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Cooking 01 : 早苗さんのショコラケーキ

 

空は青空。冬の朝の冷たい空気も、日課となったジョギングで火照った肌には心地のよいものである。

日曜日ということもあって、夏休みも終わり一応学校へ行かなければならない耕治に合わせて早朝に行われるようになった早苗とのジョギングも、いつもよりちょっと遅めの時間であった。

 

「ふぅ。今日もよく走ったねぇ。」

 

いつも通り早苗の家の前まで走り終え、体を休めている。

 

「そうですね。最近はなんかもうちょっと走れそうなぐらい余裕が出てきましたよね。」

「ほんと、ほんと。あの倉庫整理も最近楽に思えるぐらいになったのも、きっとこのジョギングのおかげだろうな。つまりは、早苗さんのおかげかな。感謝、感謝。」

「え、あ、そんなことないですよ。もう、耕治さんったら。」

「あはは。」

 

にこやかに早苗をのぞきこみつつ、手を合わせておがむ真似をする耕治に、赤くなる早苗。

日曜の住宅街、しかも朝なので、周りに人は見当たらないが、独身サラリーマンあたりが目撃したなら泣いて逃げ出す光景である。

 

「そういえば、耕治さん、今日はお休みなんですよね。」

「ん、あぁ、この前神楽坂がどうしても仕事出られないから交代して欲しいって言われてね。だから、今日は俺の代わりに神楽坂が入ってるはずだ。」

「それじゃ、今日、なんか予定が入ってますか?」

「んにゃ、なんもないけど。そういえば、早苗さんもお休みだっけ。」

「はい!それで・・・」

「・・・それで?」

 

また、顔を赤くしつつもじもじしている早苗を前に、やっぱり早苗さんってかわいいなぁ、などと浸ってしまう耕治。

しつこいようだが、独身サラリーマンあたりが目撃したなら泣いて逃げ出す光景である。

 

「それで、あの、もしお邪魔じゃなかったら、お昼過ぎ頃お部屋にうかがってもよろしいでしょうか?」

「へ、・・・それって、早苗さんが、俺の部屋に、ってこと?」

「そうですけど・・・、やっぱり駄目でしょうか?」

「いや!そんなことないです!早苗さんなら大歓迎だよ。」

 

ちょっと見上げる感じで、うるうるした瞳で早苗に見つめられ、慌ててパタパタ両手を振りつつ答える。

 

「よかった。それじゃ、お昼過ぎ頃おうかがいしますね。」

「わかった。けど、うちに来てなにするの?」

「それは・・・」

「それは?」

「ないしょ、です。」

「・・・さいでっか。」

「それじゃあ、忘れないでくださいね!」

 

にこにこと上機嫌で家の中に入っていく早苗を見送りつつ、耕治は今の自分の部屋の状況を思い出し、気合を入れ直した。

ここ連日、”耕治の二号店お帰りなさいパーティー”と称してやってくる葵の溜まったストレス発散攻撃を受けて、耕治の部屋はビールの空き缶とおつまみに占領されつつあったのである。

 

「うしっ!そうと決まったら、部屋を掃除しないとな。ゴミだらけだもんなぁ。」

 

 

そんな去りつつある後姿を二階の窓から眺めつつ一言。

「若いって、いいわねぇ。」

最近綺麗になったと近所で評判の娘さんを持つお母さんのコメントでした。

 

 

 

 

 

 

冬だから一日が早い、というわけでもないが、とにかくもう昼過ぎである。

とりあえず空き缶の入ったゴミ袋3つとつまみの袋や残骸の入ったゴミ袋1つを共同のゴミ捨て場に

持っていき、やっと一息つけたところであった。

 

「ふぅ、もうこんな時間かぁ。もうそろそろ来る頃かな。それにしても、なんだろうなぁ。」

 

早苗さんが訪ねてくる用事をとんと思いつかず、腕を組んでう〜んと悩む。

 

「日野森だったら、買い物の誘いとかだろうし、美奈ちゃんなら勉強とかだろうし。つかさちゃんなら、ゲーセンだな。潤とかぴあちゃんなら、遊園地だろうな。そういえば、葵さんとしばらくパチンコに行ったりしてないなぁ。涼子さんとだと、部屋で紅茶とか飲んでそうだし、留美さんなら、車で連れ出されそうだなぁ・・・・」

 

・・・なんて羨ましい奴だ。

と、まあ、最初に考え込んだ問題からだいぶ外れた方に進み始めたところで玄関のチャイムが鳴った。

 

「はいはいっと。」

 

ガチャ、っとドアをあけた瞬間、耕治の足に抱きつく小さな影!

