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| 漢方治療 まず、私は内科医、循環器医であって、漢方医ではありません。したがって、漢方治療は当院の主軸ではありません。 しかし、開業医として診療に当たるようになると、諸症状を始め、患者さんの苦しみ・悩みに対応することが重要になります。大学病院のような専門店の集合体のようにはいきません。そうすると、どうしても漢方薬を使うということになります。 しかし、漢方は致死的な病気の根本治療には無力です。たとえば、癌は漢方では治りません。しかし、術後の回復を速めたり、化学療法や放射線治療の副作用を少なくすることはできます。また、病気を持ちながら高齢化し、死の淵に立っていると思われる患者さんの気力を取り戻し、治療過程に引き戻すこともできます。 循環器の領域でも、高血圧を漢方だけで治療することはできませんが、自覚症状を減らしたり、血圧の変動を少なくすることはできます。では、漢方薬は現代医薬に劣っているのかというと、そうでもありません。治療に苦しむリンパ浮腫には、どんな現代医薬より十全大補湯がよく効くように思います。 こむら返りに芍薬甘草湯が特効的に効くことはよく知られています。糖尿病性神経障害によるしびれに、現代医薬の特効薬キネダック以上に牛車腎気丸が効くことがあります。めまい治療には、しばしば漢方薬の方が有効です。苓桂朮甘湯、五苓散、柴苓湯などの使い分けが必要です。女性なら、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散なども検討しなければいけません。それ以外にもめまいに効く漢方薬はいくつもあります。 風邪の引きはじめには、漢方薬が有効です。葛根湯はその代表で、体力がある人に使うとされています。しかし、保険で使えるエキス剤は煎じ薬に比べて生薬の含有量が少なく、高齢者が使ってもあまり問題はないようです。ただ、前立腺肥大が著しい人が服用すると尿閉になることがあります。その場合には別の漢方薬を使います。漢方薬でも、副作用注意、禁忌、併用禁忌などは守らなければいけません。 最近、風邪の引きはじめで医療機関を受診する人は少なくなっている印象です。重症化してから受診されるので、まずはその苦痛をとる必要があります。そこで、しばしば現代医薬を使用し、漢方薬ものどの痛み、咳、体のだるさを抑える薬等を症状により併用します。同時に漢方薬が本来持っている各人の治癒力を引き出す力により治癒を早めます。現代医薬には風邪を治す力はありません。抗ヒスタミン剤で鼻水を抑え、鎮咳剤で咳を抑え、鎮痛薬で頭痛や体のだるさをを抑えるだけです。風邪そのものは治療せず、症状だけを抑えて、あたかも風邪を引いていないかのように錯覚させようとするのが現代医薬による風邪治療です。風邪には引きはじめの漢方治療が最良です。私自身、この10年、自分の風邪に現代医薬を使ったことはありません。 漢方は女性に優しいのも特徴です。冷え、生理痛、頭痛、めまい、など女性の悩みに特化した処方がいくつもあります。体力、タイプにより使い分ける必要があります。 認知症の周辺症状に抑肝散がよく効くことは広く認知されています。最近、私は、高齢者にしばしばみられ、場合によっては嚥下性肺炎の原因になる「誤嚥」に、滋陰降火湯が有効であることに気づき、2症例をまとめて、雑誌「漢方医学」に投稿し、掲載されました。以下、それを掲示します。 |
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| ケース・リポート | ||
食事中のむせ込み、夜間咳嗽、突然の発熱に対し滋陰降火湯が有用であった2症例 |
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| 論文要旨 誤嚥による肺炎は従来から高齢者の死にとって重要な要因の1つである。誤嚥には食事中にみられる顕性誤嚥や、夜間に生じやすい不顕性誤嚥がある。その防止策としてさまざまな治療薬が検討されてきたが、咳に用いられる漢方薬である滋陰降火湯に関する報告はない。筆者は最近、滋陰降火湯(TJ-93)が誤嚥防止に有用と考えられる2症例を経験したので報告する。 |
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| キーワード 滋陰降火湯 誤嚥 嚥下性肺炎 咳 むせ込み はじめに高齢者の死因の中で、肺炎は依然として大きな位置を占めている。その原因として、誤嚥が重要であることも周知の通りである。誤嚥性肺炎は食事中にみられる顕性誤嚥や、しばしば夜間にみられる不顕性誤嚥によって起こり、重症化しやすく死亡率も高いとされる1)。 高齢者では嚥下機能や咳反射が低下するとされ2)、これまでに、ACE阻害薬、カプサイシン、半夏厚朴湯等がそれを改善する薬物として嚥下性肺炎防止効果が報告されている1)。 筆者は今回、咳を保険適応とする滋陰降火湯(TJ-93)の投与により食事中のむせ込み、夜間咳嗽が著しく減少した症例、白血球増多と咳を伴う発熱がみられなくなった症例を経験したので報告する。 |
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| 症例1:86歳、女性。 主訴:食事中のむせ込み、夜間咳嗽 既往歴:糖尿病(発症年不詳、加療中) 高血圧症(発症年不詳、加療中) 高脂血症(発症年不詳、加療中) 脳梗塞・左片麻痺・てんかん(2002年1月発症) |
症例2:92歳、男性。 主訴:発熱、咳 既往歴:高血圧症(発症年不詳、加療中) 大腸癌(2000年3月手術、近隣総合病院外科で経過観察中) 嚥下性肺炎(2008年6月発症) |
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| 考察 | ||||
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