2000年2月の映画

   

「アンナと王様」(ANNA AND THE KING)

ジョディ・フォスター/チョウ・ユンファ主演
アンディ・テナント監督作品
1999年度作品/上映時間2時間27分

 題名を見ていただけばお分かりでしょう?1956年のミュージカル映画「王様とわたし」のリメイク版です。

 リメイク版は、旧作を超えられないというのが、一般的なジンクスですが、現代に通用するリアリティを求めて、現地ロケ、豪奢な宮殿のセット、金糸銀糸を織り込んだ華麗な衣装など、巨額の費用を投じて製作されました。スクリーンいっぱいに広がる異国情緒とリアリズム。かなりの説得力があります

 旧作は「サウンド・オヴ・ミュージック」で知られる、リチャード・ロジャース&オスカー・ハマースタイン2世コンビによる、ミュージカルの名作ですが、私にはちょっと不満なところがありました。(たいへん贅沢な悩みですが・・・)

 ストーリーが性急過ぎて、じっくりと情緒を描ききれていないように思えたのです。とくに結末は・・・それまでピンピンしていた王様が突然、病に倒れ、死んでしまうのですから・・・観ている方は、何で?とびっくりしてしまうのです。リメイク版では、ミュージカルの楽しさこそありませんが、ストーリーの後半がリアルに書きかえられていて、アンナと王様のプラトニックな愛情をじっくり描いています。

 旧作の王様(ユル・ブリンナー)が少年のように直情的で、すぐにキレちゃうのと比べると、新作のチョウ・ユンファはカッコよすぎるかも知れませんが、ずいぶんと大人になっています。こういうところがいかにも現代風。女の子たちは、ポロポロ涙を流していました。

 私は最初からストーリーを知って観ているのだけれど、若い人たちのほとんどは、リメイク版ということを考えず、まっさらな気持ちで観ているわけです。自分の周りにいるのは、見ず知らずの人たちであるわけですが、偶然にも同じ時間を共有し、泣いたり笑ったりしているというのが、映画館で観る楽しさです。

 家に帰ってから、古いビデオを引っぱり出して、旧作のミュージカルを観ました。同じ20世紀FOX映画だったんですね!古い感じはいなめないけれど、やはり名作でした。ストウ夫人の「アンクル・トムの小屋」を、シャム王に見立てての劇中劇は、たいへん面白いエピソードですが、これにリアリティを求めてしまったら、アンナは即刻、死刑でしょうね。(笑)

 当時の西欧人が体験したカルチャー・ショックを喜劇として捉え、少年のように純粋で気高いシャム王とのギクシャクさが何とも楽しい。旧作と新作はそれぞれ違ったアプローチによって作られた別の映画と考えるべきでしょう。

(「王様とわたし」番外編)
 私が中学生の頃、高感度フィルム"フジ・カラー400" が発売され、CMにはユル・ブリンナーが出演していました。ちょうどその頃、テレビでも、映画「荒野の七人」が放送されました。当時は、ビデオなんてなかった時代だから、映画のすべてを目に焼き付けておくために、私はかじりつくようにして観ていました。(笑)フジ・フィルムに招かれて来日した折には、「徹子の部屋」にも出演しました。

 実は、「王様と私」には、テレビドラマ・ヴァージョン(1話30分)があったんです。松坂屋提供の時間帯(CBC夜7時頃)で、毎週放送されていました。

 主役は映画と同じキャスト(ユル・ブリンナー&デボラ・カー)だったと思うのですが、なにぶん幼い頃なので、記憶がはっきりしません。かなり長いこと放送していたようですから、何十話という数多くのエピソードがあったはずです。これらはもう観ることができないのでしょうか?

 なぜか、ひとつだけ、記憶に残っているエピソードがありました。(多少違うかもしれないけれど・・・)

 シャムの王様の元に、イギリスから、当時発明されたばかりの"自転車"が贈られてきました。(ペダルがなく、地面を足で蹴って走るやつです。)好奇心満々の皇子たちは、さっそく奪い合うようにして、試し乗りを始めます。でも、自転車というやつは、誰でも最初からうまく乗れるものではないのですね。皇子が転んで怪我をしたため、王様はカンカンに怒ります。「こんな物騒なものは捨ててしまえ!」と・・・

 そこでアンナ登場、王様をいさめます。王様は最初、半信半疑ですが、一生懸命自転車を練習して、みんなの前でうまく乗りこなすところを披露するのでした。
「ホッホッホー、これは楽しいぞ!どうだ、すばらしいぞ!」っていうカンジかな?
(かわいい王様!情景が目に浮かぶようです。)

 何だかもう一度観てみたい気もするのですが、ビデオでも発売されてはいないんだろうなあ。(^^;

(2000年2月25日)



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