 

「うあっ!・・・って、かおるちゃん!?」

「えへへ、やっほ〜♪こーじおにいちゃん。」

「お邪魔しますね、耕治さん。」

「あ、早苗さん、これは、一体?」

 

足にくっついているかおるに困惑した表情で顔をあげると、早苗がなにやらいろいろ入ってそうなビニール袋とトートバックを下げて立っていた。

とりあえず、二人に部屋に上がって適当に座ってもらい、飲み物を用意する。

耕治が早苗の前に座り落ち着いたところで、早苗が事情を説明し始めた。

 

「今日、春恵さんに頼まれて、かおるちゃんを預かることになっていたんです。それで、たまたま、今日耕治さんがお休みだって聞いたものですから、じゃあ、かおるちゃんを連れていったら喜んでくれるだろうなと思って。・・・ご迷惑でしたか?」

「え、いや、ぜんぜんかまわないけど。もしかして、最近よく預かってるの?」

「えぇ。比較的、家が近いですし、母も私も子供の世話をするの、嫌いじゃないですから。母も春恵さんと仲良くなったみたいですし。」

「そっか・・・。春恵さんも近所に相談できる人がいたほうがいいだろうし、早苗さんとこなら安心だよね.」

「ふふっ。ありがとうございます。」

 

話題のかおるの方に目をやると、かおるは一生懸命耕治の渡したオレンジジュースを飲んでいる。そんな様子にお互い顔を見合わせると、くすっと笑みをもらす。

 

「それで、これからどうするの?なんか、一杯持ってきてるみたいだけど?」

 

脇においてある早苗の荷物をチラッとみて、耕治が声をかける。

早苗はそれににこやかに答えた。

 

「あ、これ、今日の材料です。」

「材料?」

「はい!耕治さん、前にかおるちゃんとケーキを食べに行くって約束したそうですね。」

「そういえば、この前のイベントの最後の日にしたっけなぁ。あの大騒ぎで忘れてた。」

「駄目ですよ。女の子との約束をわすれちゃ。」

「そうだぞ〜♪」

 

ジュースを飲み終わったかおるが、一緒にツッコミをいれる。

 

「うっ、面目無い。」

 

頭をかきつつ謝る耕治。

 

「とにかく、三人で食べに行こうかとも思ったんですけど、せっかくだから作って食べるのもいいかなと思ったものですから。」

「作るって、ここで?」

「はい。みんなで作ると楽しいですよ。」

「けーき、けーき♪」

 

かおるはすっかりご機嫌である。

 

「電子レンジ、ありますよね。」

「あ、うん。ほらそこ。それでいい?」

「あ、・・・はい。オーブン機能がついてますから大丈夫です。」

「う〜ん・・・。ケーキ作りか・・・。初めてだけど、俺にできるのかな?」

「大丈夫ですよ。かおるちゃんもいますし、比較的簡単なショコラケーキを作るつもりですから。」

「しょこらけ〜き〜♪」

 

すっかりやる気になったかおる。にこやかに笑っている早苗を見て、そういえば何かを作ってる早苗さんって見るのは初めてだよなぁ、などと思い、なんとなくやる気になってきた耕治である。

 

「・・・そうだね。それじゃ、いっちょ作りますか!」

「お〜、つくるぞ〜♪」

「はい!」

 

そうと決まったら準備である。といっても、まったく作ったことの無い耕治とお子様かおるはとりあえず見てるだけ。早苗が着々と準備を整えていく。

これも用意してきたのであろう。バックからエプロンを3つ(1つはちゃんとお子様用の小さいやつ)を取り出す。

 

「はい、これ、つけてくださいね。」

「うさぎさん♪」

「・・・・・・・・・・」

 

ちなみに、かおるのは言葉通りウサギのアップリケがついている。残りの二つはおそろいで、ふちにフリフリがついていたりする。

 

「早苗さん・・・」

「服、よごれちゃうと困りますから。ちゃんとつけてくださいね。」

「・・・・はい・・・・」

 

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さて、ここで早苗さんのクッキング・タ〜イム!

