。すぐに私も後から参りますから。」

 

「………うぐぅ(汗汗汗汗)」

「その後おぬしが泡を吹いてひっくり返る大きな音に、その場に居合わせた竜王と奈美貴殿、おぬしの母殿が駆けつけての。竜王が慌てて那美を抑えるわ、おぬしの母殿はひきつけを起こすわ、奈美貴殿がなんとかおぬしを蘇生させたが、すわ、隠れ里崩壊か?ぐらいの大騒動じゃった…」

 

「ま、こんな騒動が一週間に一人一回は起きておったな。」

「………俺、よく生きてこれたな。」

「そこじゃよ。おぬしは小さい頃からこの環境で育ったおかげで、妖術、毒物、あらゆる傷害に対して耐性が普通の人間の数十倍になっておるんじゃろう。生命力は妖怪並じゃよ。そうでなくてはわしら相手に十数戦もして平然とはしておれまい。ワシの術が完全でなかったのも、もちろんすずめたちとした約束の儀式の所為もあるじゃろうが、どちらかといえばおぬしのその体質のせいじゃろうて。」

「そうか……」

確かにあんなことがあった気も・・・。

それよりも、もしかして………

「じいさん。」

「なんじゃ?」

「まさか……、母さんの亡くなった原因は………心労……なんてことは…」

「…………」

ツツゥー

じじいの額に冷や汗ひとつ…

「親父が皆に説得されてもここを出てくことにこだわったのも……」

「…………………………」

ダラダラダラダラダラ……………

じじいの顔中冷や汗だらけ……

 

「おひ。」

「ま、なんじゃな、昔のことだしのぉ」

「ふむ、昔のことか。」

「そうじゃ。」

「そうか。」

…………………

「「はっはっはっはっはっはっはっはっは」」

 

やっぱり脱出だ!逃げる!逃げ切れ!逃げ切ろう!

「というわけで、帰るぞ!さらばだ!」

「どこへですか?小十郎?」

「おい!部屋にまとめてあったこの荷物はなんだ!小十郎!」

「まさか、あんずを置いてったりしないしないよね?お兄ちゃん。」

「……………小十郎様…………」

「にょほろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!いつの間に!!」

 

いつの間にか、背後に四人が勢ぞろい。

那美は朝日に煌めく包丁を掲げ…

朱雀は目を紅く輝かせ…

あんずは頬をふくらませ…

まゆきは凶悪に目を潤ませている…

「あ、み、皆……、なんでここに…」

「あんずが朝早く出かけるお兄ちゃんを見つけて、皆に教えてあげたんだよ。」

ま、まさか、最初に聞こえてた空耳は…

「さ、戻りましょうね。小十郎。」

「いろいろ聞かせてもらわなくちゃぁなぁ〜。」

両脇をがっちりホールドする那美と朱雀。

ギュッッと服のすそを掴むまゆき。

先頭をスキップするあんず。

ひきづられていく俺…。

 

ドナドナド〜ナ ド〜ナ♪  売られていくよ〜 ………

 

「…い〜や〜だ〜〜、た〜す〜け〜て〜く〜れ〜〜〜…」

 

 

「…ふむ、平和じゃのう…」

 

 

(END?)

 


後書きのようなもの

 

この恋姫というゲーム。私はWINDOWS版の方をやりました。

クリア時間はそうかかりませんが、さすがエルフ。シナリオはとてもVeryGood。

私としては、まゆきの母親、静氷が好きです。あのお茶目ぶりが…

四人の中では那美が好きです。

それにしても、彼女を見てると、某葉っぱレーベルの鬼長女を思い出すのは私だけでしょうか?

それでは、また。

written by 2000.10.29 Ver.1

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