では、早苗先生、今日の材料を教えてください。

 

「ええっと、今日はショコラケーキを作ります。直径18センチの丸型1個分です。

材料は、

スイートチョコレート、100グラム。これは細かく刻みます。

あとは、無塩バター、60グラム。

グラニュー糖、30グラム。

卵黄、3個分。

ラム酒、15cc。

卵白、4個分とグラニュー糖、60グラム。これは、途中で混ぜ込むメレンゲの分です。

薄力粉、40グラム。

ココア、20グラム。

後は、飾り用の粉砂糖を用意しておいてください。

あ、丸型に使うバターと強力粉も用意しといてくださいね。

これで、全部です。」

 

ありがとうございました。

それでは、作業行程に移りましょう。

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「えっと、耕治さん、この丸型の内側全体にバターを塗って、この強力粉をその上からふりかけておいてください。」

 

早苗はバックの中から直径が耕治の手をひろげたぐらいの洗面器のような丸型を取り出すと、バターと強力粉と一緒に耕治に渡す。

 

「終わったら、余分な粉は落として、冷蔵庫の中に入れといてください。」

「さなえおねえちゃん、かおるは〜?」

「かおるちゃんはこの上で、このふるいをポンポンって軽くたたいててね。中身がなくなったら教えてね。」

 

台所から深めのお皿を持ってきて、上にろう紙をひいてかおるの前に置くと、粉ふるい器に薄力粉とココアを合わせて入れてかおるに持たせ、ポンポンとふるいをかけて見せる。

 

「わかった〜。」

 

さっそく、楽しそうに作業をはじめるかおる。

次の作業の用意をはじめる早苗に耕治から声がかかる。

 

「こっち、できたよ。」

「じゃあ、次はこっちをお願いします。このバターをクリーム状になるまで混ぜて、クリーム状になったらこのグラニュー糖を入れて、今度は白っぽくなるまで混ぜてください。」

「おおよ!」

 

耕治が、材料の入ったボールと泡だて器を受け取り、混ぜ込み始めた横で、早苗はオーブンを170℃に設定してスイッチを入れる。

 

「それは?」

「こうやって、先に温めておくんです。」

「ふぅ〜ん」

「おねいちゃん、おわった〜。」

「はいはい。・・・うん、よくできました。」

「えへへ〜。」

 

こんもり、紙の上に粉の山を作り終えたかおるの頭をなでる早苗。ほめられて嬉しそうなかおる。なんとも和やかな光景である。

が、耕治はバターをクリーム状にするのに夢中であったりする。

 

「それじゃ、今度はチョコレートを溶かしましょう。かおるちゃんはちょっと待っててね。」

「あい。」

 

耐熱ガラスのボールに50℃ぐらいのお湯をいれると、その上に刻んだチョコレートを入れたカネのボールを重ねる。つまり、湯せんというやつである。早苗は、へらをかおるに渡すとそれらをかおるの前に置き、後ろからかおるを抱え込むように立つとボールを支える。ちなみにかおるは台所の作業台の前に椅子を持ってきてその上に立った状態である。

 

「じゃあ、これを溶けるまでまぜまぜしてね。」

「あ〜い。」

 

うーん。ほんとに微笑ましい光景だ。

 

チョコレートが溶けて、だいぶ冷めてきたのを確認していると、やっとこさバターをクリーム状にし終えた耕治がボールを持ってやってきた。

 

「これでいいかな?」

「あ、はい、そうしたら今からこのチョコレートを入れますから、またきれいに混ぜこんでください。」

「OK」

 

溶かしたチョコレートをへらで丁寧にバターの入ったボールへ流し込んでいく。そして、耕治が均等に混ぜ合わしたところに、卵黄を1つづつ、そして、さらにラム酒を入れる.。

 

「う〜、かおる、ひま〜。」

「あ、耕治さん、とりあえずそれは後混ぜるだけですから、かおるちゃんに渡しちゃってください。

かおるちゃんはこれを混ぜててね。」

「わかった〜♪」

 

早苗は耕治の持っていたボールと泡だて器をかおるに渡し、今度は別のボールに卵白と少しずつのグラニュー糖を入れて泡立て始める。

 

「あ、俺がやるよ。」

「すみません。私が残りのグラニュー糖を少しずつ入れていきますから、角がたつぐらいに泡立ててください。」

「これ、なんていったっけ、えっと、メロンデ、メランゲ・・・・・う〜ん、なんか違うような・・・。」

「うふふ、耕治さん、メレンゲです。」

「そうそう、そんなんだった。」

 

くすくす笑い合いながら、作業を進めていく。なかなかいい雰囲気である。

 

「う〜、かおるもいるよ〜。」

 

不満げなかおるの言葉に、ふと今の状況に気付いて思わず赤くなる二人。

 

「おにいちゃんもおねいちゃんも、まっかっか〜。」

「も、もうそろそろいいわね。じゃ、かおるちゃん、それ貸してね。」

 

誤魔化すように、かおるからボールをもらうと耕治の持っているボールからメレンゲを4分の1ほど取って混ぜる。そのあと、残りのメレンゲも泡をつぶさないように混ぜ込んでいく。

 

「あとはどうするの?」

「あ、耕治さん、そこのココアパウダーをここに入れてください。それと、かおるちゃんは冷蔵庫に入ってる丸型を取ってきてくれる?」

「ほいほい。」

「あ〜い。」

 

最初にかおるがふるいにかけていたココアと薄力粉を混ぜ込んで、ざっくりと混ぜ合わせる。

 

「おねいちゃん、これ〜?」

「そう、ありがとう。」

 

混ぜ合わした材料を型に流し込む。

 

「あとは、オーブンで焼くだけです。」

「どのくらいかかるの?」

「そうですね。170℃のオーブンで、45分から50分ってところですね。」

「そっか・・・。ふぅ、結構大変だね。でも、早苗さん、作りなれてるよね。」

「こういうの、結構好きなんですよ。作るのは楽しいですし、食べてもらえておいしいって言ってもらえるのも嬉しいですし。」

「そうだなぁ。確かにおもしろかったな。う〜ん、焼き上がりが楽しみだ。」

「たのしみ、たのしみ♪」

 

ひとまず、オーブンに入れて焼いている間に道具の片づけをする。

かおるが道具を洗い場まで運び、早苗は慣れた手付きで洗物。耕治は、お皿やフォーク、飲み物のためのカップや紅茶を出してくる。ちなみに、紅茶は涼子からもらったものである。朝食に時々これが出てくるらしい。

そして、かおるから春恵さんの事を聞いたり、耕治の一号店での話や耕治の居ない間の二号店での話をしているうちに、チョコレートの甘く香ばしい匂いが部屋中に漂い始めた。

 

「うわぁ、いいにおいだね。」

「しょこらけーき♪しょこらけーき♪じゅるじゅる」

「あぁ、かおるちゃん、よだれよだれ。」

 

耕治がかおるの面倒を見ている間に、様子を見に行く早苗。

 

「もう、良さそうですね。あとは、ちょっとさますだけです。その間にお茶をいれちゃいましょう。」

「そうだね。あ、かおるちゃんはジュースの方がいいかな?」

「かおる、こーじおにいちゃんとおなじがいい♪」

「わかったよ。それじゃ、お砂糖多めにして入れればいいかな?あ、早苗さん、俺がやるよ。いちおう、早苗さんとかおるちゃんはお客さんだしね。」

「そんな、気を使わなくてもいいですよ。・・・それにしても、紅茶入れるのうまいんですね。ちゃんとカップを温めたりして・・・。」

「朝、涼子さんが紅茶入れてくれるのをよく見てるから、自然とね。」

「ふーん、涼子さんが・・・、ですか。」

 

不用意な発言は命取りである。早苗のジト目に冷たい汗をかきつつ、なんとか紅茶をいれる。

 

「あ、か、かおるちゃんに、ストロー、持ってこなくちゃね。あはははは・・・・・」

「もう、耕治さんたら・・・。(涼子さんも、油断できないわ。)」

 

そして、程よく冷めてきたショコラケーキにうすく粉砂糖をふりかけてから8つに切り分け、それぞれのお皿に一切れづつ乗せて、紅茶とともにテーブルへ。

 

「はやく!はやく!」

「はいはい、お待ちどうさま。かおる姫のショコラケーキですよ。」

「わーい、しょこらけーき♪」

 

3人がテーブルについて、いただきますをすると早速食べ始めた。

 

「うおっ、うまぁい。これ、市販のもんよりうまいかも・・・。」

「もぐもぐもぐもぐ・・・」

「うふふ、よかった。おいしくできたみたいですね。」

「外側がパリッとしてて、中はこう、フワッとした感じで・・・。」

「そのフワッとさせるのは、メレンゲの泡をつぶさないように混ぜ合わせるのがコツなんですよ。」

「もう一個もらってもいいかな?」

「ええ、はい、どうぞ。」

 

「ふう、おいしかった。ごちそうさまでした。」

「ごちそうさまでした〜。」

「はい、おそまつさまでした。」

 

食べ終わって、ふぅ、っと一服する。かおるも満足そうである。

 

「楽しかった。なんか、他のものも作ってみたくなるよね。」

「ふふ、じゃ、また今度一緒に作りましょうか?」

「つくる〜♪」

「はは、そうだね、早苗先生がそうおっしゃってくれるのならば、喜んで。」

「もう、耕治さん。でも、じゃあ、また準備してきますね。」

「うん。でも、そうなると、道具とかそろえときたいなぁ。あ、早苗さん、今度暇な時買い物付き合ってよ。」

「えぇ、あ、はい!ぜひ!」

「あはは、じゃ、よろしくね。」

 

思わぬ展開に嬉しそうな早苗。満面の笑みである。

 

「う〜、かおるも〜。」

 

横から忘れられつつあったかおるが自己主張する。耕治と早苗はお互い顔を見合わせると、あははっと笑いあった。

 

 

 

「さてと、そろそろ春恵さんも帰ってきますし、おいとましますね。」

「もう、そんな時間か。あ、4つほど残ってるけど、どうする?」

「私はいいです。耕治さんが食べちゃってください。」

 

じぃ〜、と見上げるかおる。その目がきらきらしてたりする。

 

「あはは。じゃ、かおるちゃんと春恵さんの分で2つ、かおるちゃんに持っていってもらって、残りは俺がもらっていいかな?」

「くす♪そうですね。じゃ、アルミホイルで包めば大丈夫だと思いますから、用意してきますね。」

「おみやげ♪おみやげ♪」

 

わーい、と耕治の周りをくるくる回るかおる。よっぽどおいしかったらしい。

 

「それじゃ、お邪魔しました。」

「送っていくよ。荷物もあるし。」

 

調理道具の入ったバックを手に取ると、二人と一緒に玄関をでる。

 

「あ、すみません。」

「気にしない、気にしない。さ、行こうか。」

「お〜♪」

 

夕焼けの中、かおるを真ん中に手を繋いだ3人は、端から見ると親子のようであった。

 

 

 

 

 

 

【数十分後】

 

「すみません、お世話になりました。」

 

縁家にかおるを迎えにきた春恵を上機嫌のかおるが出迎えた。

 

「まぁあ、おかえり〜。」

「かおる、ただいま。大人しくしてた?」

「だぁいじょぉぶだよぉ。」

「お帰りなさい、春恵さん。」

「あ、早苗さん、ありがとうございました。ご迷惑をおかけしませんでしたでしょうか?」

「いえ、楽しかったですよ。」

 

かおるが春恵のスカートをくいくいっと引っ張る。

 

「まぁあ、これ、おみやげ〜。」

「あら、これは・・・?」

「しょこらけーき♪かおるとさなえおねえちゃんとこーじおにいちゃんでつくったの♪」

「まあ。」

「かおるちゃんも一生懸命手伝ってくれたんですよ。少しですけど、食べてみてください。」

「ありがとうございます。ほら、かおるもお礼をいいなさい。」

「おねいちゃん、ありがと〜。」

「うふふ、また一緒に作ろうね。」

「うん!こーじおにいちゃんもいっしょ〜♪」

 

 

 

【数時間後】

 

「あらぁ、おいしそーなもんがあるじゃなぁい♪」

 

耕治の部屋は、また葵の襲来を受けていた。涼子も葵に連れ込まれている。

 

「あ、それは・・・」

「チョコレートのスポンジケーキってところかしら?どうしたの?これ。」

「今日、早苗さんとかおるちゃんが来て、一緒に作ったんですよ.」

 

うまく棚の中に隠しておいたはずなのだが、見事に葵に見つかってしまい、苦笑いの耕治。

 

「隠しとくなんて、人が悪いわねぇ。おいしいものはみんなで食べなきゃ!というわけで、一口もらうわね。」

「あ、葵さん・・・。」

 

缶ビール片手に一切れつまむと、パクッっと一口。

 

「あら、おいしぃ。やっぱ、お酒には甘いもんよねぇ〜♪涼子もど〜お。」

「もう、葵ッたら・・・、いいの?耕治君」

「ははは・・・、いいんですよ、俺はもう食べましたし。涼子さんもどうぞ。」

 

あきらめが肝心、と涼子にもう一切れの方を勧める。

 

「そう、じゃ、頂くわね。・・・あら、ほんと。よくできてるわ。」

「そうでしょ、そうでしょ、お酒が進むわよねぇ♪」

「私はどちらかというと、紅茶の方が合うと思うけど・・・。」

「あ、俺もそう思い・・ま・・・す・・・。あ、あおいさん?」

「こ〜う〜じ〜く〜ん、あたしのお酒が飲めないっていうのかしら〜。」

「うわわ、葵さん、あ、やめ、涼子さん、助けて〜。」

「はぁ、まったく・・・・。ほら、葵!無理やりはやめなさいって。」

 

 

今日も連日の惨劇の幕開けのようである・・・・・。.

 

Fin?